表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

2日目。

1.

「・・・ふぅ・・・」

昼休み。

学校についてからも、茜はいっこうに僕に話しかけてこなかった。

それどころか、話しかけようとすると…避けるようにしてどこかにいく。

「はぁ…」

なんだよ僕が何したってんだよ…とブルーな気分にひたっていると、


『ザ、ザザ…ブツン』

教室のスピーカーが電流を通した。

『あー…えーと2年3組の神崎優くーん、2年3組の神埼優くんはー至急職員室まできてくださいなー・・・くりかえしませんよー…』

ブツン、とそれだけで途切れる。

放送とわかるまで数瞬。

…声の主が担任とわかるまで2秒。

あの舌ッ足らずな話し方はあの人しかいない。

幼なじみには避けられるし・・・次は先生の呼び出しか…

さらにブルーな気分にさいなまれながら、僕は職員室に向かった。


2.

コンコン、ノックする。

「しつれーしまーす…」

三人。

警察官の人と、メガネのすらりとした男の人。あとは―

「優ちゃん!」

―呼び出した張本人。

普通担任は生徒をちゃん付けでは呼ばない。世間的常識で考えれば。

「先せ、…いや、『祐奈(ゆうな)姉さん』。…いい加減、ちゃんはやめてほしいんだけど…」

そう。担任の朝比奈(あさひな)(ゆう)()『先生』は、僕の元伯母にあたる。

しかしながら『伯母さん』とでも呼ぼうとならばパンチが飛んでくる。自称ヤクザを吹っ飛ばした拳。

…僕は善良な一般市民だ。なのに殴られた経歴を持つ。

「で、何?」

「ム、いきなり元親戚とはいえ先生に向かってタメ口?」

「何デスカ、先・生?」

「よろしい」

満足そうにうなずく先生。

「――それでね、後ろのこの二人が―」

「警部の本田だ」「カウンセラーの(もみ)(のき)です」

そっけない紹介。それ以上は話すことなどないかのように。

・・・・・・・・・・・。

意味がわからない。

何故、こんなところにこんな人たちがいる?

…いや、カウンセラーならまだわかる。だが、…警察…?

混乱している僕に、朝比奈先生は、話を切り出した――




―――話を、まとめる。

今日午前6時過ぎに、ここ(かざ)()()安武(やすたけ)(ちょう)の路地で、高校生5人の遺体と1人の重傷者が発見された。

彼らは何か鋭い刃物で全身を切り刻まれており、多量の血に死体は沈むようにして――

――否、浮かんでいるのを近くの住民が見つけ、通報したものらしい。

そこまでなら自分が呼び出される理由は皆無だ。しかし続きに――

なお、この遺体は昨晩から今日未明にかけて殺されたものであり、

今日未明、現場から一番近い交番に駆け込んできたのが、――僕だった。

その際に、血にまみれたシャツから滴り落ちた血痕が交番の前に残っており、調べた結果、6人のうち4人の血液が混ざったものだったという。

この時点で僕は重要参考人、否、最重要容疑者として目をつけられた、というわけだ。

もう1つ、付け加える。

その襲われた6人の『生徒』は――この学校、風見学園の生徒であった、ということである。


「…わかったかしら…?」

少々沈んだ声で、話し終わった先生は今にも泣きそうにこちらを見る。

「・・・・・・・・・・。」

たしかにあの場にいたのは事実だし、シャツが真っ赤に染まっていたのは、やはり血であったのだ。

夢と思っていたもの――否、思いたかったものを、現実として突きつけられた。

証拠は血痕。

凶器はないにしても、血を浴びた少年が犯人でない証拠にはならない。

弁解は――ない。


「――――というわけで、君には事情聴取、もといカウンセリングを受けてもらいたいんだ」

2人のうちの一人、――樅木といったか――カウンセラーの彼は僕に提案をする。

事情聴取?バカな。犯行声明の間違いじゃないのか?

暗に[自白しろ]と言っているようなものだ。

それに僕は――

「…すみませんが、覚えもないことを突きつけられても困るんですが」

――しらばっくれた。

「知らないふりはいけないよ?」

樅木は笑っている。

口だけで。

目はまったく笑っていない。

ヒトを観察する眼。

その人のどこがどうなっているのか、『中身』を見抜く、眼。

「…さ、神崎くん。行こうか」

「ちょっと待ってくれよ!僕は何も…っ!」

「きみしか、いないんだ」

・・・何のことだか、瞬時に悟った。

    僕は、…従うほかなかった。


3.

所変わって、カウンセリング室。

「だから、知りませんて。」

ズキズキ頭が痛むせいで、まともに視界を固定することが出来ない。

「…じゃあ、なんであの時君は、血まみれだったのかな?」

樅の木という名のカウンセラーは、そんな僕の様子を気にすることもなく、静かに問う。

「だから―――っっ!?」

突然、頭を思いっきり殴られたような衝撃が襲った。


(そのへんにしとけや)


…知っているようで、聞いたこともないような声が、頭に響く。


(お前はもう、『俺』のモンなんだ)

(お前はもう―――)


彼は、なんと言ったのか。


 だんだん、声が遠くなる。


それに伴って、

―――僕の意識も、深い闇に引きずり込まれていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ