湾岸ドライ 異変
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◆湾岸ドライ──“異変”は、静かに始まる
ディアマンテと再び並走し、
アクセルを踏み抜こうとした、その瞬間だった。
──ピピッ。
小さな電子音。
走行中ほぼ鳴るはずのない警告。
カイ
「……っ!?
(なんだ今の……?)」
視線をメーターに落とす。
そして――
血の気が引いた。
水温計が、じわじわと上昇している。
通常:90〜95℃
→ 今:103℃
→ さらに:105℃ を越えかけていた。
セイジ
「おいカイ……?
速度が……ちょっと落ちてねぇか?」
カイ
「……いや、まだ行ける……!」
だが、足は微妙に震えている。
アクセルの床までの距離が、いつもより遠く感じる。
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◆冷却の限界──“W124最大の弱点”
後ろのE46が状況に気づいた。
リョウ
「(あれは……間違いねぇ)
W124の弱点、出たな。
“冷却が間に合わない”。」
E280のM104系は頑丈だ。
だが重量+高速巡行+乱流+ECUで燃調薄めが重なれば、
いずれ壁が来る。
しかも今回の湾岸はドライの高速区間。
空気密度が高く、エンジン負荷も大きい。
水温計の針が揺れるたび、
カイの心臓も揺れた。
107℃
→ 108℃
→ 109℃
セイジ
「なっ…カイ……っ!
これ以上踏んだらマズいだろ!!」
カイ
「……黙れ……!
俺は……“走る”って決めたんだ……!!」
だが――
エンジンの音がわずかに“濁った”。
グォォォ……グォッ……。
M104の本来の滑らかさが消えている。
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◆それでも横に並ぶディアマンテ
セイジ
「その走りへの覚悟はリスペクトしてんだよ。
でもな……!」
カイ
「……近づくな。
巻き込む……!」
セイジ
「お前を“独りで苦しませる”気はねぇんだよ!!」
ディアマンテが、
わざとW124の少し前に出る。
――風の流れが変わった。
ディアマンテが“風防”になって、
カイのW124の空気抵抗を軽減している。
リョウ(驚愕)
「セイジ……!?
なにやってんだお前……!」
セイジ
「決まってんだろ……
仲間を死なせねぇためだ。」
湾岸の速度域で風よけなど、
命を張った行為だ。
だがそのおかげで――
W124の水温が 109 → 107℃ に落ち着き始めた。
カイ
「……セイジ……
お前、それ……!!」
セイジ
「走りてぇんだろ?
なら“死ぬまで走る”んじゃなくてよ……
“生きて戻るまで走れ”。
それが、走り屋だ。」
湾岸の照明が二台を包む。
そして後方ではE46が静かに距離を詰めてくる。
リョウ
「……次は俺の番か。」
「あの水温上昇の“本当の原因”、
後ろから見て気づいちゃったからな。」
カイ
「……本当の原因……?
何だよそれ……?」
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