005.「優姫、反省す」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
やっちゃったぁぁぁぁ~……!!
悶絶して自室内を転がる。
サイテーだ、あーしって……。
日中は舞い上がって気が回らなかったが、帰ってよく考えてみるとピヨじろのそっけない態度の理由がわかった。
本人のことガンスルーで先生の話ばっかり聞き出そうとして……あきらか踏み台じゃん。そら、腹立つわな!
「優姫~! ごはんよ~!」
ママの叫ぶ声がする。でもそんな気分じゃな~い。枕に突っ伏したまま動かないでいると、やがてトタトタと小さな足音が上がってきて無遠慮に扉が開いた。
「ねーちゃん! ごはん!」
「……」
無視していると、何やら近づいてくる気配を感じ――
ズブッ!!
「――いぎぃッ!!」
「ギャハハハハ! カンチョー! 任務完了! ケツでか星人を討伐しました!」
「ゴラァッ! 聖太ぁぁぁぁぁッ!! 誰のケツがでかいってーーー!?」
「ぎゃああああっ!! 助けてぇぇぇぇえ!!」
「捕まえたぁぁっ!! うりうりうりうりィィィィィッ!!」
「おごごごごごごご!!!」
乙女の菊の花に手を付けた罰だ。デンキアンマ1000連発。
10分くらい続けていると、やがて聖太はピクピクと動かなくなった。
「ふー……ん? で何だっけ?」
何を悩んでいたんだか忘れた。
階段を下りていくと、なんとも肉肉しい香りが鼻に飛び込んでくる。
「ママ! 今日ハンバーグ!?」
「そうよ~もう何してんの! 冷めちゃうからさっさとご飯よそいなさい」
「はーい!」
ママのハンバーグは至高だ。肉汁が封じ込められていて全く溢れていない。それが、箸を入れた瞬間にぶわぁっとチーズやスパイスいろんなものと香りとともにあふれ出してくるのだ。
「はむっ……ふぅ~~~ん! ほいひぃぃ~!」
「はっはっは。まったく、優姫はよく食べるなぁ。ほら、パパのもちょっとやる」
「わぁ~ありがとパパぁ~♡」
「もうあなた! 優姫を甘やかさないで! この子また1kg太ったのよ!」
「うっせーし! 成長分だし!」
パパはあーしが食べる姿を見るのが好きだ。美味しそうに食べれば食べるほど、笑えば笑うほど、甘えれば甘えるほどボーナスをくれる。
「う……うぅぅ……」
やがてヨロヨロと聖太がリビングに降りてきた。
「ひ、ひどいよみんな……せっかくねーちゃんを呼びに行ったボクがまだ戻らないうちに食べ始めるなんて……」
「はんっ! あーははよへーなほほひはっへひんはははっへんほほ!」
「うんうん、聖太お前が悪い」
「こら優姫、食べながらしゃべらないのお行儀悪い!」
――再び、自室。
団らんの時間が終わり、たまったLIZE通知をさばき始める。ふと、その中で見慣れない名前が目に入った。
ん? 誰これ――あっ……そうだ、ピヨじろだ。ヤッベ~どうしよう。
「う~ん…………」
ない頭をひねる。
「あっ、そうだ。そうそうそうそう!」
そういえば質問の途中でトゥモローが連れてっちゃったんだった。あれは結局なんだったのか、ピヨじろはどういう子なのか。その辺を聞いてみよう。
「そうだよね、友達でもないのにいきなり下心アリアリで近づかれたらいい気しないよね。よし決めた! あーしまずはピヨじろと友達になる!」
テテテテテ、とLIZEを打ち始めた。
ピロンッ。
――土曜ヒマ!!?? デートしよ♡♡♡♡