「加速より、流れを掴め –Corner Logic-」
第12話
「加速より、流れを掴め –Corner Logic-」
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湾岸じゃない。
今日のテストコースは 首都高・C1内回り。
綾瀬が理由を言った。
「直線だけじゃ勝てねぇ。
コーナーで“負けない車”にしろ。
重い車ほど、曲がり方が命になる。」
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◆ コーナーは踏む場所じゃない
走り出してすぐ、綾瀬は助手席で言った。
「お前はまだ “速く走ろう” としてる。
それが遅ぇんだよ。」
「……どういうことだよ?」
「速さは結果だ。
コーナーは“リズムで抜ける”んだ。」
俺は黙ってハンドルを握った。
――入って、抜けて、また次のカーブ。
今まで意識してなかった“つながり”が見えてくる。
綾瀬が続けた。
「加速、減速、舵、荷重。
全部“バラバラ”にやってるうちは、お前はただのドライバーだ。
全部“つなげて”走れたとき、初めて“走り屋”になる。」
言葉の意味はすぐにはわからなかった。
でも――体は勝手に理解し始めていた。
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◆ 走りの最中に見えた“現実”
3周目、リズムが少し掴めてきた瞬間。
――ミラーに黒影。
「……来たな」
黒のスープラ。
ナンバー 9674
再び、霧島 遼。
だが今回は違った。
“真正面のライバル”じゃなく――
“自分の先にいる世界”として現れた。
俺は必死で付いていこうとした。
だが、すぐ理解した。
速さが違う。
いや――“次元”が違う。
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◆ 天才の走り
霧島のスープラは 踏んでない のに速い。
無理をしてない。
ブレーキも短い。
ステアも少ない。
ロールも小さい。
それでも異常に速い。
まるで――
「車が勝手に曲がってる」みたいだった。
綾瀬が静かに言った。
「あれが“車を速く走らせてる奴”じゃねぇ。
“速い車をちゃんと走らせてる奴”だ。」
「……どういう意味だよ?」
「機械の性能を“自分が邪魔してない”ってことだ」
俺はその瞬間、敗北を飲み込んだ。
勝てねぇ。
まだ何もかも足りない。
でも――
心の奥に、確かに火がついた。
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◆ そして綾瀬の言葉
ピットに戻ると、綾瀬は俺に言った。
「いいか、ここからは“改造”じゃ勝てねぇ。
お前自身の“頭”が走りを作る。」
「……何をすればいい?」
綾瀬は口元で笑った。
「次のステップは――ECUと吸排気。
だがそれは“馬力のため”じゃねぇ。」
「じゃあ何のためだよ?」
「“レスポンス”。
――重い車は、反応速度で勝負する。」
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