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混沌始動⑪

 



「うぉぉおおおおおおあああああああああっ!!」


 全身を10箇所以上刺され、仰向けてピクリとも動いていなかった男がそんな絶叫を上げて起き上がる。

 先ほどまで留めなく血を流し続けていた刺し傷は綺麗さっぱり消えてなくなり、また服の損傷も無くなっている。

 その男――ミズキアは直前まで傷が存在していた部位を撫で、次に顔色を変えると、ぎこちない動作で首を動かして背後を見る。


「……いやさ、団長? そりゃあ能力を返却する際に死ぬ必要があるのは理解してるよ? 他でもない、オレの能力なんだからさ。だけどね、わざわざ毒を塗りたくったナイフで、急所をメッタ刺しにする意味ってどこにあんの!?」

「文句あんのか?」


 そこに立っていたのは、猛禽類を髣髴させる鳶色の逆立った髪と鋭い眼を持った男。

 ミズキアが団長と呼ぶその男こそが、数多の傭兵から現最強と呼ばれ恐れられる【レギオン】団長である、【絶体強者】リグネスト=クル・ギァーツその人である。


「あるよ、普通にあるよ! 普通に心臓を1突きするだけで良くない!? わざわざ毒を塗る必要なくない!?

 刺されただけでも13人分、毒の効力を含めればプラス100人分以上消費してるんだけど!? つか、どんだけ強力な毒使ってんだよ! そこまでする理由どこにあんの!?」

「新しく調合した毒の性能実験だ」

「いっそ理由なんて無いって言ってくれた方が清々しいのに、下手に理由があるのが何とも言いがたいな」

「細かい事をイチイチうるさい奴だ。捕虜は虐殺派のお前からすれば、些細な量だろう」

「いや、もうここに来てから8000人分以上消費してるんだけ……」

「ほう?」


 殆ど言い終えた段階で失言に気付き、宙を仰ぐ。


「そこまで消耗させられる相手が居たのか?」

「……数の暴力はさすがにな。それに普段参加する戦場と違って、ここは質も軒並み高い」

「…………」

「…………」


 自分の顔を観察してくるリグネストに、顔を背けたい気持ちを押さえ込んで正面から見据える。


「……まあ、良いだろう」


 ホッと、安堵の息を吐く。


「そんな事よりも、カインはどうした?」

「はぐれた」

「はぐれた、だと?」

「弁解するが、この訳分からない迷路が原因だ。いつの間にか戻って来たりしていて同じところをぐるぐる回らされて、埒が明かない」

「……所詮お前じゃそんなものか」


 興味が失せたと言うように、そっぽを向いて嘆息する。


「さっさと行くぞ」

「行くぞって、どこによ?」

「出口にだ。こんな単純な子供騙しにいつまで梃子摺るつもりだ?」

「もしかして、攻略法を見出したりしてる?」

「子供騙しと言った筈だ。むしろこの程度が見抜けないようでどうする」

「……頼むからあんた基準で考えないでくれよ」


 返答を聞かずに先を歩き始めたリグネストの後を、そう呟いてから追いかける。


 リグネスト=クル・ギァーツの事を知る者は、彼の事を最高のリーダーであると評する。知と暴を兼ね備えた、理想的な人物であると。

 その評価は決して間違っていない。

 有事における情報収集能力や、収集した情報を十全に活かす手腕。戦闘における戦術の構築や戦場における戦略の考案。

 一般的に言える学は勿論の事、実戦的な知謀や読み合いにおいても、周囲の者と比べても抜きん出たスペックを発揮する。

 それが彼の固有能力である【超感覚】による思考速度の加速が大きく貢献した結果であっても、地のスペックが低ければ能力を活かし切る事は不可能だ。

 そして実力の方も、かつてあの【死神エルンスト】と互角に渡り合った事がある事からも一目瞭然だ。

 歴史上をどれほど遡っても、彼に並ぶ者は数えるほどしか居ないだろうと誰もが口を揃えて述べる。


 だが、彼の事を良く知る者はそんな風に評したりはしない。

 彼の事を普通の者よりも深く知る者は、そんな風に評する者に対して憐憫の眼を向けながら内心で最悪のリーダーであると訂正する。


「……曲がりなりにも、オレは同じ【レギオン】の仲間だぜ?」


 その良く知る者の中には、当然同じ傭兵団に属する【レギオン】のメンバーも含まれる。


「その仲間を、部下を、普通あんな眼・・・・で見るかよ……」


 引きつった、恐れを多分に含んだ声音でそう呟く。

 【死なずのミズキア】と呼ばれ、体外的には【忌み数ナンバーズ】の1人に挙げられ恐れられている【レギオン】でも屈指の実力者であるミズキアが、団長であるリグネストに対して明確な恐怖を思い出したかのように抱いていた。

 その事を嘲笑える者は、同じ【レギオン】の中には誰も居ないだろう。

 新参者ならばまだしも、少しでも長く【レギオン】に籍を置いたものならば誰もが悟る。

 【レギオン】の団長たる、リグネストのその異常という言葉すら生温い本質を。


 良く知る者の中でもさらに一握りの、同じ【レギオン】のメンバーが口を揃えて言う化物や怪物という評価は、何も実力的なものを指したものではない。

 そしてその事を知らないという事は、紛れも無い幸運なことだった。










「ハッ、フッ、フッ……」


 右手に握る剣から伝わってくる手応えが本当の事かどうか、イマイチ確信が持てなくなって来る。

 視線を向ければ、確かに頭部を鼻の辺りまで縦に斬っている。自分が感じた手応えは間違ってはいなかったという事が証明された。

 これで何人目だったか。まだ10には届いていないのは確かだし、その半分にも届いていないかもしれない。


 放っておけば際限なく肩を上下させて酸素を取り込もうとする動悸を押さえ込んで、無理やりペースを整えようと試みる。

 十分な酸素を吸えずに苦しく感じるが、体の欲求に従っていると返って余計な体力を消費する。それと比べれば、息苦しさは我慢できれば実害が無い分まだマシだ。

 もっとも、呼吸を整えられるだけの余裕があればの話だが。


「ハッ、ハッ……クソッ!」


 左眼は閉じて、右眼だけで世界を視る。

 全方位から放たれた魔法のうち、自分から当たりに行かなければ害の無いものを見極めて放置。

 残る魔法のうち、どう動けば被害を最小限に抑えられるかを導き出して実行。


 左に半歩踏み出して体の向きは半身に。

 その動きと一緒に剣を振って雷撃と炎の噴射を掻き消して、さらに1歩動いて背後で地面から生えてきた槍を置き去りに、頭を伏せて不可視の刃を素通りさせる。

 眼を覆って剣を頭上に掲げ、撒かれた酸の大半を無効化。防ぎ切れなかった少量の飛沫が体を焼くが、決して粘膜に入り込まないように眼は閉じたままで、歯を食いしばって耐える。

 その場に半瞬だけ留まり、地面を踏みしめて突貫。

 姿勢は低く保って圧縮された水の狙撃を回避し、数歩進んだところで反転。必要な動きを削って投槍の群れの一部をあえて受ける代わりに時間を削減。どうせ差し出すのは碌に動かない左腕で、大した痛手じゃない。肩の肉が抉れる事と引き換えに集団の先頭に到達。


 振り下ろした剣は、あっさりと相手の持つ楯に受け止められる。

 即座に刃先をずらして表面を滑らせて次の太刀に移行するが、これも同様に相手の握る剣に防がれる。

 返礼として飛んで来た槍の穂先を頬に掠めさせながら躱し、2本目も戻した剣を横から当てて軌道を逸らす。

 だが自由を得た相手の剣による刺突はどうあがいても回避は不可能。

 眼でその行方をしっかりと追えているが故にその結論に達し、それでも体は思い通りに動かないというもどかしさに歯噛みし、せめてもの足掻きとして相手の狙いをずらして左の鎖骨下を貫かせる。


「痛えよ……」


 後退しようとする相手に追いすがって、追撃の斬撃――をフェイントにした足払いからの踏み付けで喉を潰し、眉間に剣を突き立ててトドメ。

 その間に他の連中は再び距離を取って包囲網を維持し、再び魔法の準備に入る。


 さっきからこの攻防の繰り返しだ。

 相手はおれを包囲していて、絶対的優位に立っている。

 そしてその立場を絶対に覆さないように、決して自分たちからは近付いて攻撃したりはせず、魔法による距離を取った攻撃のみに従事している。

 万全の体勢を整えている集団相手に、単騎で突っ込むのは無謀な事極まりない。

 だがそれでも突っ込んで行かない訳にはいかない。でなければ、座して死を待つばかりだからだ。

 相手もそれが分かっているから、決して接近戦で対応して来ようとしない。


「これ、で……5人、いや、6人か」


 1回の攻防で倒せるのは1人が限度。これまでで5回の攻防を繰り返しているから、都合6人。単純な計算だ。

 回数を追うごとに、おれの全身には様々な傷が増えていく。

 体重はさぞかし軽くなっている事だろう。傷口から流れる血は勿論、肉も、そして僅かだが骨も削れ抉れているのだから。


 いい加減自分の体を両足で支える事すら億劫になって、堪らず剣を地面に刺して堪える。

 支えが無ければ満足に立つ事もできない自分が、無様に思えてならない。


「まだ、だ……」


 だがそれでも、おれは自分の足で立てている。

 足は動かせる。剣を握っている腕も動かせる。

 ならばまだ殺せる。

 まだ戦える。

 まだ足掻ける。


「――ぁぁぁああああああああああああッ!!」


 声を張り上げて雄叫びを上げる事は、精神を高ぶらせて一時的に疲労と苦痛を忘れる事を可能とすると言う。

 本当にそうなのかは分からない。

 この状態でも体を動かせているのは確かだし、魔法が体に当たる度に熱と痛みが走るのも確かだが、もう疲労も苦痛も、それ以外のものも漠然としていて実感が無い。


 ただ、頭だけは冴える。

 こんな状況だってのに、昔の事ばかりを思い出す。


 全ての発端である、赤月の夜に行われる選別の儀。

 その前日におれは能力を手放したんだったか。

 あの瞬間が、おそらくおれの人生における最大の分岐路。

 後悔は無い。自分が自分で考えて納得した上で選んだ結果であるし、何よりその後の自分の人生を大きく変える人物と出会えた、最大の要因だから。


 会ったのはエルンスト。その当時から【死神】と呼ばれていた、最強の男。

 本人曰くまだ最強には程遠いと言っていたが、おれからすれば出会った時から今まで、ずっと変わらない理想であり、憧れであり、高みであった男。

 修行は辛かったなぁ。

 でも、それ以上に楽しかったなぁ。


 シロ。初めて会った時の事は良く思い出せない。ただ後頭部に物凄い衝撃を受けた事だけは鮮明に覚えている。

 あいつも最初にあった時の事は忘れて欲しいと言っているし、無理に思い出す必要は無いだろう。

 そう言えば、次に再開した時は最初、誰だかさっぱり分からなかったな。当時と印象がまるで違っていて、素でお前は誰だって叫んでいた。

 その後に何故かエルンストに殴られたのも、良いとは言えないが悪くない思い出だ。


 ベスタ。再開して1年くらい経ってから、あいつをシロの店で見掛けるようになった。

 最初は言葉を交わす事も無く、話しかけてもちっとも答えてくれなかった。挨拶を返してくれるようになるまで、半年ぐらいは掛かったな。

 その2年後くらいに、あいつが煙草の臭いが嫌いだって知った。エルンストが吸っていた時には何も言わなかったくせに、おれに対しては文句を言うんだよな、あいつ。

 でも、意外と話してみると愛想も良い。

 自分の身長と声に対してコンプレックスを抱いている事を聞いたときは、いやに親近感が沸いたっけな。


 ベル。魔界に君臨する大罪王の1柱である【暴食王】ベルゼブブ。

 初めて遭遇した時は危うく顔面を喰われかけて、会話を交わす事も無く殺し合いに発展したな。元よりそのつもりだったが、前口上の1つくらいはあるとばかり思っていたから想定外と言えば想定外だった。

 生きながらに身体を喰われるのは初めてではなかったが、その行為にあれ程までの恐怖とおぞましさを感じたのはあいつが初めてだった。

 今では剣として振る分にはこの上なく頼もしいが、相も変わらず油断もできなければ信用もできない。


「……ハハッ」


 何でこんなタイミングで、こんな事ばっか思い出すかね。

 これじゃあまるで、走馬灯みたいじゃないかよ。

 そんなの思い出してる暇があったら笑えよ。


「ハ、ハハ、ハハハハハハハハッ!!」


 笑え。笑って楽しめ。

 何かに熱中する事は痛みを麻痺させ、疲労に対して盲目的にさせてくれる。

 そら、お前の大好きな戦闘だ。思う存分楽しめよ。


「……邪魔だな、これは」


 肩の腱が削り取られている。もうこれで、どうやっても左腕は動かない。

 骨が折れていても筋肉で、筋肉が切れていても骨で、それぞれ酷使すれば動かすことは可能だ。

 だがその両方が駄目になったら、動かす事はもう不可能。

 むしろ体のバランスを取るのを阻害する錘にしかならない。そんなものを付けているよりも、いっそ切り捨ててしまった方がメリットがある。


「ぐぅ、あぁ……は、はははっ、痛くねえ……」


 良い感じにアドレナリンが出て来たか?

 そうだ、痛みを消すのに薬なんて必要ない。

 元を突き詰めれば、どれもこれも人間の生体反応だ。それを本人が操作できない訳が無い。


「失せろッ!」


 攻防で程よく貯まった魔力を放出。

 だが今までのような拡散する地を這う波状ではなく、集中させた地を割る刃状に。

 ほぼ同時に撃ち込まれた相手の魔法が魔力の斬撃とぶつかり合うが、そもそものエネルギー量が違う。容易く弾かれて霧散し押し込まれる。

 密集している為、範囲の狭い攻撃でも適当に撃てば当たる。予想通り今ので数人纏めて消し飛んだ。

 ついでに混乱を来たして隊列が乱れてくれれば最高だが、さすがにそれは高望みのし過ぎか。

 だが、出鼻は挫けた。


「いぃぃぃぃぃぁぁあああああっ!!」


 錘を捨てるとここまで軽くなるか。さっきまでの重たかった体が嘘みたいだ。

 おれの動きに反応して楯を持ち上げて突き出してくるが、遅い。剣は一瞬早く楯を掻い潜って両膝を切断し、翻した剣で頭部をかち割った。

 引き戻した剣で突き込まれる得物を弾く。少なくとも武具の性能はおれの方が圧倒的に上。タイミングさえ合わせられれば、武器を破壊する事は容易だ。

 それ自体が巨大な鉄塊である楯と違い、たかが鉄の棒に過ぎない剣ごと頭を潰す事は児戯に等しい。


「逃がさねえよ」


 予定調和のようにおれから距離を取ろうとする人形たちを追い掛け、攻撃よりも優先して集団の中に体を捻じ込む。

 包囲戦にはさせない。何が何でも喰らい付いて混戦状態を維持し続ける。

 碌に状況も把握できないような、混沌とした戦場にこそ勝機が在ると知れ。


 剣を振るう手を掴んで流し、軌道をおれの左に居る人形へ。これでさらに1人。

 短槍を切断。紫電を纏っていたが何も感じない。お返しとばかりに、切断した短槍の先端が落ちる前に蹴りで相手の顔面に叩き込む。

 振り向いて口を開け、飛んで来た白刃を顎で出迎える。ちょっとタイミングが遅くて口の端を切ったか。だが止めた。お前らじゃこんな芸当は無理だろ、そんな涎を絶えず垂らしている締まりの無い口じゃあな。

 刃の味は最悪。口の中に広がる鉄の味が、噛み砕いた剣の破片なのか、切れた口内から滲んだ血の味なのかさっぱり判別が付かない。

 口内に溜まった血ごと剣の破片を手近な奴の顔面に吹き掛ける。これで十分な目潰しになる筈なのに、支配された人形というのは面倒な事だ。だが眼球に刺さった破片の上から柄頭を叩き込んでトドメだ。これでもう1人。


 次の獲物は……って、何かが引っ掛かって動きが無理やり止められる。

 好機とばかりに襲って来た馬鹿の剣を腕で受ける。その剣が筋肉を断ち切るよりも先に腕を捻って武器を奪う。馬鹿が、そこは大人しく武器を手放すのが正解だ。無理に抗うから動きが止まって逆に隙を晒す。

 奪った剣を腕に刺さったまま喉に叩き込む。切っ先を頚椎に引っ掛けたまま引き倒し、足で後押しして背後の奴に押し付ける。


「何だこりゃ、動きにくいだろうが」


 どおりで引っ掛かる訳だ、腰に鉄杭が刺さって貫通してやがる。

 抜くと出血が面倒だから、突き出ている先端と頭を切除して中央部分は体の中に残しておく。これは腎臓を貫いているか。

 まあ大丈夫だろう。腎臓は2つもある。


 こんな物騒な物を突き刺しやがったのはお前か。性懲りも無く次の物を投げようと構えやがって、自分の体に刺してろ。

 少し距離があるから、今度はおれの方が剣を投げてやる。狙い通り足を破壊した。周りの連中の攻撃を回避しながら掻い潜って、そいつの手から鉄杭をもぎ取る。

 本当はおれと同じように腎臓を貫いてやりたいが、それじゃ殺せないから眼球に突っ込んで掻き回しておく。剣は回収。


「おっと……」


 随分と酷い事をするな、仲間ごと炎で焼いてきやがった。いや、多少焼いた程度じゃこいつらは死なないし、合理的な戦術か。


「ありがとよ。止血する手間が省けた」


 返礼は刃での斬首。飛び散った血が蒸気を発して凝固する。


 右半身はほぼ無傷。剣を持っていたからな。

 左半身は……うわ、酷いな。火膨れなんかはまだ良い、断面は炭化しているのは勿論、焼け爛れた皮膚が元の場所から離れた場所に冷えて癒着している上に、未だ固まりきらない溶けた脂肪が水滴となって垂れている。

 半分がⅢ度の熱傷で残りがⅡ度か。面積は精々が1割程度、生命維持に問題は無い。止血できた事と相殺でむしろお釣りが来る。


 人数が減って包囲網の形成が難しくなったか? 動きが若干鈍くなったな、好都合だ。

 ちょうど重なって立っていたから、前後の奴らを纏めて剣で串刺しにして固定する。握っていた得物のうち剣を奪って、カバーしようとしていた奴を牽制。顔面に虎爪を叩き込んで、両の眼窩に指を押し込んで引っ張って投擲。串刺しになっていた奴らごと面白いぐらいに絡み合って転倒して、順次踏み殺す。

 剣を抜かずに持ち上げて、近づいてきた奴らに向けて振って死体を再度投擲。衝突して動きが止まったところに、背後から複数の槍が貫いてそいつを串刺しに。死体越しの奇襲はもう見た。


 槍が固定されて動けない奴らを殺そうと突進、がら空きの左半身に衝撃を受ける。

 見れば串刺しにされた死体の内部から水晶が突き出ておれを指している。こいつら、原材料に鉄以外の不純物を混ぜた槍を使ってやがったな。

 せっかく止血したのに、また出血。どうしてくれる。

 とりあえず引き抜く手間も惜しんで全身。幸い水晶は鋭利で、多少強引に進めば勝手に肉を裂いて体から抜け出てくれた。

 槍を持った連中にトドメを刺す。途中から数えてないが、そろそろ半分は殺したんじゃないのか?


「……あれ?」


 視界が下がる。足を見てみるが、特に新しい傷も無い。

 立ち上がろうとして失敗。右眼で視ても、特に異常があるようには見えない。少なくとも魔法的なものが原因ではないようだが、そうなると……


「血でも、足りなく、なってきたか……?」


 そう言えば舌が縺れる。喋ろうにもうまく舌が動かない。


 それか毒でも体内に入れられたか。

 特に肉体的ダメージは見受けられないが、そうなると麻痺性の毒という事になる。

 その場合だと、どのタイミングで入れられたのかが不明だが。何しろ受けた傷が多すぎる。


 どっちでも良いが、体が動かせなくなっているのは確かか。


「……痛え」


 急に痛みがぶり返して来た。興奮が冷めて来たか。

 さっきまで楽しんでいたくせに、死が近づいて来た途端に現金な奴だ。我ながらな。

 だが痛むのは主に胴体部だ。手足の感覚は不思議とない。ちゃんと剣は握れているだろうか。


 とか考えていたら、周りに人形たちが集まって取り囲みやがった。

 まだ結構残っていたな。こいつら、おれが立っていた時は魔法で嬲り殺しにして来ていたくせに、いざ動けなくなったら近付いて武器を使うのかよ。


「……一昨日来やがれ」


 このクソったれ共が。










無い文才を捻って緊迫感が出るように頑張ってみましたが不完全燃焼気味です。

あまり間が開きすぎるのもあれなので投稿しましたが、後日修正するかもしれません。文面が思い浮かんだらの話ですが。

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