湾岸連合 中編
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第7話・中編
「湾岸連合」
夜の湾岸線は、昼とはまるで違う顔を持っている。
ネオンの消えた物流倉庫群、眠らないベイエリア、路面を這うような海風。そして、首都高の中でも最も速度域が高く、“狂気を映す鏡”とも呼ばれる路線。
エンジンはまだノーマルのM104、4速ATのまま――ただし、シートだけはブリッドのフルバケに換えた。俺はこのW124という車に“走る意味”を教える前に、まず自分の身体を固定する必要があった。
――まだ、走れる車じゃない。それはわかってる。
だが、走らなきゃ始まらない夜もある。
辰巳PA。
そこは湾岸の玄関だ。
場違いな雰囲気はすぐわかる。
ここに来ている連中は、単に車が好きとか、速い車が欲しいとか、そんなレベルじゃない。
――“速度に取り憑かれた人間”しかいない。
その中に、俺のW124は停まった。
「……来たな」
パラっと低く唸るVG系サウンド――F34Aディアマンテ、辰巳に到着。セイジが降りてくる。
「お前マジで来たのか。しかもノーマル……頭いかれてんな」
「走れるとは言ってない」
「は?じゃあ何しに来た」
「――速くなりに来た」
セイジは一瞬、言葉を失い、それから小さく笑った。
「……いいね。お前、嫌いじゃないわ」
その後ろから、直6のアイドリングが静かに近づく。
BMW E46 3シリーズツーリング。乗っているのはリョウ。
「……来ると思ってた。お前はたぶん、こっちの人間だから」
こっち――つまり湾岸という意味だ。
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その時、辰巳の空気が一変した。
遠くから聞き慣れない音圧が近づいてくる。
電子制御ツインターボの獣――R35 GT-R。
現れたのは、あの男――鷲尾。
前に横羽線で俺に言った男。
「お前は――まだ走る覚悟を知らない」
あの言葉は、まだ胸の奥に刺さったままだ。
だが今日は違う。俺は逃げに来たわけじゃない。
向こうも俺を見つけた。ゆっくり近づいてくる。
「……来たか、ベンツ」
「名前じゃなくて車で呼ぶのか」
「速くなるまで名前は要らねぇ」
その言い方は、決して悪意じゃない。
それがこの世界のルールだ。
「お前ら、今日が初の湾岸か――紹介しよう」
鷲尾が手を挙げると、辰巳にいた車が一斉に反応する。
その瞬間――湾岸の勢力が浮かび上がる。
•東環の狼 :東名~大黒~K1を縄張りにする走り屋集団
•ベイサイド:横羽の加速勝負を主戦場にするゼロヨン系
•東京環状会:都会型の最速タイムを至上とするチーム
•湾岸連合 :首都高最速を狙う走りの集団――※鷲尾が所属
そして鷲尾は言う。
「首都高はただの道路じゃない。
ここは“もう一つの世界”だ。
走り屋には階級がある。名前を持つ奴だけが、この世界に生きる資格がある」
そう言って――俺のW124のボンネットを軽く叩いた。
「――ベンツ。聞け。
名前を持たぬ走り屋は、影と呼ばれる。
ここに来た以上――影のまま帰るか、名前を掴むかだ」
その言葉を、俺は正面から受け止めた。
そして、鷲尾は挑発する。
「影になるなら今すぐ帰れ。
――戦うなら、湾岸へ来い」
夜が俺を試している。
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初めてのバトルになりそうだけどもう少し引っ張らせてね。次次回はバトルにしたい。




