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我、魔王スペルヴィアなり!!  作者: 黒っち
Phase 1.「目覚めし者たち」
12/41

012.「四面楚歌」

「……は? なんで俺が……」


 第一声は、予想通りだった。

 まぁ、そうだよな……魔王に遊びに誘われて、ホイホイついていく勇者がどこにいる。


「罠など仕掛けていないから安心しろ。そうだな、これはゲームだ」

「ゲーム……?」

「うむ。キサマに情報をくれてやろうというのだ。誰が敵で、誰が味方か……存分に類推するがよい。我も我で、キサマの味方は誰なのか……この中にいるのか……それを考えさせてもらう」


 悪い話ではないはずだ。その場には、地獄の宰相グガランナは不在。

 勇者からしてみれば、魔王とその側近と2対1で戦わなければならない校内のこの状況がすでに最悪であり、彼が不在というだけでプレッシャーは激減するのだから。


「……いいだろう」


 ――というわけで、放課後。


 ピンポーン。


「はいはいはいはいはーい!」

「あ、佐藤です。優姫さんのクラスメイトの」

「あーしだヨ声でわかれーw」


 インターホンの向こうで笑う声が聞こえ、まもなく叡智さんが玄関の扉を開けた。


「いらっしゃーい♪ お、トゥモローもきたねー!」

「おじゃまします」

「もう一人は?」

「まりあンヌはもー部屋に上がってるヨ!」


 まりあンヌとは、同じクラスの山田 まりあさんのことだ。彼女はギャル集団の中でもおっとり系のギャルであり、俺に合いそうな子として見繕ってくれたのだろう。叡智さんのススメでけっこうアニメも見るようになっていたはずだ。


 2階に上がり、彼女の部屋の扉を開けると――


 ブワァッと、天界のごとき甘い香りが鼻に飛び込んできた。

 こ、これが……女の子の部屋の匂い……!!


「やっほ~ピヨっち~明日辺くん~」

「ど、どうも山田さん。今日はよろしく」


 山田さんは雑誌を読みながらくつろいでいる。制服の女子2人と密室での会合。なんと背徳的なことか――!!

 俺が感動に打ち震えていると、アンニュイ系JKはクスクスと笑った。


「やだ~ピヨっち鼻の下伸びまくりでキモ~い♡」

「の……伸びてねーし!」


 飲み物を持ってきた叡智さんが、まだ部屋の入口で立っている俺たちをグイグイお盆で押す。


「なーにやってんの2人とも! ささ、座って座って!」

「じ、じゃあ失礼して……」

「よーしそれじゃどうしよっか! 何する? 何する!?」

「うーんそうだね……明日辺くんを知る会……ってのはどう?」

「!?」


 明日辺が目を見開きこちらを見た。


「Fooooいいねーそれ! トゥモロー冷めメンっつか全然自分のこと話さねーし!? 知りたい知りたい!」

「い、いや俺は……」

「ね、まりあンヌも知りたいよね!?」

「おー」


(は……謀ったな、魔王……!!)


 恨みがましい目で睨む明日辺。尋問開始だ。


 先陣を切るのは特攻隊長、叡智さん。


「んじゃあーしからいくヨ! トゥモローさーいつも休み時間何してんの? 話そうと思っても教室光速でいなくなっからずっと気になってさー!」

「べ……別にいいだろ、どこにいても……」

「ん~~~……? 何か居場所を知られると困ることでもあるのかな?」

「……っ」

「ヤバピヨじろドSで草w ナニナニなんでトゥモローにだけンな強気なの?w」

「はは、いやいやまぁ。そんだけ仲がいいってことで……」

「で、どなの!?」

「お……屋上だよ」

「屋上!? 立ち入り禁止っしょ!? てか鍵閉まってね!? どやって行ってんのてかあーしも行きたい!」

「ひ、秘密だ……」

「え~! なえる~萎え萎えのカンナエの戦い~」

「まぁまぁ。居場所がわかっただけでもヨシとしようよ。続きはもっと仲良くなってから……ね?」

「りょ!」


「じゃあ次はわたし~」


 山田さんが手を上げヒラヒラと袖を振る。


「ピヨっちと明日辺くんはどういう関係なの~? ずいぶん仲良さげだけど~」

「はぁ? 仲がいい? 俺と佐藤が? 冗談はよしてくれ」

「ウケるww これアレかツンデレってやつ?ww」

「男のツンデレはキモいぞ明日辺」


 ニヤニヤと見る。


「まぁアレだ、初日にお前も雷魔法が得意とか言ってたもんな。アレで俺たち同類だって意気投合したんだよな」

「同類だと……? ふざけるな! 我が聖気は女神アドナから賜りし神の力。キサマのような薄汚れた瘴気と一緒にするんじゃない!」

「wwwwww」

「ヤバトゥモローそっち系かーww」

「え~ショック~イケメンだと思ってたのに~」

「コラコラまりあンヌ! 趣味は人それぞれ! いーでしょ別にトゥモローがそーゆーカンジでも!」


 思わずぶっちゃけた明日辺に場はおおウケだ。

 しかし……新たなフレーズが飛び出したな。そうか、勇者は過去の世界でも同じ女神に力を授けられたのか。

 そしてその力の名は「聖気」……魔王の力は「瘴気」というらしい。


「じゃあ次は俺の番だけど……明日辺が叡智さんや山田さんとどんな関係か知りたいな」


 探りに来たか、と、一層険しい顔になる明日辺。


「べ、別に……たまに話しかけられたりするだけだ……叡智がさっき言ってたとおり、俺はすぐ教室を出ているからな。特に交流はしていない。山田とも同様だ」

「ふ~ん……? ホントかなぁ~……?」

「ホントホント~。むしろこの機に仲良くなりたいで~す」


 袖を振る山田さん。まぁ、黙ってればイケメンだからな。ギャル的にはほっとかないだろう。


「じゃみんなでLIZE交換すっか! あーしはもうピヨじろと交換済だけど!」

「いいね」

「りょ~」

「……」


 ポチポチとLIZE交換が終わると、今度は俺の番だと明日辺が鼻息を荒くした。


「こちらばかりでは不公平だ。俺にも質問させてもらうぞ」

「そだね! こいこい、バッチこ~い!」

「叡智……キサマは、佐藤の何なのだ……?」

「え!? 何って!?」

「しらばっくれるな……あのクラスに妙な布教をしたのは、お前だろう……!!」

「あーそれ? 確かに布教はしましたけどww」

「み……認めたな!!」


 戦慄の走った顔で、慌てて周囲を見渡す勇者。

 当然、室内には何も異常はない。


「あーゴメンないよそーゆうのはww 基本ネットで見てっしww」

「ネット? で……見ている!?」


 バッと天井を見上げる。


「上にもねーよww」

「wwwwww」


 ひとしきり笑って――ふと、叡智さんが思い出したように言った。


「あーおもろー……あ、そだ。こないだの話さー、まりあンヌと2人でピヨじろんち行ってい?」

「う、マジ?」

「マジマジ。ね!」

「うぇ~い」

「ちょっと待て……こないだの話とはなんだ……?」

「あ、トゥモローも来る系? どーゆーゲームとかあるか見せてもらいにいくの! おもろそーなのがあったら借りよっかな~ん♪」

「ゲ、ゲーム……いや……俺はいい……」


 どうやらまたこういった囲われて弄られる状況を想像したようだ。疲れた顔で、明日辺は固辞した。


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