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夏の空へ……  作者:
第1章 1年目夏
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第8話 あてにしてるぜ?

うちの野球部には1つの伝統がある。


甲子園予選3週間前から10日間学校の合宿棟を借りて強化合宿を張ることになっている。


全員が全員参加するのではなく、選抜メンバーに選ばれないと合宿の練習メニューをすることができないし、そのメンバーからさらに夏の甲子園予選のメンバー20人を選抜されるらしい。


そしてそのメンバーの発表は合宿の初日で、グラウンドのホワイトボードにネームプレートが張られているメンバーが選抜メンバーということらしい。


お。みんながホワイトボードの前に集まってるな。


オレも見に行くかな……。




「よし……!!入ってたぁ……。」


結論から言うとメンバー入りしていた。


1年ではオレの他に外野手の水野とキャッチャーの新城、サードの川上の4人だった。


水野も川上も全国大会出場経験ありだから、選ばれても可笑しくはないわな。


Aグラウンドで野手陣が監督直々のノックを受けているので新城も水野も川上もここにはいない。



「おう。メンバーに選ばれてたな、楠瀬。」


「立花さんお疲れさまっす。」


AグラウンドからBグラウンドに移動していたら立花さんに声を掛けられた。


よくよく見たらボールとグラブを持ってる。これからブルペンに入るつもりなのか?


「どうだ?今からちょっとキャッチボールでもしないか?」


「いいっすよ。」


気軽に返答したけど、この人のキャッチボールはちょっと他の人と違う。


この人はある程度まで(だいたい塁間くらいかな?)はスナップスローだけで投げて、そこから50メートル付近まで離れてノーステップ。


そして80メートルくらい離れてからようやく普通のキャッチボールといった感じだ。


その間にも綺麗で強烈なバックスピンがかかっているので、ボールの勢いが衰えることなく心地いい音を立ててグラブに収まる。


オレも立花さんに見習ってノーステップでボールを投げてみたが、思ったよりもボールが強く遠くに投げられない。


オレはそれ以来身体の軸を意識したり、足からの連動で如何にボールに力を伝えるかと言うことを意識しながらキャッチボールをするようになった。


……やっぱこの人すげぇ。


感情を表に出さないからなに考えてんのかがサッパリ分からないことを除けばの話だけど。




キャッチボールを終えた立花さんはノックを終えてアクエリを飲んでいる松平さんを、オレはタオルで汗だくの腕を拭っている新城を捕まえてブルペンに入る。


もはやお馴染みの光景なのか、それまでブルペンに入っていた先輩たちがそそくさとオレたちがいつも投げ合っている場所を開けてくれた。


「んで?今日はどうすんの?」


いつの間にかプロテクターとレガースをつけ終えた新城が聞いてきた。


「ちょっと新しい変化球を覚えたいんだけど……。」


ブルペン内の空気が止まった。おいおいちょ待てよ。オレそんなに変なこと言ったか?


思わず某イケメンの真似しちまったじゃねぇか。


「……ごめん。もう一回言ってくれ。」


「いや、だから、新しい変化球を……。」


「変化球ねぇ……?どんな?」


「どんな……って?」


「ほら、速いのとか遅いのとか曲がるとか落ちるとかあるだろ……。」


「うーん……。とりあえず練習試合とかやってみて分かったことなんだけどさ、ストレートとそんなに速さが変わらないスライダーだけじゃあさ、打席を重ねるほどにアジャストしてくるから試合終盤だと芯に喰われることが多くなってくる。だけど生憎オレにはボールを抜くって言う感覚があまりよくない。」


「つまり?」


「ツーシームなら抜く感覚はいらないと思う。それに……。」


「それに?」


「まだ緩急に頼るのは早い。」


「そうか。なら夏までにツーシーム完成といこうじゃねぇか。松平さんや立花さんにも頼んで徹底的に磨いてもらうぜ?」


「あてにしてるぜ新城。」


「まかせておけ!」




果たして新球完成なるのか?

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