表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストリートレース  作者: クラシック愛好家
6/30

新東名 R35(序)

第6話 ── 新東名 R35(序)


東名高速・海老名JCT――深夜1:48。

外気は冬のはじまりの冷たさをまとい、闇はまだ静かに眠っていた。


だがその下で、動き始めている“夜”があった。


セイジのディアマンテの後ろを走りながら、俺はW124のステアリングを握る手に力が入るのを感じていた。

Eクラス。いや、もうそんなカテゴリーの呼び方はこの夜には必要ない。ただの中古車だ。だが――今の俺にはこいつしかいない。


R246を抜け、厚木を越え、新東名の入り口が見えた。

緩やかなカーブを描く真新しい路面、遠くへ続いていく暗い直線。

そこはまるで、別の国の道路のようだった。


セイジが無線で言った。


「ここからが“表”じゃない走りの入り口だ。」


返す言葉はなかった。息を整えるので精一杯だった。



◆最初の条件


新東名に入ってすぐ、セイジのディアマンテの速度が落ちた。

左にウインカーを出し、追い越し車線を空ける。


「カイ――まず、お前に見せたいものがある。」


「見せたいもの?」


「暗い夜をぶった斬る“速さ”だ。」


その言葉が落ちた瞬間だった。

ルームミラーの奥から――光の点が現れた。


一瞬で距離を詰めてくる。

ヘッドライトの照射角の低さ――車高は低い。

だがあの重量感のある光の伸びは――。


来る。


ただの車じゃない。


速い。異常に速い。


俺の背筋が反射的に硬直した。



◆R35


ズォオオッ――――ッ


一瞬、景色が歪んだ。

いや、違う。そいつが速すぎて、俺の感覚が追いつかなかっただけだ。


漆黒のボディ。

幅広い肩を持つリアフェンダー。

空気を抉るようなフロントノーズ。


日産 GT-R。R35。


無造作に俺たちを抜いていった――いや、違う。

**ぶち抜いた。**音もなく。


後ろを走るはずの存在が、目の前から一瞬で遠ざかるという恐怖。


セイジがすぐに加速した。

ディアマンテのエンジンが吠える。


「……追うのか。」


「違う。――“見届ける”んだ。」



◆未知の領域


新東名は速い。限界が高い道路だ。

だが――その速さは道路の許容速度の話じゃない。

走る人間のメンタルを試す道だ。


R35は走りながら車線を変えるたびにわずかにテールを振った。

挙動は荒い。だが制御されている。

いや、制御しているというより――ねじ伏せている。

そんな走り方だった。


俺のW124はまだノーマルだ。

アクセルを踏み込んでも、ATが唸るだけで加速は鈍い。

足はフワつくし、ブレーキは確実に旧世代。


だけど――


胸の奥が熱くなる。


こいつは速すぎる。化け物みたいな速さだ。

だけど、逃げられているだけなのに――なぜだ。


――なぜ、目が離せねぇ。



セイジが無線で言った。


「あれが“裏”の世界の一部だ。

 全開に耐えられる車。暴力的な速さ。

 そして――走る理由を持つドライバー。」


「……ドライバー?」


俺はR35のリアを見ていた。

ブレーキは滅多に踏まれない。ステアも小さい。

それなのに異様な速度で曲がる。


異常な集中力で走る人間の走りだ。


「カイ。お前は、まだ“速くなりたい理由”を持っていない。

 だから――負ける。」


「……負ける?」


セイジは静かに言った。


「この世には、この夜には――

 走る理由がある奴がいる。

 それが、お前の敵になる。」



R35がはるか前へ消えていった。

だけど俺の中には、焦燥に似た熱が残った。


まだ始まってもいない。

ただ走っているだけ。

なのに――胸がざわつく。


走りたい。

走りたい。

走りたい。


――こいつを追えるところまで。



W124のアクセルを踏み込んだ。

ATが激しくキックダウンし、M104が吠える。


ディアマンテが横に並んだ。

セイジがこっちを見て言った。


「ようやく、いい顔になったじゃねぇか。」




第6話・序 終


次回:第6話・中編「限界の入口」

W124、初の全開。

そして――“走り”が始まる。


やっぱりR35は速いですね!さすがニュルブルクリンクで最速タイムを更新した機体です!底知れないスピードとドライバーの実力!ワクワクさせやがる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ