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第六話 ペンタゴン魔法

灰原真由香と俺と真福は三角形を結ぶように

対抗していた。

ーー月城尚弥から月城リリカが繋がる世界線に入ってしまったのだ。


「月城尚弥って、月城リリカと関係あるのか」

「月城リリカ、、確か尚弥には妹がいたはずだ」

「俺たちは、君の異能を使って月城リリカを痛みなく冷蔵庫から出してほしいんだ」

「冷蔵庫?月城尚弥に関係するかもしれない

確かめてみよう」


灰原真由香が魔法陣を展開し、俺と真福を巻き込んでいく。


「ペンタゴン!!!さあ、月城リリカの過去に」


―――相馬家。リリカ、七歳。

鏡の前で前髪を整える。息を吸うたび胸がぎゅっうと締めつけられ頬は勝手に熱くなってしまう。だってもうすぐ悠斗さまが来てしまうのだ。視界が光に包まれる。この瞬間から幸福で少し緊張してしまう。カチャ、と扉が開いた。


「ただいま、リリカ」

「お帰りなさいませ悠斗さま!学校はどうでしたか!」

「真福と体育祭の練習をしてたらね、蝶が近づいてきたんだ。一緒に走ってさ、なんかリリカに似てるなって思って捕まえてきた」


差し出された手には、小さな蝶で淡い水色の羽にやさしく浮かぶピンクの紋様。見えている紋様は私にはハート形に見えているの。世界でいちばん綺麗に見える。


「わあ、とっても綺麗ですわ」

「風もすごく強くて走っていて気持ちよかったよ」

「ふふ、悠斗さまこの素敵な蝶々、宝物にしてもよろしいですか?」

「もちろん!リリカのものだよ」


こんな幸せが世界にあっていいのだろうか。感謝がこぼれ落ちる前に、私は思わず飛びついてしまった。悠人さまの小さな腕が必死に抱きしめる。


「悠斗さま……いつもありがとうございます。

わたくし、悠斗さまのお嫁さんで幸せです」

「えへへ。どんな世界も、リリカに見てほしいんだ。だから僕がいっぱい連れてくるよ」

「……はい」


ほんとうは泣きそうだけど、掴む手が強くなる。

そこでメイド服の影が、そっと震えた。


――メイドとして潜入中の灰原真由香、俺と真福は冷静を保つ。


(……かわいすぎるだろ月城リリカ……)


「ここは月城リリカの過去だ。お前が月城リリカと繋がっていたから戻れたんだ」

「そうか、それで月城尚弥はどこだ」


そう思ったとき――メイドが静かに告げた。


「リリカ様。月城家のお兄様がお見えです」


扉が開き空気が少しだけ、引き締まった。

背が高く、目に静かな覚悟を宿した青年だと分かる。


「初めまして相馬悠斗さま。私、月城尚弥と申します。リリカの兄であり相馬家を守る部隊に属しています。本日は重大なお話が」


お兄さまがこちらを振り返る。

いつもの優しい笑顔。だけど、その奥にわずかな不安が揺れているのが分かった。


「リリカ、少し待っていてね」


⸻バタンッ

月城尚弥は一礼し、静かに言葉を落とした。


「失礼ながら悠斗さま。リリカの今後の異能については触れてはいけません。一刻も早く婚約を解消してください」


俺の頭が、ひび割れる音がした気がした。

悠斗は尚弥ににじりより、強い視線を送る。


「誰に指図してるんだ。婚約は解消しない」

「ですがリリカはいずれこの国を壊す身です。あの子の異能は封じるべきです」

「それが、どうした」

「月城家が預かるので相馬家の相続に相応しくないかと」


怖いほど迷いがなく、はっきりと告げる。

「ここは相馬家だ。俺が異能を滅ぼす。その前に探している、リリカがここから安全に出られる道を。そして、異能が開花しない未来を」


視線がぶつかる。これは相馬悠斗の覚悟だ。

月城尚弥は長い沈黙のあと深く頭を下げる。


「……承知しました、その未来を守るために。私もお供致します。リリカと部隊の為にも」


灰原真由香が隣でぎりぎりと拳をにぎり、悔しいように告げる。


「どうして急にいなくなったんだ、、」


俺が頷いた途端、魔法陣の中が疼き、世界が変更された。砂漠のようで、現実と夢の境界線が擦り切れた、焦げたコンクリートに歪んだ建造物。

ここが《第零機動群 ─ ヴォイド》が滅んだ戦場。


「どこだ、、ここは」

「かつて月城尚弥が属していた《第零機動群 ─ ヴォイド》だ」


俺と灰原真由香は戦場にいた。そこに月城尚弥は先陣をきって砲弾していた。戦っている異生物は腕は長く、骨格は歪み巨大だ。

真由香に巨人の黒い腕が襲った瞬間、月城尚弥が庇い、地面に撃ち込まれていた。


「――尚弥さん!!!!」

真由香は尚弥の胸に手を押し当て、治癒魔法を発動する。


「…はあ、はあ、ペンタゴン!!!!」

「……真由香、どうしてここに」

「尚弥さん、ここにいたんだね」

「月城リリカが外に出た事で、異能が巨大化したんだ。俺が守れなかった」

「月城、、リリカ、、」


黒い槍が砕け散る。異生物の殻が、ひとつ、またひとつ落ちていく。月城尚弥がポケットからぐちゃぐちゃの向日葵を渡す。向日葵は、月城尚弥と灰原真由香の最愛の証だった。


「……真由香、俺は強かっただろ?お前を守れてよかった、お願いがある、真由香の魔法で月城リリカの異能を止めて欲しい」


優しく触れた指先が、そのまま許しになるように。尚弥は顔を覆い決壊したように崩れ落ちた。


「、、、分かりました」


巨大化したその黒い腕が、瞬間悠斗の胸をも貫いた。肺が潰れ、視界が白く弾ける。骨が心臓が脳がえぐれるいたい。


俺の視界は、ぼやけていて何も見えない。リリカ、、リリカ、、リリカ、、、目の前には灰原真由香が俺を赤い眼で睨んでいた。

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