Prologue.
Prologue。
…パチパチと、炎がはぜる音がする。
僕はそんな中で、美しい銀色の長髪を持つ少年と対峙している。
否、僕は、僕じゃない。
僕は―――「俺」なんだ。
「俺」は僕の意思も関係なく、言葉を紡ぐ。
「・・・っとに、俺たちにゃあふさわしい決闘場所だなぁ、オイ?」
「ふふ、いい演出でしょう?仲間の死による死怨、もとい死焔で彩られた場所―――…くくく、本当に、いい場所ですねぇ。『兄さん』?」
「ほざけ。テメェの目的は俺だけだったはずだ。…何故、殺した…!」
怒りを内包する、叫びにならぬ押し殺した声。
「何故? それはですね…単に、『邪魔だったから』では、いけませんか?」
「――――ッッ!!!」
俺は今にも飛びかかろうとする身体を理性で押しとどめる。
「…もう、テメェとは話すこたねぇ。お互い、コイツで語ろうじゃねぇか」
取り出したのは、すべてを飲み込むような黒い大剣。
轟、と風がなぎ、炎が一瞬、勢いを増す。
「もう話すことはない、ですか…。 いいでしょう、受けて立ちます」
少年も剣を抜く。
その剣はまるで遠い異国の剣のように、反った型。
しかし刀身は、多くの血を吸ってきたかの如く、朱に染まっていた。
「 。」少年が、何かを呟く。
すると刀身は炎を纏い―――紅い大剣と成った。
紅と黒の刃は疾風となり、
激しい剣撃が、火花を散らせるかのように。
俺らは、いつまでも――――
がば。
…起きた。
(また、この夢か…)
僕、神崎・優は、ベッドの上で夢を回想する。
普段の夢なら、起きた時点で忘れているものだ。だが、
最近見だしたこの夢だけは、やけに鮮明に思い出せる。
それどころか、感覚すら夢と共有していたかのように。
「・・・・・・。」
だが、考えたって僕は今まであんな場面に出会ったことはないし、僕は1人っ子だ。弟なんていない。
「・・・・・・。」
なにか、既視感に襲われる要因があるのかと思案してみても、…すくなくとも、記憶にはない。
考えても答えが出ないのはいつものことだ。
夢は、忘れるもの。現実にはなんら関係のない、幻想。
よし、と自身の両頬をはたいて、僕は今日も学校に行く支度を始めた。