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夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
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第29話 激動の学園祭

「こうして織田信長は1582年本能寺の変にて…。」


日本史の教師が戦国時代に関する授業をしているなか、オレの頭の中はさっきの出来事で埋め尽くされていた。


(雪穂の事を馴れ馴れしくユキちゃんって呼んでいた事も気にくわないけど、一番危険なのはあいつが言ってた『どんな

手段を使ってでも手に入れる』って言ってたことだ。雪穂の事ををもし一番欲しい存在だとしたら……?)


そう考えただけで、それなりに暑い気候なのに冷や汗と寒気がしてきた。


……もしかしたらオレが考えているよりも、もっと狂気的な事になっているのかもしれない。


「んじゃ、今日の授業はこれまでー。次回の始めの時間に小テストするから各自しっかり復習するように。」



……やべぇ。話全く聞いてなかった。







「そういえば水野って深津と同じクラスだったよな?」


やっぱり深津の言ったことが頭から離れなかった。


最近は自主練での水野専属のバッティングピッチャー化しているオレは今日も水野相手に投げている。


もちろん室内練習場でキッカリ18,44メートル離れた所から投げているぞ?


「不本意ながら…なっ!!」


ーーーカァァァン!!


おーおー。アウトコース低めのスライダーを逆らわず逆方向に打ち返しますか。


「ぶっちゃけ授業中とかどうよ?」


カゴのボールを取り出して夏の大会直前合宿の練習試合で投げに投げ込み、ようやくマスターした新球を投げる。


「うるせぇぞ?いっつもペチャクチャ喋ってばっかで……よっ!!!」


ーーーカァァァン!!


これも打ち返すんかい。


もうコイツに何投げたら打ち取れんのかもう分かんねぇなぁ……。


「今のでラストだ。ボール集めんの手伝ってくれ。」


「おう。」


オレは右手のグラブを、水野はバットを近くのベンチに立て掛けバッティング手袋をベリベリと外してオレの背後にゴロゴロ転がっているボールを集め始める。


「うるさいってどんな感じだ?」


「行動・言動・仕草全てうざったい。」


他の人にも平等に接し、なかなか人の悪口を言わない水野がここまで言うということは相当深津のこと毛嫌っているようだ。


「なんつーか…、自分を中心に世界が回っているって本気で考えてるみたいで好き勝手にやってるよ。」


…オレそんな面倒臭いやつに絡まれたんだ。


「だが、気になることもあってな…。」


その後、水野が言った気になる事を聞きながら、バッティングを再開する。


かいつまんで話すと、何でも学園祭の仕事をサボって空き教室に入り浸って他のサッカー部のやつらと一緒に何やら企んでいるみたいらしいみたいだった。



この話を聞いたオレは、何故か分からないけど変な冷や汗と共に嫌な胸騒ぎがした。







そして迎えた学園祭当日。


1日目と3日目は劇や吹奏楽部による演奏会、谷間の2日目は各クラス選抜のフードファイトやアームレスリングだったり教員チーム対各部活動によるガチなスポーツバトルってもはや文化の欠片もねぇ。



うちの劇の内容を簡単に説明するなら『廃校が決まった学校を救うべく、スクールアイドルとして様々な困難に立ち向かっていく笑いあり涙ありスポコンありのラブでライブな青春ストーリー』だ。



なんだってこれを劇にしようと思ったんだ?



可能性感じたから?そうか…なら進むしかないな。



んで、他のクラスには『5人の高校生スイマーによるフリーな筋肉友情ストーリー』だったり『引きこもり少年が突如死と隣り合わせのギリギリなゲームの世界に閉じ込められ、クリアを目指しながら様々な出会いによって少年が変わっていく剣と芸術のオンライン』だったり…。




……これ原作見た方が早いんじゃないの?






『うーっ。テンション上がるにゃーーっ!!!』


語尾に『にゃ』がつく活発な女の子の役を演じてる子が、ロンダートから連続バク転で最後にムーンサルトと原作より明らか高難度の技を連発していた。


ちなみに配役も本気を出し、弓道部員を起用したり生徒会に入ったいる人や、体操部のなかで身体能力が1番高い人を選んだりと変なところでガチなんだよなぁ…。


っと、いかんいかん。ちゃんと仕事しなきゃ。


オレは台本にかかれている指示にしたがって、スポットライトを当てたり消したりしている。


『叶え、みんなの夢ーー!!!』


所々カットしながらだったので、そんなに長く掛からないうちに仕事が終わった。


他人事でしか言えないがなかなかの完成度で、それぞれ与えられた役割をキッチリこなしていたんじゃないか?



「いやー。やっぱ祭りってきたら焼きそばにたこ焼きっしょ!」



……それは隣で食い物を頬張っているやつを除けばの話だ。


椎名さん?あんた何してはるんですか?


仕事仕事。仕事してくれよ。


「いやだって、拓海があまりにもスムーズにやり過ぎるもんだからあたしゃ暇なんだよ。」


いや知らんがな。


「それにしても劇なのにムーンサルトとか普通やる?あたしはそんな度胸ないかなー?」


どこまでも能天気なやつだ。




『続きまして、2―Cによる劇です。』


隣でお好み焼きを食べている痩せの大食いは放っておいて、体育館の一番上で他のクラスの劇を見始める。


『水は生きている…。』


ん?このフレーズ…。ってかどっかで聞き覚えのある声だな……誰だ?


「『これは去勢された水。今のオレにとっては…。』……物足りない。」


そこには競泳水着を着て、肉体美を披露していた水野の姿があった。







「お前劇の主役だったんだな。」


昼休みの時間、無事に肉体美を披露しきった水野と昼メシを部室で食べていた。


「……言うな。あれすっげぇ恥ずかしかったんだ。」


「そうなのか?」


少なくともオレにはイキイキと演じてたようにしか見えなかったんだけど…。


このクラス何が凄いかってリアル感を出すってことで劇と言うよりもはや実写版の映画に近かった。


こいつ泳ぐのも速かった。ホントチート並みの身体能力だ。


「オレの話より今日これからだよ。実際暇なんだよな……『拓海!!!!』!?」


これからどうするか決めようとしていたら、椎名が硬式野球部の部室のドアを壊れんばかりの勢いで開けてきた。


よく見ると椎名の顔に青い痣があり、制服のブラウスの裾がすり切れ、指定のリボンがボロボロになっていた。


「椎名……?どうしたんだ!?その格好!?」











「雪穂が…………サッカー部のやつらに拐われた。」



Side out





こうするしかなかったんです。


ホントにこうするしかなかったんです!!


……さてこっからどう展開していこうか…。

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