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夏の空へ……  作者:
第1章 1年目夏
23/78

第22話 怪童と打ち砕かれた誇り

2回戦も勝ち上がったオレたちは3回戦…、ベスト16を懸けた試合に望む。


相手は何と以前練習試合を行った浦話学院。


メンバーはあの時とほぼ同じだが、1人だけ違っていた。


1年生ながら背番号6を着けた水瀬みなせ 翔平しょうへい


昨年度の全国シニアで優勝した時の4番に座っていた男だ。


遠征に来てくれたときは、決勝で膝の前十字靭帯を断裂してしまいリハビリを積んでいたらしく姿がなかったが、ショートのポジションは本来は水瀬のものらしい。


カムバックしても打棒は衰えておらず予選で6本、甲子園本戦2試合で4本のホームランを放っている。そんな水瀬についた呼び名は『怪童』。



今日は立花さんではなく、オレが先発だ。



同い年とは思えないくらいの威圧感を纏った男だ。



こいつと対決するときは気を付けないとな…。







2回表の先頭バッターであの男に回ってきた。



『4番 ショート 水瀬くん ショート 水瀬くん』


来やがった。


左バッターボックスに入った水瀬は、左肩にバットを乗せ深く息を吐きボックス内で構えた。


ヤバい。


高1でこんな威圧感を出せるのかと言うくらいの風格だ。


少しでも投げるコースを間違えれば良くて外野まで、下手したらスタンドまで持っていかれそうだ。


とことん厳しく攻めるため、今や主力球となったツーシームを内角のボールゾーンとストライクゾーンの境目になるような厳しい所に投げ込んだ。……が、




ーーーバキィィィン!!!ゴン!!


……は?


松平さんのミット目掛けて投げ込んだツーシームはミットに届かずに耳障りな金属音が球場内に響き、直ぐ様何かに当たった音が聞こえたような気がしたので飛んだであろう方向を振り向く。


ライト方向に引っ張った打球は、ポールに直撃されボールがライトファールグラウンドに転々と転がっていた。



ーーーワァァァァァッ!!!


4番の先制弾で観客が沸く。


嘘だろ……?


内角のしかもボール球のツーシームだぞ?


何でホームランに出来んだよ……?


訳わかんねぇ。




……こんなの、どうやって抑えたらいいんだよ。




その後、次の打席こそ打ち損ないで打ち取ったが3打席目にバックスクリーンに運ばれた。それに連鎖されるように浦話学院打線が爆発し、オレは6回持たずして6失点でKO。



立花さんもオレが作ってしまった悪い流れを断ち切れず5失点。


結果は11対3で大敗。



オレのせいで先輩たちの夏を終わらせてしまったことと同学年である水瀬に少なからずあったオレのプライドを打ち砕かたショックで涙が止まらなかった。



先輩たちは『お前にはまだ2回チャンス残っているんだから来年この借りを返してくれ』とか『お前はよくやってくれた。』とか声を掛けてくれたが、そのくらいしか信頼されていなかったのかと思うようになってしまい素直に頷くことが出来なかった。




ーーーこうして、頼もしい先輩たちと挑んだオレの1年目の夏は甲子園3回戦という道半ばで終わった…。





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