表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏の空へ……  作者:
第2章 2年目
26/78

第25話 進級

季節は厳しい冬を越え、春になっている。


オレも学年が1つ上がり、2年生となった。


トラウマになっていたボール恐怖症も克服し、今では松平さんや新城相手にガンガン投げ込んでいる。


ただ、この間順風満帆な生活をしていたと言えば答えはNOだ。


まずは、監督が若い監督に変わったことだ。


確か大場監督って言ったかな…。大学まで硬式野球をやっててポジションは投手。プロに行ける実力を持ってたらしいけど現役は大学までって決めて指導者として野球に携わりたいとかどうとか。


んでもう1つ。個人的にはこっちのほうが重要。


あの日以来雪穂はオレの家に来るどころか学校でも一切接触が無くなった。


理由は簡単。オレの事を避けるようにしているからである。


いつか謝らないといけないと思ってるのにこの調子だとなぁ…。


「拓海?外を見て何をしてんだ?」


進級して隣の席になり、雪穂の友達の女子バスケ部の椎名しいな 葉月はづきが話し掛けてくる。


「いや、桜がキレイだなーって。」


「桜かー。あたしはバスケ漬けだからなかなか明るい時の桜って見ないんだよねー。でも桜山公園の夜桜もキレイだよ?」


「そうなのか?オレの家そっち方向じゃないからなぁ。『葉月ー。いるー?』誰か分かんねぇけど指名が入ったぞ?椎名?」


「そのようだな。んじゃちょっくら行ってくるわ。」


「おーう。」


誰かに呼ばれた椎名は廊下に歩いていったのを確認したオレは机の中から本を取り出す。


卒業していった立花さんがくれた変化球に関する本を取り出し、読み始める。


……夏の大会までに何かもう1つ球種増やしてぇなぁ。


それにしても何がいいもんかねぇ…。


Side out



Side H.Shiina


「はいはーい。どなたですかー?ってなんだ…、雪穂か。」


あたしは誰かに呼ばれたので廊下に出てみれば、1年の時に仲良くなった雪穂だった。


「葉月…。拓海の様子どうだった?」


「んなことだったら自分から話し掛けりゃいいじゃん。」


実は秋のある日、夜に雪穂からいきなり電話が掛かってきて拓海とケンカしたという事情を聞き出した。


それ以来、雪穂は拓海に対して会うことに抵抗を感じてしま って話しかけるどころか姿を見るのもダメになってしまったらしい。


「だって拓海はわたしのこと何の関係もない人間だって…。」


「んなこと本心で言うような奴じゃないってこと知ってるだろ?幼馴染みのお前が信じなくて誰を信じるんだよ?結衣も言ってるけど拓海って意外とファンが多いからモタモタしてると足元すくわれっぞ?」


あたしはそれだけを伝えて雪穂の反応を見ずに教室に入った。


ったく…。拓海の事好きなんならさっさとこのギクシャクした関係戻してその想い伝えてやれよ。



あたしゃ恋のキューピッドじゃねぇんだぞ?



隣に座る野球部のエースをチラッと見た後、盛大な溜め息を吐いた。



Side out



放課後になり、練習の時間となる。


昨年1年間やって思ったのは、やっぱりスライダーとツーシームだけじゃ通用しない。


左右の揺さぶりだけじゃ打球が飛びやすい金属バットとの相性は悪い。打ち取った当たりでも内野の頭を越されてしまうこともこの1年間多々あった。


だからどうしても落ちるボールが必要になってくる。


スライダーを応用して縦のスライダーにしてみるってのも考えて実際試してみたけど、結果はダメだった。


んで今は松平さん相手に新球開発の真っ最中。



「フッ!!」



ーーードパッ!!



「ふー…。」


ワンバウンドになったボールをなんなくキャッチした松平さんはマスクを取って、息を吐き出す。


「どうですかー?」


「んー。まだ落ち幅にムラがあるし、何より腕の振りが緩くなっから落ちるボールが来るって分かる。変化球を投げるときこそ腕の振りを大事に。」


「そうっすか。やっぱ変化球って難しいッスわ。」


ツーシームの時もそうだったけど、オレは変化球を覚えるのが苦手な部類の人間なのだ。


日本プロ野球では5年連続防御率1点台、メジャーリーグで最多奪三振王に輝いた日本球界の至宝と呼ばれる剛腕投手が羨ましくてしょうがない。


「どうする?まだやるか?」


「あと20球だけお願いしやす。」


「はいよ。」


松平さんがミットを構えたのを確認したオレは、その球種の握りのまま投球モーションに入った。








「だぁぁぁ…。上手くいかねぇ…。」


オレは練習が終わった後でも室内練習場に籠り、ネットに向かってボールを投げていた。


結局腕の振りが緩くなる癖が抜けず、ピッチング練習は終了。


その後バッティング練習の後のノックと続き、練習は終わった。


「苦労してるみたいだな。拓海。」


「水野?お前まだいたのか?」


結城さんに変わり、うちの4番に座ることになった水野みずの 大翔はるとが木製バットを持って室内練習場に入ってきた。


「まだいたのかって…。自主練でウェイトやってこれからバッティングやろうとしただけなんだけど?」


「そうだったのか…。なぁ水野?」


「何だ?」


「新球試させてもらう変わりにバッピやってもいいか?」



Side out



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ