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夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
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第38話 ターニングポイント

横山を打ち取った直後の攻撃で2点を返し、2ー2の同点に持ち込んだ。


要所でツーシームと高速チェンジアップを織り交ぜてリードしてくれる松平さんのお陰で、毎回ランナーは出すも何とか無失点で切り抜けてきている。


が、相手のエースでアンダースローの似鳥を攻略しきれず再三チャンスは作るものの、肝心のあと1本が出ない。


オレと似鳥による緊迫した試合は8回まで続けられた。




Side out



Side R.Matsudaira



凡打凡打で何とか8回ツーアウトまでこぎ着けることができた。


うちは次の攻撃は1番から始まる打順だ。


だが気を抜いてはいけない。なぜなら恐らくここがこの試合の最後の分岐点ターニングポイントになるはずだ。



『3番 サード 横山くん』



横山と5度目の直接対決。



高速チェンジアップを解禁した2打席目以降は、ショートゴロ・セカンドライナー・ライトフライに抑えてはいるがだんだん高速チェンジアップに対応アジャストしてきているのが少し気になる。



様子見で、初球はインコース低めのストライクからボールになる高速チェンジアップを要求する。



高速チェンジアップを見せ球にして…!?






ーーーバキィィィン!!!






痛烈な打球音がオレの鼓膜に突き刺さる。


おい、まさか……!?ウソだろ!?


予想とは裏腹に捉えられた打球はレフト方向へとぐんぐん伸びていく。…が、ボールゾーン厳しいコースに投げ込んだのが幸いして打球はキレていきファールになる。



甲子園内は歓声から一転、ため息が漏れる。



マズい…、完璧に捉えられている…!!


これで横山に対して高速チェンジアップは使いづらくなってしまった。


かといってストレートを要求しても、第1打席の時に長打を打たれている。


スライダー?遅い方のチェンジアップ?


こいつを仕留めるのに、一体何を投げさせたらいいんだ……?



Side out






ーーーガギィッッ!!



『ファール!』


アウトコースに投げたツーシームはバックネットに、タイミングを外す遅いチェンジアップはサードファールグラウンド方向に打ち、食らいついてきた。


さすが名門高のクリーンナップを勤めているだけある。


でも、オレだって1歩も引き下がるつもりも毛頭ない。



ーーガッッ!!


『ファール!』


これも当てんのかよ……!!


仕留めるつもりで投げたストライクゾーンからボールゾーンに曲がるスライダーも当てられ、サード方向へ転がる。


観客からして見ればカウント的に追い込んではいるのはこちらだけど、実際はオレらが追い込まれている。


このバッターを仕留めるためのボールが無いから。



「フー…。」


間をとるべく深く息を吐いた後、一旦足元のロジンバックに手をやり気持ちを落ち着かせ、指先についた粉をフッと息で吹き払いバッターを睨む。


ここまで全球変化球を投げてタイミングを取られてるなら、残っている手札カードはストレートの1つしかない。もしここで少しでもコントロールミスをしたらスタンドまで運ばれる危険性は飛躍的に高まる。






………いいや、考えろオレ。



相手はきっと高速チェンジアップに的を絞っているはずだ。


横山のあのキツい目付きを察するに、負けず嫌いで『試合中にできた借りはバットで返す』みたいな性格なのだろう。


さらに言えば、ツーシームや高速チェンジアップには対応してきたけどスライダーや遅いチェンジアップの時は、どちらかというとスイングを始動するタイミングが早かった。



ならタイミングを外して、2球後のボールで勝負だ………!!



オレはチェンジアップのサインが出るまで首を横に振り続け、3度目にしてようやく出た遅いチェンジアップを横山に投げ込んだ。




Side out




Side G.Yokoyama



ーーーガギィッッッ!!!


『ファールボール!!!』


ちっ…。また遅いチェンジアップかよ。


オレが待っているボールは速い方のチェンジアップだ。


初球はスイングの始動が早かったから、レフトポール際で打球が切れちまった。


だが、変化し始めるタイミングや変化幅はほぼ見切ったと言っても過言では無い。


ほら高速チェンジアップ投げられるものなら投げてみろよ!


初見こそ驚きこそしたが、今度こそ捉えきってやる!!


目の前のピッチャーに合わせノーワインドから足を上げたと同時にテイクバックを取り、上げた足が接地した瞬間にトップを作り出す。


リリースされたボールはインコースに向かって突き進んで来る。


やっぱり高速チェンジアップか!!


オレは高速チェンジアップだと判断し、バットスイングを開始しようとした。



………が、予想とは裏腹にインコース低めに投げられたボールはスピードとノビを増して突き進んできた。



オレはスイングすることが出来ずそのままボールを見送ることしかできなかった。


ボールはキャッチャーミットに突き刺さり……、




『ットライーク!バッターアウト!!』



「っしゃぁぁぁあ!!!」



審判のジャッジの声と、目の前のピッチャーの叫ぶ声が聞こえてきた。



Side out



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