第30話 激動の学園祭Ⅱ
「何だと!?」
事の重大さをオレより早く理解した水野が声を荒げる。
「あたしと結衣と雪穂でお昼を食べてたら、いきなりサッカー部のやつらが来たと思ったら暴力で…。」
椎名はその光景を思い出したのか言葉を詰まらせ、涙を見せる。
無理もない。
オレに遠慮なくズバズバ物事を言ってくるとはいえ、椎名も女の子だ。怖いものは怖いんだ。
「拓海!!さっきから何黙ってるんだよ!小林と滝沢が危ないって言うときに……オイ!!拓「水野、少し黙ってろ。」っっ…。」
サッカー部……、いや、深津か。
「水野、椎名を頼む。」
「何処に行くんだ!?」
オレは泣き崩れている椎名を水野に託し、部室から出ようとするがそれを容認させじと水野はオレを止めようとする。
が、オレの怒り臨界点はとっくに許容範囲を越えていた。
「ちょっと売店に行ってくる。」
出来るだけ怒りを見せないようにしながら、部室を後にする。
オレの大切な友達と幼馴染みを傷つけたんだ。
それ相応の報いは受けてもらうぞ……、このクソ野郎共!!!
こんなところでいいだろう…。
オレは部室から少し離れた所でスマホを取り出し、とある人物のダイヤルを回す。
一刻も争う状況なんだ。……早くしろ!!!
『拓海か?』
「お仕事の最中申し訳ありません、小林さん。」
通話の相手は、雪穂の親父さんだ。
『何だ?雪穂を嫁にする気にでもなったか?』
会う度にこう言った発言するところ以外は、見た目はヤの字がつくような風貌の漢だ。
男じゃない。漢だ。
「小林さん、落ち着いて聞いてください。」
『あ?何だ?雪穂に対するプロポーズの予行練習か?』
「雪穂が拐われました。」
『……10分待ってろ。』
「拓海!!!!」
「すんません小林さん、お忙しいなかわざわざ来ていただいて。」
10分って言ってたが、5分で来た。
ちゃんと騒音の迷惑にならないように、かなり高いところからパラシュートで落ちてきたあたりちゃんと考えてんのな。
「雪穂のスマホの電波をキャッチして逆探知した結果、こっから3キロ先の廃校になった小学校の中だ。」
「そうですか。ではオレはこれで……「待て。」……なんすか?」
「ちょっと歯ぁ喰いしばれ。」
ーーーバキィィィッ!!!
オレは小林さんに思いっきりぶん殴られたが倒れることは許されず、そのまま胸ぐらを捕まれコンクリートの壁に叩きつけられた。
「こんなことになったのは、元はと言えばお前の八つ当たりだろうが!!!貴様は雪穂がどれだけ涙を流したか……どれだけお前を心配していたか知ってるのか!?」
「……知りませんでした。」
「だろうな!昔言ったよな!!雪穂を泣かしたら許さねぇってよぉ!!!」
「……ハイ。」
「その返事が本物なら行動で示してみろ!!」
オレは無言で頷き、小林さんの部下の車に乗り込んだ。
Side out
Side Y.Takizawa
「なぁ深津……ここでいいのか?」
わたしとユキちゃんは、お昼を食べていたときにいきなりサッカー部の人たちに拉致されて昨年で廃校となった小学校の体育館に連れられてここまでやって来させられた。
特にユキちゃんに到っては何処から仕入れてきたのか、クロロホルムを染み込ませたハンカチを口と鼻を塞がれ意識をトバされた。
「今さら何ビビってんだよ?ここは廃校だぜ?バレるわねぇよ。もしバレて楠瀬が来たとしてもオレ様がボッコボコにして、ユキちゃんにはオレしか居ないということを知らせるんだ。」
「あんたらなんかがユキちゃんと釣り合うと思ってるの!?「っせぇんだよこのアマ!!」痛っ……!!」
わたしは深津の言ったことに反論をしたが深津の取り巻きに利き腕である右腕を思い切り蹴られ、あまりにもの痛さで言葉が続かない。
今のわたしの腕は良くて打撲…、悪くて骨にヒビが入っているかもしれない。
「いいか?お前から先にヤッてやってもいいんだぞ?その引き締まった身体を堪能できると思うと興奮するだろうなぁ…。ま、あくまでオレ様はユキちゃん一筋なんだがなヒャッハッハッハァ!!!」
痛みで顔を歪ませていると髪を捕みながらナイフをわたしの頸動脈が走っているところに当てて、ゲスな笑いを浮かべた深津が脅しにかかる。
「……ッ!!」
わたしは深津が言ったことに身の危険を感じ、自分の身体を守るように身を縮め込む。
気持ち悪い!!こんなゲスな集団に純潔を奪われてたまるもんですか!!!
「ヒャーハッハッハ!!お前ら見ろよ!これがお前らが憧れていた滝沢の姿だ!!」
「やっべぇ!!興奮するわー!!」
「何つーの!?この背徳感たまんねぇ!!!」
わたしが身を縮めると高笑いした深津が他の取り巻きを煽り、煽られた取り巻きはサルみたいに発情し始める。
「もうガマンできねぇ!!」
取り巻き2人がわたしの腕を取ったと思ったらその腕を固定させ、最も発情した取り巻きはわたしのところにゆっくりと近づき……、
ーーバリバリバリィィィッ!!!
わたしの着ていたブラウスの首もとから一気に裾の部分まで下げ、ボタンが盛大に弾け飛ぶ。
弾け飛んだボタンと共に、下着が取り巻きに晒される。
「キャァァァァッ!!!!!」
「やべぇ。超そそる……。」
「ヘッヘッヘ。顔に似合わず可愛いブラしてるじゃねぇか。」
わたしの身体と下着に興奮したのか、取り巻きたちはわたしを舐めるように見ながら鼻の下を伸ばす。
「やだっ!やだぁっ!!誰かっ!!」
恥ずかしさと恐怖でパニックになったわたしは、助けを求めることしかできなくなっていた。
「やめて!!それ以上結衣ちゃんに近付かないで!!!」
わたしの叫び声で目を覚ましたのか分からないけど、いつの間にかユキちゃんが目を覚ましていた。
「オラッ!!お前も滝沢と同じようにしてやるよ!!」
「イヤァァァァッ!!!!!」
ーーーバリバリバリィィィッ!!!!!
ユキちゃんも深津の手によって、上はわたしと同じような状態でスカートはナイフによって切り裂かれていた。
「楠瀬を待つつもりだったけど気が変わった。先にお前らからだ!!!」
そういって深津とその取り巻きが、ジリジリとわたしとユキちゃんのところに近づいてくる。
「やだっ!やめて!!これ以上近付かないで!!!」
「ウソ……。やだ…、やだよ…!!ダメ!!こっち来ないで!!」
「助けて!!!拓海!!!!」
「助けて!!!拓海くん!!!」
わたしとユキちゃんは藁にもすがる思いで、ここにはいないであろう拓海くんに助けを求めた。
ーーーバキャァァァッ!!!!!
いきなり深津たちの背後のコンクリート製の壁が粉々に砕けた。
「誰だ!?」
コンクリート製の壁から出てきたのは……、
「わりぃ。ノックが強すぎたか?」
「拓海……くん…?」
わたしの背丈くらいで、先が大きなハンマーを片手に持った拓海くんが立っていた。
Side out