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夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
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第49話 いい夢見れました?

Side S. Minase


今日は学校の教諭でもある監督が出張のため、今日と明日は自主練習となっている。


最初はみんなと一緒に寮の食堂のテレビで見ていたがどうしても血が騒いでしまい、室内練習場にこもってピッチングマシンから放たれる150km/h近いボールを打ち込む傍ら、光南高校の準決勝のラジオ中継を聞いていた。


こういう状態でも楠瀬のことが気になるあたり、オレもつくづく物好きだな…。


『蒼井が打った打球はレフトへ!レフトへ!!レフトへー!!!入ったー!!サヨナラー!!!準決勝第1試合息詰まる投手戦の末1番に座る若き核弾頭蒼井の劇的なサヨナラホームランで光南高校春夏通じて初優勝まであと1つとなりました!!!』


………そうか。光南高校が勝ったのか。この勢いならきっと明日の決勝戦も光南高校が勝つだろうな…。


何故か分からないけどそう確信したオレは、ラジオの電源を切った後バッティング手袋のマジックテープを留め直し再びピッチングマシンのボールを打ち込み始めた。



Side out




「楠瀬くん、痛むとこは?」


「無いです。けど、身体全体がバキバキです。」


試合後監督に許可を貰いオレと水野と蒼井は近くの鍼灸院に出向き針による疲労回復に勤めていた。


新城も誘ったのだが、『針は怖いから嫌だ』と言って断られてしまった。


オレや蒼井は何回か針治療の経験があるが、水野は初体験らしくここの鍼灸院に来るときに『血は出ないのか?』とか『痛くないよな?』とか『やっぱオレ今から帰っていいかな?』とか言ってて、かなりビビっていた。


その度に蒼井に宥められている姿を見ていて、案外ガキンチョだなぁ…。と言いかけたけどそこは水野の名誉のために黙っておくことにしよう。


「そうか。なら針を打ってくぞー。」


「おねがいしま……うあっ…!!…やっぱ疲れ貯まってんのかな………いてぇ。」


ハムストリングスと背中に針を打たれた瞬間、身体がビクついた。オレが自分で思っている以上に疲労が貯まっているのがよく分かる。


「それだけ甲子園で連騰し続けてたから、楠瀬くんが思っている以上に身体にキてるからね。………っと、またこの子出てるのかぁ。楠瀬くんと同い年なのに頑張るよねー…この子。」


オレの一人言に鍼灸院のお兄さんが反応しながら、オレの治療スペースにある小型テレビに電源をつけた。テレビの画面の向こう側ではいつぞやの蒼き瞳のアイドルが笑顔を浮かべて、そこに映っていた。


だけどどこかその笑顔はぎこちなく、ホントの笑顔じゃないような笑顔を浮かべていた。



あの日受け取った手紙のIDは本物の『篠咲 玲奈』だった。


最近流行りの成りすましやサクラだという可能性があったが、ちらほらとカマかけてみたがその答えが完全に一致したので本物だと認めざるを得なかった。


だが、相手も超がつくほど多忙な日々を送っているので登録と3通ほどのメッセージしか飛ばしていない。


………だからと言ってどうということもねぇけどね。



あぁ、眠い…。


針から流れてくる微量の電気が心地よく、瞼が重くなってきた………。抗おうにも抗いきれず、いつの間にかオレは眠ってしまっていた。









「うぉぉぉ………。スッキリしたぁ…。」


我ながらおっさんじみた発言だということは重々自覚しているが、我慢できなかった。


いいや、言うねッ!!!


うん。ごめん。



針治療が終わった後、足と背中さらにお兄さんの好意で肩回りのマッサージを受けて鍼灸院を後にする。


「よっ。長かったな。」


「蒼井さんグッスリでしたからねぇ…。いい夢見れました?」


鍼灸院から出るとジャストタイミングというか、きっと今まで待っててくれたのか筋肉に関する情報が乗っている雑誌を持った水野とファッション関係の情報が乗っている雑誌と影の薄いバスケット選手が活躍するマンガの2冊を持った蒼井が向かいの本屋から出てきた。


「じゃ。帰るか。」


そだな…。サッサと帰って早く寝ますか…。







「楠瀬、明日先発してもらうけど大丈夫か?」


「もちろんです。行けるところまで行きます。」


「そうか。明日もきっと接戦になると思うけど、数少ないチャンスを確実に取っていこう。」


「「「はい!!!!」」」


監督がオレに明日の先発を告げた後みんなに気合いを込めたところで、ミーティングが終わった。


明日は決勝戦。気合い入れていくか!!



Side out



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