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蒼穹の剣  作者: yu
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第一話:異世界の洗礼

 ここに来るまでの回想(現実逃避ともいう)を終え、辺りを見渡し本当に途方に暮れる。

 まず第一に、ここが何所か分からないというのが痛かった。

 確実に自分の先程までいた場所ではないので、人がいるのか、どうすれば帰れるのか何一つわからない。

 第二に、先程は道場に居たのでタイミングの悪いことに携帯電話などの通信機や財布など持っていない。

 連絡手段などなく、今蒼穹が持っているのは『天月』だけで、殆ど裸一貫状態であった。

 さらに道場に居たため、靴も履いていないし着の身着のままで来てしまったので地味に足のうらがチクチクしていたかった。

 蒼穹はその状態を確認し、本格的にどうしようもなくて頭を抱える。

 「これはヤバい…。月夜に迎えに来てもらうこともできない…」

 本格的に気持ちも沈んでいると、ふと気を失う前に見たあの影のことが頭によぎった。

 「本当に…なんだったんだ、あれ。」

 蒼穹自身心霊現象何て信じていないし、出てきたとしてもどうとでもなると思っていた。

 しかし先程の存在は…今まであった中でありえないほどの存在だった。

 「それにしても、ヤバかった。」

 あの圧倒的な存在感と恐怖心を感じさせる声。あのでこピンの威力と自分の体の中に入ってきたあの気持ち悪さ。

 いくら『天月』で切り裂いたとはいえ、その存在を忘れられなかった。

 それに…

 「なんだか、消えた気がしないんだよな。」

 心の底で感じる違和感。

 頭の中でいろいろ仮説を立ててみる。

 しかし一向に進まず時間が無為に過ぎていくので頭を搔いて気分を入れ替える。

 「まずはここがどうなっているのかを知る方が先か…」

 周りをぐるっと見回して、ここの景色を観察する。

 深い谷底になっていて基本的に一本道。地面は先ほど見た様に赤い砂でできており、木どころか草一本すら生えていない。

 まさに砂漠のような土地だが、影に入っているせいか熱さは感じず春ごろの心地の良い環境であった。

 少し周りをみると、なんだか地面の色が変わっていることに気が付いた。

 何故か気になったので、しゃがみ土を触ってみると紐のようなものが地面に落ちていた。

 「なんだこれ?」

 目の前の紐のようなものを引っ張ろうとするとした瞬間―

 『ここがどこだか分かっているのか、この無礼者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 -大きな叫び声が聞こえてきた。

 蒼穹は咄嗟に耳を塞ぐ。

 その声の恐ろしいまでの音圧で、切り立っている崖の土がぽろぽろ落ちてきていた。

 何事かと思い声のする方を向くと、遠くに一匹のオオカミの姿が悠然と立っていた。

 遠目でわかりにくいが、蒼穹の爺さんの大地を超える大きな体に美しい白い体毛を纏っていてまるでファンタジーに出てくる人を食らう狼に見える。

 そのオオカミはこちらの視線に気が付いたのかどんどん走ってこちらに向かってきていた。

 (う、嘘だろ…あのオオカミ人の言葉を話したぞ!?と言うか大きい、あんなサイズ今まで見たことないぞ!?」

 近づいてくるとわかるオオカミの怒りに冷や汗を流し、近づいてくるオオカミをジッと観察する。

 逃げるにしろ、戦うにしろ、会話するにしろ相手の様子を確認しなければきっとうまくいかないと感じた。

 取り敢えず護身用に持っていた鞘から天月を抜こうとして―気が付く。

 (天月がない!?)

 動揺してオオカミから視線を外し、辺りを探すと切り立った崖の少し上に突き刺さっていた。

 やばいと思って取りに行こうとするも、すでに大きなオオカミは目と鼻の先まで来ており体をしならせゆっくりと歩いてくる。

 その姿を見てじっとりと背中に汗が流れるのを感じ、手がないかどうか探る。

 『聞いているのか!?」

 「くっ!?」

 大きな声で叫びながら告げてきた。

 蒼穹は何かないか手で探るも、どうやら戦うものが見つからずどうする事も出来なかった。

 なので、素直に話戦うことを避けることにした。

 「すまない、そうやら俺はあなたたちの場所に迷い込んだらしい。別にここで何かしようと思っているわけではない。だからどうかこのまま見逃してくれないだろうか。」

 心の中で話が通じることを祈りつつ、それを顔に出さず毅然とした態度で告げた。

 しかし、その白いオオカミはその美しい毛を逆立てて言い放った。

 『黙れ!ここまで来たのにもかかわらず、迷い込んだ?何もしないから見逃してほしいだと?あり得るかそんなこと。この聖域には幾重にも結界が掛けられているんだぞ。それをここまで来て何もしないだと!?」

 「っ!?」

 『さぁ何をしに来たのか言え』

 どうやら相手の殺気の膨れ方や相手の毛を逆立てている様子からあまり交渉がうまくいっていないことを悟った。しかしこのままでは決裂してしまうと思ったから本当のことを言った。

 「本当だ!この場所に来たのは偶然だ。どうしたら信用してくれる?」

 蒼穹は諦めず必死に相手に本当の事を告げたが、その言葉は目の前にいる白いオオカミには届かなかった。

 『…ふん。そうか、ここに来て嘘を吐くとは見上げた根性だ。もういい。話し合いは終わりだここからは戦いだ。』

 そう告げると白いオオカミは毛を逆立てて犬たちが襲うような前傾姿勢になった。

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