「雨夜、湾岸にて」
第15話「雨夜、湾岸にて」
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深夜1時すぎ。
路面は完全ウェット。
首都高湾岸線──レインボーブリッジを抜けた先、照り返す路面がまるで黒い鏡のように光っていた。
パーキングエリアの屋根下で、3台の車が雨音を背に並んでいる。
・F34A ディアマンテ(3.0ツインターボ / 5MT / セイジ仕様)
・E46 318i ツーリング(S54 / 6連スロットル / 5MT / リョウ)
・W124(ECU現地合わせ直後 / カイ)
「……でけぇな、やっぱディアマンテって。」
フードを開けたセイジの車を見ながら、カイが苦笑する。
「重さは正義だよ。雨の日ならな。」
セイジがニヤリと笑い、ボンネットを閉じる。
その音だけが、雨の世界に硬く響いた。
「トラクション、抜けねぇんだよこの鉄の塊。だから滑らねぇ。」
「でもNAの特性もよくわかってるお前が、ツインターボなんだな。」
とカイ。
「雨の日は話が違う。息の長いトルクより、瞬発力で“前”に出す。」
セイジは指を弾く。
「滑る前に加速終わらせる。それが雨の走り。」
そこに横からリョウが声を入れる。
「まあ、俺は逆に“コントロールで遊ぶ派”だけどな。」
リョウのツーリングは、NAの直6が雨音の中でも軽やかにアイドルしていた。
「で、カイ。」
リョウがEクラスを指差す。
「ECU仕上げたばっかで、いきなり雨の湾岸かよ。普通ビビるぞ?」
「普通じゃ勝てねぇからな。」
カイはエンジンをかけた。
M104 直6が、今までより明らかに鋭いレスポンスで回り出す。
「燃調も点火もMAP取り直し。踏み切れる領域が増えた。」
カイはシートベルトを締める。
「問題は──雨で出せるかどうか。」
セイジがつぶやく
「だから連れてきたんだろ?雨のプロを。」
カイが笑う。
「お前の走り、雨だとどうなるのか見ててやるよ。
ついて来い。俺が“限界の位置”を見せる。」
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次の瞬間、ディアマンテのテールランプが暗闇を裂いた。
雨の湾岸へ――
3台が、ゆっくり滑り出していく。
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