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【ヒューマンドラマ】

あいつは馬鹿だ

作者: 小雨川蛙

デリケートな話です。

不愉快な思いをされましたら申し訳ありません。

 真っ青な顔をしながらも必死に世界に立ち向かう人を見ていたとあるコミュティの人々が言った。


「あいつは馬鹿だ」

「そうそう。なんだってあんなに無理をしているんだ」

「あんな状態にまでなって苦しんで何をしているんだ」


 しかし、その人は働く事を辞めない。

 それを見ていた彼らはその人に近づいて言った。


「おいおい。なんでそんなに無理をするんだ」

「そうだそうだ。無理なんてするな」

「そんなことをしたってあんたは馬鹿を見るだけだ」


 しかし、それでもその人は働くのを辞めない。

 こうなってしまえばもう彼らにはどうしようも出来ない。


「頼むから無理をしてくれるな」

「そうだそうだ。何でそんなになるまで働くんだ」

「そんなに無理して生きて何になるんだ」


 そんな言葉も虚しく、ある日その人は死んでしまった。

 彼らは近づきその人の死を嘆いた。


「あんたは馬鹿だ」

「本当に馬鹿だ」

「救いようのない馬鹿だ」


「どうして無理をしたんだ」

「何で俺らの言葉を聞いてくれなかったんだ」

「苦しんで生きて死んで何になって言うんだ」


 さめざめと彼らは泣き続けた。

 彼らは同士だった。

 同じ病を抱える者。

 そんな中で彼らは四人で支え合って生きてきたのだ。

 しかし、ある日にその人は言った。


「俺。頑張ってみるよ。頑張らないと抜け出せないから」


 現代では珍しくない生きる事さえも苦しくて仕方ない病。

 うつ病。

 今日も一人の人が立ち向かい、無理をした末に死んでしまった。


「なんで心が壊れているのに無理をするんだ」

「死んでどうするっていうんだ」

「本当にあいつは馬鹿だ」


 泣きながら落ちていく彼らの悲痛な言葉を死んだ者には聞こえるはずもない。

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