湾岸初接触-綾瀬FD- 中編
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第8話・中編
「湾岸初接触 -綾瀬FD-」
首都高湾岸線――東扇島の闇は、海風の冷たさと、見えない緊張を帯びていた。
停めたばかりのW124のエンジンが、まだ冷えきらず小さくカチッと音を立てる。その前に――ひときわ低く鋭いアイドリング音が近づいてきていた。
ヒュウゥゥン――
ロータリー特有の吸気音。だがこれは普通じゃない。空気を切り裂くようなレスポンス。圧縮の匂いさえ漂わせる音。
白いFDが目の前で止まった。RE雨宮のAD-FACEが街灯に鋭く光る。
だが、それ以上に――その車は「何かを纏って」いた。ただの改造車とは違う。経験と走行距離、数え切れない整備と実走の蓄積――走るための本物のオーラが漂っていた。
運転席のウインドウが下がる。
夜気が変わった。
「……新入りのベンツ、それはEクラスか?」
その声は冷たくなかった。不思議な熱を帯びた低い声だった。
「ああ、Eクラスだけど」
「型式は?」
車好きの挨拶代わり。俺は少しだけ口元が緩む。
「W124、E280。M104直6の後期。」
FDの男――綾瀬は少しだけ笑う。
「へぇ。直6で来るか。時代に逆らう選択、嫌いじゃない」
その瞬間に分かった。
——この男は“わかってる”。
「鷲尾から聞いてる。お前を“試せ”って話だ」
「テスト走行ってわけか」
「いや――試験だ。」
綾瀬は静かに言い直した。
「――場所、選べ」
綾瀬は言う。
「どこを選んでもいい――ただし、逃げた時点で失格だ。」
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