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ストリートレース  作者: クラシック愛好家
17/30

「重さは、まだ敵 –Test Run-」

第10話

「重さは、まだ敵 –Test Run-」



湾岸線・辰巳付近。

午前3時。

ブレーキと冷却を手に入れたW124は、確かに“走れる車”になっていた。


――だが、それは“走り出す資格を得ただけ”だった。


アクセルは踏めるようになった。

高回転まで怖くなく回せるようになった。

ブレーキも、もう不安じゃない。


……でも速くはなかった。



◆ コーナーでわかる「重さ」の現実


右レーン前方を走っていたS15が、ひらりとラインを変えた。

まるで車体が空気を切るように、スムーズに。


そのあとをFDが続く。

タービン音の立ち上がりが鋭くて、追い抜く瞬間の音が“跳ねる”ようだ。


直線ではついていける。

でも――コーナーに入ると、一気に差が開く。


W124のステアリングを切る。

重い。

いや、正確には“動き出すまでが遅い”。


サスもブッシュもまだ純正。

ロールの始まりで一瞬“待たされる”。


たったそれだけの差が、走りでは致命傷になる。


FDが消えていく。

S15のテールランプも遠ざかる。


「……これが重さってやつか」


俺が呟くと、綾瀬は言った。


「違う。

 “重いから遅い”んじゃねぇ。

 “重い車を走らせる装備が足りない”だけだ」


言葉は優しいのに、現実は冷たい。



◆ 停車、そして沈黙


辰巳第一PAに入る。

車を止めても、心臓はまだ走っていた。


S15が停まっている。

FDもいる。

さっき抜かれたやつらだ。


でも誰もこっちを見ない。

そりゃそうだ。

W124なんて「ただのベンツ」だ。

重くて古くて遅い。今のままじゃ存在すら認識されない。


「悔しいか?」


綾瀬が横で聞いてくる。


「……わかんねぇ。

 悔しいって言えるほど、まだ俺は走れてねぇ」


「いい答えだ。

 じゃあ次は、“曲がれるようにする”。

 サスとスタビ、ブッシュも全部だ。」


「……全部?」


「ああ。重い車はな、足回りで“戦う資格”が決まる」



◆ そして、遠くに見える“怪物”


ふと見ると、さっきの黒スープラがPAに入ってきた。


ほとんど無音で停まる。

タービン音さえ“支配されてる”感じがする。

乗っている男はサングラスのまま、ただ降りもせず、何も見ていない。


こっちなんか眼中にない。


“苦労無し(9674)”。

この時点では、名前すら知らない。


だが――わかっていた。


あいつは“壁”じゃない。

“世界”だ。


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