辰巳の出会い
2話です。続きが気になりますねぇ。僕も同じ気持ちです。これからどんどんワクワクしていきますよっ!
第2話 ──辰巳の出会い
辰巳第一PAは、いつものように静かな戦場の空気をまとっていた。
人工島の上に浮かぶこの場所は、ただの駐車エリアではない。首都高で走る者たちが集まり、互いの存在を確認する“無言の名簿”のような場所だ。
俺のW124は静かにアイドリングを続けていた。熱を持ったオイルの匂いが微かに漂う。ボンネットの向こうでは都心の光が滲んで揺れている。
隣に止まった三菱 F34Aディアマンテは、走行直後の熱気をまといながらも落ち着いていた。濃い黒のボディは控えめな外観だが、明らかに速さの匂いがする。
ドアが開き、ドライバーの男が降りてきた。
身長は180近いが細身。髪は短く、表情に無駄がない。
年齢は、俺より少し上か、同じくらいだろう。
「悪くない走りだったな。」
開口一番、それだけ言った。褒めるでもなく、挑発するでもなく、ただ事実だけを淡々と伝えるような声だった。
「そうか?」
「このご時世に124か。普通に乗るやつは少ない。」
「ただの中古だよ。速くもない。」
「速いかどうかはドライバー次第だ。」
そう言って、男は煙草に火をつけた。控えめな銘柄。紙巻きの音を聞くこと自体、久しぶりに感じた。
「名前は?」
「……カイ。」
「そうか。俺はセイジだ。」
互いに名乗るだけ。それだけなのに、不思議とこの男は“敵”には感じなかった。
首都高にはよくいる。台数だけでイキる連中。無駄な羽の生えたRX-8、踏めば勝てると思っているGRスープラ、ローンの塊みたいなAMG。
だが、この男は違う。
走りで話すタイプだ。
そのときだった。
PAの奥に、静かに1台の車が入ってきた。
BMW E46 3シリーズ ツーリング。
色は深い紺。ホイールはBBSのRI-A、控えめな車高。だが、どこか纏っている雰囲気が違う──“仕上がり切っている車”の空気があった。
そのBMWは俺たちの前で止まり、ドライバーが降りてきた。
ラフなパーカー姿。フードを被り、表情が見えない。が、その存在感は薄くない。むしろ逆だ。
「随分と珍しい取り合わせだな。」
フードの男が言った。声は低い。よく通る声ではないが、耳に残る。
「三菱とベンツ。しかもW124。首都高じゃ珍しい。」
セイジが短く言い返す。
「街乗りだ。走ってたわけじゃない。」
「へぇ。さっき湾岸でちょっと遊んでただろ。」
──見られていた。
フードの男は俺を見た。
「お前、走る理由はあるか?」
言葉の意味が分からなかった。だが、なぜか無視できなかった。
「走る理由、ね。」
「なんとなく走ってるやつは消える。事故るか、警察にすくわれるか、金が尽きるか。どれかだ。」
その男は言った。挑発ではなく、ただの事実のように。
「お前は、どっちだ?」
俺は少し考えた。そして、言った。
「……まだ探してる途中だ。」
それを聞いたBMWの男は、静かに笑った。
「なら、その124。まだ伸びるな。」
「は?」
「走る理由を見つけた車は速くなる。人間も同じだ。」
BMWの男はそう言って、車に戻ろうとした。
「待て、名前は?」
俺が言うと、男は少しだけ振り返った。
「リョウ。」
それだけ言って、BMWは辰巳を去っていった。
そのテールランプの消え方を見ながら、俺の胸の奥に微かな熱が残っているのを感じていた。
──走る理由 か。
そんなもの、考えたこともなかった。
ただ走っているだけのはずだったのに。
久しぶりに、「何か」を感じている自分がいた。
E46の3シリーズツーリングってなんというか良き。
セダンではないけれどワゴンのかっこよさがある車です!3シリーズ自体がスポーティセダンなのでこのツーリングも走ってるんでしょうね笑。




