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夏の空へ……  作者:
第1章 1年目夏
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第12話 格の違い

Side R.Tachibana


楠瀬がタイムを要求し、松平がとち狂ったように腹を抱えて笑った後のピッチングが別人のように変わった。


端から見ててもよく分からなかったが、おそらくツーシームのサインを出し始めたんだろう……。


捉えられ始めていた相手打線を快刀乱麻の如く流れをぶった切った。


それでも相手も継投策に打って出て、的を絞らせてくれず終わってみれば6対2で負けた。


投手としてならば『よく立て直した』と言いたいけど、エースナンバーを争うものとしては『まだまだその領域に入ってない』かな……。


格の違いを見せつけてやる……。



Side out




最終日の夜。


オレは眠れないでいた。


試合……。というより立花さんのピッチングに圧倒された。


前半は変化球主体のピッチングでスタートした。


徐々にストレートを混ぜ始め、試合終盤はライフル銃の弾丸のようなストレートをコースギリギリや松平さんの構えたミットにズバズバと投げ込んだ。


圧倒的ピッチングにより相手のリズムを崩し、流れを強引に引き寄せる。


言いかえるとするならば相手を『制圧』するピッチング。


それに比べてオレにはまだまだ足りないものが多すぎる。


キャッチャーの構えるミットに正確に投げ切る制球力コントロールに、感情を制御コントロールするメンタルも未熟だしスタミナも足りないし……。


ああ!!ちっきしょう!!!


考え出したら余計に目が冴えちまったじゃねぇか!!!


Side out







Side R.Tachibana


無人の陸上競技場トラックの隅っこで音楽を聴きながら、身体の疲労を取り除くためにストレッチをしている。


涼しい風が吹いているが、今のオレには火照った身体を冷ますのには丁度いいくらいだ。


1人で今日の試合を振り返る。


うん。オレもまだまだだ。


9回にバテて本塁打ホームラン打たれたしなぁ……。


勝ったとはいえ課題が残る試合だったなぁ。


フォームのバランスも崩れて上半身だけで投げてしまった時もあったしなぁ……。


ん?遠くから誰かが走ってきた……?


誰だよこんな時間に……。


「オレには……まだ…足りないものが多すぎる……。」


イヤホンから流れてくるミュージックプレーヤーを一時停止して、夜遅いこの時間にランニングしているやつの声が聞こえた。というか楠瀬だった。


大方打ち込まれたことと、言い方が悪くなっちまうがオレのピッチングを見て瞼ん裏に媚びりついて離れねぇんだろう。


気持ちは分からなくはねぇな。


オレだって1年と2年の時にも同じようにして来たし。


銘刀も熱され……叩きこまれ……また熱され叩きこまれ。


スポーツも同じようなもんだ。


練習して……失敗して……落ち込んでまた練習して。



そうやって強くなっていくしかねぇんだよ。



オレは静かに立ち上がり、自室に引き上げた。


Side out




暑く熱い夏がもうすぐそこまで近づいていた。



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