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夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
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第40話 因縁の対決

昨日の試合はあのあと、水野の特大3点本塁打スリーランで勝ち越し5ー2とすると9回はオレに代わり今夏甲子園初登板となった前田さんが3者連続三振を奪い、試合終盤の逆転による接戦を制した。



笑顔で投げる前田さんのボールがキレッキレ過ぎて、自己最速を更新する149km/hを記録し、得意とするカーブは右バッターの頭からインコースの低めまで曲がり落ちるという脅威的な落差を誇っていた。



やっぱ甲子園で投げたかったんだな…、と一人でマウンドを独占していた事に少しだけ罪悪感を感じたのはまた別のお話ということで。





話は一転し、休む間もなく準々決勝。




昨日までの晴れやかな夏空から一転、甲子園球場は朝からしとしとと雨が降り注いでいる。



雨天だというのに超満員御礼が出された甲子園は、準々決勝第1試合で9回裏ツーアウトから怒濤の反撃を見せ大逆転サヨナラ勝利を収めたことによりその熱気が冷める兆しが全く見られない。



『準々決勝第2試合は、試合開始予定時刻より25分遅らせ間もなく試合開始致します。』



やっとか…。



試合開始時刻が遅れたことにより、一度作り上げた身体を冷やさないように甲子園に入ってからはずっと半袖のアンダーシャツを着ていたのだが、今日は予選の時と同じ長袖のアンダーシャツを着ている。



「思っていたより疲れは無さそうだな。」


「まぁ、そうっすね。」


キャッチャー防具を身に付けながら、オレとキャッチボールをしている松平さんがオレの調子の善し悪しを聞いてきたのでボールを投げ返すついでといっては何だけど、そのままの意図を込めて答える。


試合前のバッテリーミーティングで、『疲労具合やボールの走り具合でリードや配球パターンを変える』と打合せしたがどうやら松平さんの中では普段通りのリードで行くと判断したようだ。


前の試合で要所で高速チェンジアップとツーシームのムービング系のボールで打ち取ってきているから肩肘に変な張りはない。


「でも、オレがヤバいと思ったらパターンを変えるから臨機応変に対応してくれ。」


「その辺のことは松平さんにお任せします。」


直前の打ち合わせが一区切り着いたところで、審判団が出てきたのでベンチ前に整列した瞬間に審判たちの声でオレたち光南高校と浦話学院の選手たちがホームベースの方向に向かって走り出した。





『これより準々決勝第2試合、光南高校対浦話学院の試合を開始致します。まず守ります光南高校………』



Side out




Side H .Minase


この時をどれ程待ちわびたことか…。


マウンドの上に立ち、キャッチャーの構えるミットに投げ込むピッチャーの姿をベンチから眺める。


昨年1年生ながら甲子園のマウンドに立った。オレと初めて対戦した時もキミはマウンドに立ってたっけ…。


でも、キミのようなピッチャー関東圏では普通にいるようなレベルだったし勝負の場だから遠慮はいらないと思い、粉々に打ち砕いた。


だが、キミは一回りも二回りもレベルを上げてまたオレの目の前に戻ってきてマウンドの上に立っている。まるであの頃の自分とは違う…と言いたげに。


残念だけど………、キミはまだオレがいる領域に足を踏み入れていない。そうだね…。センターを守ってる水野くんが足を踏み入れかけているかな?


まぁいいや…。この試合で嫌と言うほど分からせてあげよう。



『4番 ショート 水瀬くん』



Side out


「ボール!フォア!!」


3番でピッチャーの小山さんを歩かせてしまい、この試合最初の対決を迎えることとなった。


『4番 ショート 水瀬くん』


ウグイス嬢にコールされた水瀬は、軽く1度2度スイングしたから右のバッターボックスに入る。


バッターボックスの土を均し、バットを肩に乗せたままこちらを思いきり睨み付ける。


前にグラウンドの外で会ったときはあどけない少年のような顔付きだったが、野球場やバッターボックスに入ると話は別だ。今まで対峙してきたバッターと比べるのも失礼になるくらいの、それも尋常ではないくらいの威圧感を纏っている。



な…なんだ?



身の毛がよだち自分の血が妙にざわつき、何処か『こいつとはまともに勝負するな』と警告しているかのようだ。


………いや、これは『こいつと真っ向から立ち向かえ。』と言っているだけだ。オレは自分に言い聞かせ、アウトコースへのストレートを投じた。










ーーーバキィィィィン!!!!









数瞬後、オレが投げた148km/hのストレートは痛烈な打球音と共に右中間スタンドへと消えていった。




Side out



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