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夏の空へ……  作者:
第1章後日談
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第24話 何か奢ってよ!

「楠瀬くん、この問題なんだけど…。」


「この数式を使えばいいのか?」


オレはテスト勉強を兼ねて滝沢と図書館で勉強している。





期末テストが近くなり、部活もテスト休みとなった。


いつもなら雪穂にノートを見せてもらっていたけど、先日の(一方的だけど)感情に任せた暴言とも取れる発言をしてしまってからは、顔を合わせるどころか姿を見るのも少し辛くなってしまった。


どうしようかと途方に暮れていたところ、たまたま滝沢とバッタリ会って勉強を教えてくれと頼み込んだ。


んであっさりOKを貰ったので勉強道具を持って図書館で勉強……。と言うわけだ。



さすがは学年1位だ。


教え方もノートの取り方も分かりやすい。


理数系……、特に数学が大の苦手のオレにとっては教師から聞いてもサッパリなのに滝沢から教わりながら問題を解いてみると嘘のようにスラスラと解けていく。


「それにしても楠瀬くん数学が苦手だったんだねぇ…。てっきり何でも出来るのかとばかり思ってたよー。」


「数学以外ならノートを読むだけで大体分かるんだけど、数学だけはサッパリなんだよ。数学教師の言葉がまるで催眠呪文みたいに聞こえてくるし。」


「あはは…。」


「っし!できた!滝沢先生お願いします!」


「うん!ちょっと待っててねー。」


プリントの練習問題を解き終えたのでその採点を滝沢にお願いして、窓越しに外を眺める。


12月だけあって雪はもさもさと降り積もり、4時となったら外はもう真っ暗だ。


秋田県は除雪のロードローラーが度々走らせないと、雪が積もってしまうくらいの豪雪地帯だ。


「終わったよー。さすがだね、全問正解だよ。」


「っし!!」


オレは練習問題とは言え苦手な分野で満点を取り、右手で小さくガッツポーズをする。


「ありがとう、滝沢。助かったよ。」


「どういたしまして。わたしも復習になったよ。」


「オレたちそうとう長い時間勉強してたのかもう真っ暗だ。そろそろ帰ろうぜ?駅まで送ってくぞ。」


「そだねー。じゃあさ、何か奢ってよ!」








「~♪」


実は光南高校から駅まで坂道だから意外と時間がかかるし、冬道なのでさらに時間がかかる。


その途中でノーソンでオレは肉まんを、滝沢はコーンスープとジャンボ肉まんを買いルンルン気分で頬張っている。


……何だかヒマワリの種を頬一杯に溜め込んだハムスターみてぇだな。


なんか…こう…小動物的可愛さがあるな。


「おいし♪」


「そ…そうか。」


えへへと笑ってにぱーという効果音が聞こえてきそうな純粋な笑顔をこちらに向けてきたが、ここんとこ雪穂と接する機会が無かったから事もあるのか思わず斜め上に目線を向ける。


「ねぇ…そう言えばさ、ユキちゃんと何かあったの?」


「!!…何でだ?」


いきなりここんとこ悩んでる事を何のためないもなく突いてきた。


「何かここ最近ユキちゃん元気ないって言うか何て言うか…、何か様子がおかしいって言うか…。」


「そうか…。」


「そうかって…。幼馴染みなんでしょ?心配じゃないの?」


「うん…、まぁ…、いくら幼馴染みって言っても何もかも把握してるわけじゃないからな…。」


「それもそうだけど…。このままだったらユキちゃんが楠瀬くんの手が届かないどこか遠いところに行っちゃうよ?」


「…。」


「って…。ごめんね?感情に任せて言っちゃって。」


「いや、いいんだ。っと…。駅に着いちまったな。じゃあまたな。」


「うん…。じゃあね。」


話し込んでいると時間が経つのは早いもので、いつの間にか駅についたので滝沢を見送る。



ユキちゃんが楠瀬くんの手が届かないどこか遠いところに行っちゃうよ?…か。そんなこと考えたことなかったな…。もしホントに遠いところに行ってしまったら……。



…………ダメだ。よくない方向に考えこんじまうオレの悪い癖だ。


オレは頭をブンブンと振り嫌な思考を振り払うため、滝沢に教わったところを復習するべく足早で家に帰ることにした。



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