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夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
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第28話 ちょっとツラ貸せや

Side Y.Kobayashi


「ユキちゃん考えてくれたー?オレ様は焦らしプレイは好きだけど、焦らされるのは好きじゃないんだよねー。」


何だか何時にもまして馴れ馴れしく話し掛けてくる深津くんを適当にあしらい、職員室に呼ばれているからといって教室から立ち去る。


スポーツ強豪校として全国的に有名な光南高校でも、サッカー部だけは超がつくほどの弱小チームなのだ。


原因はチャラ男やら勘違い系オレ様キャラがわんさか沸いてあるからである。その筆頭が深津くんと言うわけなのだけど。


1度下手に出てしまったせいで深津くんに付きまとわされ、つい最近とうとう告白された。いや、正確に言えば『オレ様がユキちゃんのために付き合ってやってもいいぜ?』的な何とも気持ち悪い一方的な告白だった。


こんなことになるなら変な意地を張らず、拓海に謝っておけばよかったと後悔している。


「きゃっ!?」


「おわっ!?」


深津くんにはどうしたもんかと考えごとをしながらズンズンと歩いていると、背が高くてガッシリとした人にぶつかってしまった。


「すいません!!考え事をしていて…「雪穂?」……え?」



ぶつかった相手は久々に会った幼馴染みの拓海だった。けどあの事があったしそれを負い目に気まずさが半端ない。


「なぁ雪穂……。「ごめん。先急いでるから。」……悪い。」


わたしは気まずさのあまり、拓海から逃げ出してしまった。


何時になったら素直に拓海と向き合えるのか、何時になったら面と向かって謝罪ができるかとか頭の中がごちゃごちゃになりながら職員室に向かった。



Side out



……行っちまった。


雪穂がぶつかってきて、正直あの事を謝る最大のチャンスが巡ってきたと思った。それで勇気を振り絞って雪穂に声をかけてみたが、結果は惨敗。


完全に嫌われてんなオレ…。


なんかこう改めて実感すると寂しいもんだな…。



ーードンッ!!



「いてっ。」


雪穂の後ろ姿を呆然と眺めていたら、雪穂とぶつかった時より強い力でぶつかった。


今日はよく人にぶつかるなぁ…。今日のウェイクアップテレビの占いで『背後に注意』って言ってたけど、ホントに当たるとは思わなかったわ…。それにしても今度は誰だ?


「ってぇんだけど。んなとこでボーッとつっ立ってんじゃねぇよ。オレ様の歩く道の邪魔してんじゃねぇよ。」



2度目にぶつかってきた相手は、いつぞやの時に椎名が口にしていたサッカー部の深津だった。それにしてもそっちからぶつかってきたのに、謝罪の一言も無いなんて人としてどうなんだ?


「もしかしてあんた楠瀬か?」


「あ?だったらどうなんだよ?」


「探す暇省けたわ。ちょっとツラ貸せや。」







連れてこられたのはなんと体育館の裏。


めんどくさー。


「んで?こんなカビくせぇ所に呼び出して何なんだ?オレだって暇じゃねぇんだよ。つまんねぇ用事だったら帰んぞ?」


先に挑発(?)してきたのは深津なので、強気な態度に出る。ぶっちゃけこういった勘違いしているやつは大っ嫌いだ。

それにうちのサッカー部は基本的に評判がよくないやつらが集まっている。


他の運動部の人たちも極力関わろうとしないくらいだ。


「おめぇユキちゃんとなに話してたんだよ?あぁ?幼馴染みだかなんだか知らねぇけど調子乗ってんじゃねぇぞ?」



……は?ちょっと待て。


こいつ今何て言った?


何で雪穂とオレが幼馴染みだってこと知ってんだ?


そもそもこいつと接点が全く無かったのに…。


「別にただぶつかっただけだ。っていうか幼馴染みだからって調子に乗るってのはおかしくねぇか?」


「っせぇんだよ!!」


ーーガシャン!!!


「かはっ…!!」


着ているワイシャツを捻りながら巻き込むように胸ぐらを捕まれ、ボタンが何個か吹っ飛ぶ。


そしてそのまま後ろの金網のフェンスに叩き付けられ、肺の中の空気が漏れた。


「いいか?オレ様はな、欲しいものはどんな手段を使ってでも手に入れるタイプなんだよ。例えどんな汚い手を使ってでも情報だって手に入れるし友情だって平気で踏みにじる事だってあるからな。覚えとけよ?」


そう言い残して深津はいなくなっていった。


ボタンどうしようかな…。





「ちょっ!!拓海どうしたんだよそれ!」


「拓海くんシャツのボタンが…!」


生憎裁縫道具とか女子力高めのアイテムなんか持っているわけでもなく、そのまま自分のクラスに帰ると早速椎名と昼飯を食べに来ていた滝沢に捕まった。


「ちょっと勘違い系ヤンキーに絡まれてな…。」


「深津か?」


「深津くんってサッカー部の?」


「まあそんなとこだ。ところで裁縫道具とか持ってねぇか?」


ボタン直したくてしょうがないんだ。


さっきから女子の目が何か痛い。


さっき『キマシタワー!!』とか言いながら鼻血を吹き出してぶっ倒れた女子がいたけど気にしたら負けなのか…?


滝沢から裁縫道具を借りて、ササッとボタンを直して午後の授業に向けて次の授業の準備に取りかかるのであった。



Side out



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