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夏の空へ……  作者:
第1章後日談
24/78

第23話 秋のある日の出来事

(お前のせいで負けたんだ……)


すいません。


(打たれたやつ1年だろ?同い年に打たれて悔しくねぇのかよ?)


悔しくないわけないじゃないですか。


(1年目から甲子園に出れて調子乗ってたんじゃねぇの?)


違います…!!


オレは自分なりに全力で投げたんです。


(お前のせいで負けたお前のせいでまけたおまえのせいでまケタオマエノセイデマケタ…)


やめろ…、やめろ…、



ーーーバキィィィン!!!


あの試合がフラッシュバックする。



「うぁぁぁぁぁあ!!!」


オレは布団をはね除け、身体を起こした。


が、そこには慣れ親しんだ自分の部屋の光景が広がっている。


「………夢か。」




荒い呼吸と変にかきすぎた汗のせいで目覚めが最悪だった。




季節は晩秋。


甲子園で打ち砕かれてしまったオレはあの試合のことが夢として出てくるようになってしまい、秋季大会は調子を崩し地方大会で破れてしまった。


その事と夏の出来事でとうとう爆発してしまったのか、秋季大会終了後ボールを握るのに抵抗と恐怖心が生まれてしまった。


この事を監督や新主将となった松平さんに報告しボールを使わない練習…、ひたすらランニングメニューを消化する日々が続いている。


だけど、今日は練習はオフだ。



ーーコンコン。


「はい?」


「入るよー。」


ノックして入ってきたのは雪穂だった。


いつもより気合いが入った服装なのが気になるけど……どうしたんだろう?


「どうしたんだ?」


「遊びに行こうよ。」


遊びに……?ホントにどうしたんだこいつ。


「……どこに?」


「何処でもいいじゃない。さ、早く早く!時間がなくなっちゃうよ!!」


「分かった分かったから……おい…。押すなって!オレまだジャージだっつの!!」



Side out



Side Y. Kobayashi



「そろそろ帰ろっか。」


夕日が沈み、間もなく夜になるという時間帯になったので拓海と家路につくことにした。


実は今日わたしが拓海を連れ出したのには理由がある。


ここ数ヶ月…、甲子園の敗戦から人が変わったように喋らなくなり秋季大会の負けてしまってからはより一層暗くなってしまった。



話し掛けても生返事しか返ってこないし、自分から話し掛けても来ない。


学校でも話を聞く限りだと、誰にも話掛けることが出来ないくらい雰囲気らしい。


「そだな。いい息抜きにはなった…かな?」


今も笑っているけど、この笑顔は本心から笑っていない表面上だけの笑顔。


「ねぇ……拓海?」


酷だいうことは分かっている。


それでもわたしは拓海に聞く。


「どうして………笑わないの?」


きっと拓海なら乗り越えられると信じてるから……。



Side out


さすがに街の中じゃ人目があるから河川敷のグラウンドの階段に腰掛けた。


「ねぇ…。どうして笑わないの?」


「ごめん。その質問の意味がよく分かんねんだけど…」


「質問変えるね。どうしてそこまで自分を責めるの?」


「なんで笑わないかって…?なんで自分を責めるのかって……?笑えるわけねぇだろ。甲子園で優勝するために猛練習を積んできて、でも結果は3回戦で負けて……。その直結の原因を作ったのはオレだぜ?これを責めないでどうするんだよ?」


「でも、他の先輩たちには……。」


「責められなかったよ。『お前はよくやってくれた』とか『この借りは来年返せ』とかな。だけど心のどこかでそう思ってるんじゃないのかって…。」


「そんなこと……ない…んじゃないかな?」


「それはオレにも分かりやしねぇよ。人の心を読めたらこんなにも悩んでねぇと思う。だけどな…。」


オレはここで一旦区切る。


どうしても涙が出てきてしまうので涙を拭いてから行き場のない思いを八つ当たりのようにぶつける。



「オレが一番許せねぇのがオレは先輩たちの事を信頼してあ1球1球全力で投げ込んだつもりだった。けど、先輩たちからは信頼を勝ち得てなかったんじゃねぇのかって考え込んでしまう自分の弱さに腹を立ててんだ。」



思えばここで止めておくべきだった。


だけど1度昂ってしまった感情は禁句と言ってもいいほどの事を口にしてしまった。









「それをいけしゃあしゃあと関係無い外野から指摘される筋合いなんてどこにもねぇよ!!それが雪穂!お前でもな!!!」








オレは言ってはいけない事を口走ってしまった。


言ってからハッと気付き、慌てて弁解しようと雪穂に向かい合ったが…、



「…そっか。今の拓海にはわたしは何の関係もないただの他人ってことなんだね…。」



遅かった。


雪穂はオレの言葉を聞いて、涙を流しながら何処かに走っていってしまった。



「クソッ…やっちまった。こんなこと雪穂に当たったってしょうがねぇっつーのに…。」



いつの間にか降り始めた秋雨と激しく鳴り出した雷を暗示するかのように、オレと雪穂の間に大きな大きな亀裂が生じてしまっていた。



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