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夏の空へ……  作者:
第1章 1年目夏
20/78

第19話 疲れたでしょ?

試合が終わった後すぐさま祝勝会が行われ、立花さんが大粒の涙を流しながらお礼を言われた時は恥ずかしかった。


祝勝会もそこそこに切り上げ、また明日から甲子園に向けて頑張ろうと言うことで日が沈む前に終わった。


「ただいま。」


最近はオレが帰ってきても雪穂が家にいない日も増えてきて、心なしか寂しいような自分の時間が取れて嬉しいような……。


バッグを置いて、ユニフォームを洗濯かごに入れて水を飲もうとして台所に向かおうとしたが…、



「んなっ…!?」


視界がぼやけ、平衡感覚を失ったオレは受け身を取る暇なく倒れてしまった。













……み!?……くみ!?だ……ぶなの!?



なんだ……?


そこに誰かいるのか?


「……海!拓海!!」


「ゆき…ほ……?」


上を見上げると天井で我が幼馴染みは目尻に光るものを見せていて、今日の晩御飯の食材を放り投げてオレのところに駆け出して来たのだろうか。レジ袋が無造作に置かれていて中身が少し転がっている。


そして部屋にはクーラーが効いていて、頭には氷枕が敷かれていた。


「よかったぁ…。もう目を覚まさないかと思ったぁ……。」


大会期間中はおろか大会前辺り……、下手したら合宿辺りからまともな会話してないんじゃねぇかオレら…?


何だかんだ心配してくれてるのはありがたいが…、 女の子特有の柔かさが伝わってくるんだ。


決してやましい気持ちで思った訳じゃないぞ?これはあれだ。オレの中の良心だと思ってくれ。


「雪穂…そろそろ退いてくれ。重くはないが色々と当たって結構恥ずかし『ーーースッパァァァン!!!』い?」


退いてくれたかと思ったら顔を真っ赤にした雪穂が何かをしたらしいが、その前後の記憶が遥か彼方へと飛んでいってしまった。




Side out



Side Y.Kobayashi


もう!信じらんない!心配して損した気分!!


帰ってきたら拓海の好きなもの作ってあげようと思ったわたしは、買い物から帰ってきて台所に向かおうとした。


だけどそこで視界に飛び込んできたのが、意識朦朧としている拓海の姿だった。


わたしは買い物袋を無造作に投げ捨て、拓海の元へ駆けた。


とりあえずクーラーを入れて氷枕を作り、拓海を寝かせてたのはいいが何だか魘され始めた時はパニックになってしまい、名前を呼び続けるしか出来なかった。


目を覚ましてまともに言い出したのがデリカシーの欠片もない事だったから、思わず制裁ビンタを出しちゃったじゃない!!



……でもさすがにビンタはやり過ぎた感が否めない。



決勝戦でのリリーフ登板すごくかっこよくて、特に最後三振を取って空に向かってガッツポーズを浮かべている時は思わず見惚れてしまったって言うのに……。





ーーートクン



え?なにこの感覚……。



やだ……。思い出しただけで頬が熱くなってきた。


もう!あれもこれも全部どっかの誰かさんのせいだ!


「拓海?そろそろ起きて?」


ご飯もできたしそのどっかの誰かさんでも起こしてあげるとしようかな?


Side out



「拓海?そろそろ起きて?」


あ?何でオレ寝てんだ?


確か水を飲もうとしてバランスを崩して、雪穂が涙目でオレの視界にいて…。


ダメだ。そっから先が思い出せねぇ。何か言ったのはうっすらと覚えてんだけど、明確に何を言ったのかが思い出せん…。


「決勝戦お疲れさま。疲れたでしょ?」


「あ?まぁ…疲れたっちゃ疲れたけど。」


「ならご飯にしましょ?大会期間中のお話とか聞きたいし…ね?」



その後雪穂とオレの2人は久しぶりに心行くまで話し込み、久々に雪穂の笑顔を見れた気がした。





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