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ストリートレース  作者: クラシック愛好家
28/30

湾岸ドライ 異変


◆湾岸ドライ──“異変”は、静かに始まる


ディアマンテと再び並走し、

アクセルを踏み抜こうとした、その瞬間だった。


──ピピッ。


小さな電子音。

走行中ほぼ鳴るはずのない警告。


カイ


「……っ!?

 (なんだ今の……?)」


視線をメーターに落とす。


そして――

血の気が引いた。


水温計が、じわじわと上昇している。


通常:90〜95℃

→ 今:103℃

→ さらに:105℃ を越えかけていた。


セイジ


「おいカイ……?

 速度が……ちょっと落ちてねぇか?」


カイ


「……いや、まだ行ける……!」


だが、足は微妙に震えている。

アクセルの床までの距離が、いつもより遠く感じる。



◆冷却の限界──“W124最大の弱点”


後ろのE46が状況に気づいた。


リョウ


「(あれは……間違いねぇ)

 W124の弱点、出たな。

 “冷却が間に合わない”。」


E280のM104系は頑丈だ。

だが重量+高速巡行+乱流+ECUで燃調薄めが重なれば、

いずれ壁が来る。


しかも今回の湾岸はドライの高速区間。

空気密度が高く、エンジン負荷も大きい。


水温計の針が揺れるたび、

カイの心臓も揺れた。


107℃

→ 108℃

→ 109℃


セイジ


「なっ…カイ……っ!

 これ以上踏んだらマズいだろ!!」


カイ


「……黙れ……!

 俺は……“走る”って決めたんだ……!!」


だが――

エンジンの音がわずかに“濁った”。


グォォォ……グォッ……。


M104の本来の滑らかさが消えている。



◆それでも横に並ぶディアマンテ


セイジ


「その走りへの覚悟はリスペクトしてんだよ。

 でもな……!」


カイ


「……近づくな。

 巻き込む……!」


セイジ


「お前を“独りで苦しませる”気はねぇんだよ!!」


ディアマンテが、

わざとW124の少し前に出る。


――風の流れが変わった。


ディアマンテが“風防”になって、

カイのW124の空気抵抗を軽減している。


リョウ(驚愕)


「セイジ……!?

 なにやってんだお前……!」


セイジ


「決まってんだろ……

 仲間を死なせねぇためだ。」


湾岸の速度域で風よけなど、

命を張った行為だ。


だがそのおかげで――

W124の水温が 109 → 107℃ に落ち着き始めた。


カイ


「……セイジ……

 お前、それ……!!」


セイジ


「走りてぇんだろ?

 なら“死ぬまで走る”んじゃなくてよ……

 “生きて戻るまで走れ”。

  それが、走り屋だ。」


湾岸の照明が二台を包む。


そして後方ではE46が静かに距離を詰めてくる。


リョウ


「……次は俺の番か。」

「あの水温上昇の“本当の原因”、

 後ろから見て気づいちゃったからな。」


カイ


「……本当の原因……?

 何だよそれ……?」



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