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我、魔王スペルヴィアなり!!  作者: 黒っち
Phase 1.「目覚めし者たち」
7/41

007.「敗北の魔将」

 ――まずい。


 いや、漫画は別に机の中にでも隠しておけばいい。それはいい。問題はそこじゃない。

 問題は、「俺が女の子を部屋に上げたことなど一度もない」ということだ……!!


 ど、ど、ど、ど、どーすんの? どーすんの!?


 こういうときはどうすればいい? 臭いとか、クサッ! ていわれないかな? 消臭剤家にあったっけ? 後はなんだ? 何が必要だ? やっとかなければいけないことはなんだ?


 ――だめだ。時間が足りない。


 返答に窮していると、救世主が現れた。


「おっ……叡智に佐藤か。珍しい組み合わせだな」


 コツコツと歩いてきたのは牛島。


「えっ……モーとびなんでこんなとこに!?」

「なんでって、ココ本屋だぞ。先生がいちゃおかしいか」


 ヒラヒラと参考書を上下させる。


「あーそっか、そだよねハハハハ! てか意外と私服地味っすねセンセ?」

「ん? そか?」


 尾行してきてたのか、コイツ。銀髪は帽子の中にしまいこみ、目元もサングラスで隠している。あからさまに目立たないような服装を選んでやがる。


「まーんなこたどーでもいい。せっかく会ったんだ、メシでも付き合えや」

「マ!? モーとびのオゴリ!?」

「おう」

「しゃー! へへ超ラッキーだねピヨじろ♪」

「はは、そーだね」


 ――ファミレス。


 日が頂点を過ぎ始めている中、3人で席に着いた。


「そんじゃあーし飲み物とってくんね! 2人なにがい?」

「コーラで」

「あ、ありがと。じゃ、俺はえっと……コーラとジンジャーとメロンソーダとカルピスのブレンドで……」

「ヤバなにそれウケる! チャレンジャーかよ!」

「ハハ……」


 叡智さんがテクテクと歩いて行った。


「…………はぁ~……」


 大きくため息をつく。


「魔王様……大丈夫ですか」

「あぁ……大丈夫だ。よいタイミングで来てくれた」

「お褒めにあずかり恐悦至極に存じます。しかしあの女……狙いはなんでしょうか」

「……わからん。が、油断はできん。我は引き続きあの女の意図を探る。キサマもうかつに動くなよ」

「ですが危険です! 魔王様のご自宅に上がり込もうとしているようですが、さすがに自室内まではついて行けません。ヤツめ……よもや私の尾行に気づき、撒こうとしているのではあるまいな……」


 考えすぎだ。


「ハッ! そういえば……」

「ん? どうした牛島」

「魔王様……似ていると思いませんか?」

「……何がだ?」

「あの女……勇者の仲間の一人の、アレです。龍拳士のシャオメイとかいったか……」

「……外見がか?」

「はい。どことなく」


 魔王、勇者、グガランナ。俺たちは昔の外見に似ているのだろうか。彼女を外見で疑うということはそういうことなのか? そのあたりの情報が全く出ていないからわからない。しいていうならば、俺は俺が絵に描いた魔王とは似ていないと思うが……


 そういえば、絵に描いた魔王を見て神宮時さんは驚いてたな……まさか昔の魔王はガチであの見た目だったのか? そして神宮時さんも実は前世持ちで魔王と面識があったのか? まぁ、なんか違う名前を言ってたけど……うーんよくわからん。


「お気を付けください、魔王様。アレがもし龍拳士だとすれば、狭い室内で2人きりになるのは非常に危険です」

「……ではなぜ勇者と行動を共にしていない。あのときも我を襲撃したのは勇者一人だけだった。今もそうだ」

「それは、そうですが……しかし魔王様、私はどうしてもヤツが気に入りません」

「なにがだ」

「後ろを見ないでください。ヤツは今も……飲み物を入れながら、チラチラこちらの様子をうかがっています。油断ならぬ女です……」


 そりゃ、アナタのことを気にしていますからね。

 ウダウダやっていると、飲み物を持った叡智さんが帰ってきた。


「おまたせ~!」

「おかえり」

「ハイ、センセ」

「おう」

「ハイ、ピヨじろ」

「ありがと」


「なになに~2人またなんか話してた~?」

「あぁ……イジメられてないかって気にしてたのにいつの間にか叡智をモノにしてたとか、やるな~お前ってそんな話をな」

「ちょっとやめてよ~そんなんじゃないってば!」

「ウソつけ。佐藤んち行くんだろ? どう見たってそー見えるぞ」

「えーウソー!? ただの友達だってば! んな変かな!?」

「ま、まぁ、俺がそうだとは言わないけど、サシで男の部屋に上がるってことはそーゆーことだと思う人もいるから、よく考えてからにした方がいいかもね」

「マ!? うーんそっかぁ~……じゃ、もちっと勢力増やしてからにすっかな~」

「!!」


 牛島は戦慄が走ったような顔をした。


「あーなんなら、俺がついてってもいーぞ。3人なら問題ないだろ」

「ダメダメ、男だけのトコに女1人でいくのがよくないってことっしょ? あーしが女友達見つけて連れてくから!」

「ぐっ……」


 地獄の宰相が……負けた……


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