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戦士たち  作者: Maxspeed
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第十四話「決戦」

ここでエルメスはあえて地球圏での戦い方を採用した。艦同士は航路にそって動き、機動兵器は別の場所で戦うこれまでの戦闘と違い、艦と機動兵器の一体運用である。これまでは機動兵器の戦場と艦自体は100キロ以上離れて防衛線を張っていたが、今回各機動兵器はグランドルーク周辺10キロ以内に展開し、そのままゴルゴスに向かっていったのである。ゴルゴス側も相対速度を合わせながら同じように展開し、地球圏での戦い方で臨むつもりであった。しかしエルメスはここでも新しい機動兵器の運用方法を採用し、セリアムを出し抜こうとしていた。総力戦での正面決戦で雌雄を決するように見せかけ、別働隊を編成していたのである。その隊はなんと離脱中のセレナクイーンに搭乗しており、横からゴルゴスを強襲する手はずであった。アバロンのサントスII部隊に用途がよく分からなかった外骨格アーマーを装備し、大型のソリッド弾頭のロングレンジライフルを装備した特殊狙撃部隊である。ソリッド弾頭、つまり固体質量弾をレールガンの原理で射出し狙撃する。耐ビーム用装甲は固体弾に弱い性質がある。一定の効果が見込めるはずであった。ゴルゴスの予想進路にあらかじめ展開してステルス機能でセンサーや光学観測からも隠れて待機する。もし存在が見破られれば殲滅される可能性もある危険な作戦であった。しかしアバロンには自信があった。各サントスにはセンサーリダクション用マントを羽織らせ、光学迷彩フィールドで宇宙に溶け込み、重力制御で質量センサーをも誤魔化せば実質探知できる方法はないはずであった。後はゴルゴスが来るまで、サントスのパイロット達がひたすら我慢するだけである。通常、PSの狭いコクピットに入っていられる時間は常人であれば二時間が限度である。パイロットたちは訓練で6時間は優に耐えられた。さらにPS内のエアにラフガスに似た特殊な薬品を投入することで楽天的な気分になり、10時間は耐えられるのである。アバロンは15人のメンバーの機体をワイヤーで繋ぎ、有線で会話しながら待った。時にはPSのハッチを開放して宇宙空間を直接眺めることで気分を紛らわせたのである。その甲斐あって、終にゴルゴスが近傍宙域に来ることがキャッチされたのである。その距離3キロ。奇跡といえるほど近い距離であった。ただし相対速度はかなり開きがあり、ゴルゴスが通過するのは一瞬である。狙撃のチャンスは一回であった。幸いゴルゴスは戦域に向かって等加速度運動状態であったため、AIによる予測射撃が可能であった。アバロンはセンサーリダクションマントをパージして全機体にてAIリンクの一斉射撃を命じた。タイミングをAIで計り、リンクして射撃するのである。その時は来た。レールガンは電磁加速のため本来発射時に何も反動は発生しない。しかし通常の銃のように火薬による射出で初期加速を与えることで、その後の電磁力による加速がより効率的に実行されるのである。そのためそれなりの反動はあった。絶大な慣性エネルギーを持った弾頭は、ゴルゴスの応力フィールドの干渉をものともせず右側面にヒットした。応力フィールドの強度配分が進行方向に集中していたことも幸いした。直撃弾頭は12発。艦首から艦尾まで広範囲にわたって着弾し、外部装甲に大きなダメージを与えている。弾頭には装甲に食い込むと高熱を発して爆発する焼夷炸裂弾も含まれていた。セリアムはPSの発進に備えて既に搭乗し、射出を待っていたが、アバロンが射撃命令を下す一瞬前の殺気を感じ取り、ブリッジに回避を命じていた。しかし間に合わず、直撃を食らったのである。修理が終わったばかりの主砲のエネルギー伝達ラインが損傷し、主砲が撃てなくなった上に、PS 発進口が開かなくなってしまった。セリアムは一瞬の判断で、PS発進口は緊急時の爆発ボルトで爆破して開き、PSの展開を急がせた。更に主砲については予備ラインへの切替を急がせたのである。アバロンたちは装備しているブースターでゴルゴスの後を追い、後ろから更に攻撃を加えようとしていた。しかし慣性航行に移ったゴルゴスは180度回頭し、アバロン隊に復旧したばかりの主砲で攻撃してきたのである。一瞬で三機失ったアバロンは部隊に散開を命じ同時にグランドルークに照明弾で攻撃のチャンスを伝えた。彼方の照明弾の観測に成功した光学観測班はゴルゴスが回頭している事をエルメスに報告、エルメスはまだ射程外であるが砲手のシジムに攻撃を命じた。光学観測結果と長年の勘を頼りに、シジムは主砲ビームの収束率を絞って発射した。ビームの拡散が少なく射程を延ばしても破壊力を維持するためである。その代わりビームの影響範囲は狭くなり、より精密な射撃が必要となる。ビームはゴルゴスの後部に複数あるエンジンノズルの一つに直撃し、大きなダメージを与えた。セリアムは舌打ちしたかった。艦長のカナハが愛する自艦の装甲をズタズタにした敵部隊の攻撃に頭に来て、わざわざ敵の面前で回頭してまで主砲で攻撃したのである。敵艦の主砲射程外であることを想定しての攻撃だろうが、大雑把な機動であることは否めない。慌ててグランドルークに向き直ろうとしてもエンジンノズルからメインエンジンへ火災が広がりそれどころではなかった。セリアムはカナハに火災が発生している第二メインエンジンの切り離しを命じた。鎮火を優先していては後手後手に回る。第二メインエンジンの切り離しにより最低限の機動力を取り戻したゴルゴスは再度回頭してグランドルークに向き直った。双方の相対距離は縮まり、もはや完全に主砲の射程にはいった段階でグランドルークはとどめとばかりに主砲を斉射しようとしたが、その時エリカから上下から接近する機体を確認と警告が上がった。それはセリアムがPSとブースターを組み合わせて急造で開発した戦闘機部隊であった。グランドルークがこの旅の初戦で見せた戦術をそのまま採用したのである。ゴルゴスの急造戦闘機部隊は、十分に加速した状態で襲い掛かり、大型ミサイルを発射した。対空砲火がそれを迎え撃ったが、上下から見ると面積が広いグランドルークの艦体構造があだとなり、第二戦橋と本体中央左部に着弾した。第二戦橋は大きなダメージを受け、左の主砲は発射不可能になった。また中央左部に着弾したミサイルは乗員の生活区を直撃しており、傷病のため出撃していなかった数名のパイロットが犠牲になっている。その中にはマエジマ隊のモントも含まれていた。シノとスズキ、つまり中森和沙は艦体中央を挟んで反対側の区画で傷病兵の治療にあたっていたため無事であったが、医療スタッフにも犠牲者が出た。双方とも大きなダメージを受けた。ゴルゴスは三機あるメインエンジンの内、一つを失い、航行能力と主砲の威力に大きなダメージを負った。グランドルークも第二戦橋と共に左の主砲を失い、乗員にも損失が出た。ゴルゴスにならった訳ではないが、エルメスは第二戦橋の切り離しと後方への退避を命じた。戦橋は元々切り離して独自に行動できる構造であり、切り離すことで戦橋側と本体の動力ラインが切断され、被害の拡大を防ぐ意味もあった。お互いの奇襲攻撃にてそれぞれダメージを負った両勢力であったが、これからが本番であった。アバロン部隊はゴルゴスの主砲の一撃による散開で戦場に間に合いそうにない。ゴルゴス側の急造戦闘機も大きく回りこんでの攻撃のため戦場に戻るのに時間がかかる。これからが正面きっての対戦となるのである。

激しい艦砲射撃の合間を縫うようにして、両軍のPS部隊が激突する。最初、ヒュウはセリアムが戦場のどこにいるのか確認できなかった。エリカやマエジマが部隊全体の動きを分析してその中心を探していたのであるが、特定が難しかった。それもそのはず、この戦いでセリアムは指揮をとっておらず、遊撃隊の立場にいたのである。指揮をとっているのはアリスであった。両軍ともに三個中隊相当、合わせて百機以上のPSが入り乱れる戦場で、ヒュウは自機をおとりにして小隊の他の機体へ隙を見せるように動くことで次々と敵を撃破していた。小隊全体で網をはるマエジマのやり方とは違う、ヒュウ独自の指揮であった。

戦いは長引きマエジマの中隊はメディック隊との交代で一旦引き、補給を受けることになった。一本だけになってしまった第一戦橋にて補給を受けている間に、ヒュウは鋭い殺気をとらえた。それはグランドルークそのものを狙うセリアムのものであった。マエジマに具申し、補給もそこそこに単機で出撃し殺気の方向に向かうと、直衛のPSとの戦闘の光が見えた。アリスの絶妙な指揮により戦場を通り抜けたセリアムがまさにグランドルークに襲い掛かるのを直衛部隊が防衛していたのであるが、一気に抜かれてしまった瞬間であった。通常PS単機の火力では戦艦を落とすのは難しい。しかしすでにどてっぱらに大型ミサイルの攻撃により穴をあけられ、応力フィールドによる防御網にもウィークポイントが発生している状態では、装甲内部に攻撃を受け、重大な結果になる可能性があった。直衛を抜いたセリアムに対しヒュウが襲い掛かった。距離をおいて狙撃するようなことはしない。お互い相手の狙撃を殺気で感知できるレベルなのである。セリアムも今回はヒュウを最初から意識していた。動きでものが違うことがわかるのである。二機は正面から激しくぶつかり合った。狭い空間で体を入れ替えながらビームを打ち合い、かわされる。後を追ってきた直衛のPS部隊が介入できないほどの濃密な戦闘空間であった。セリアム機が腰にマウントしてあったビール瓶のようなものをヒュウの機体の予測進路に投げつける。それはレグナスの右のバインダ表面に電磁力で張り付き、次の瞬間激しい炎を吐き出した。モンロー効果で火薬の爆発に指向性を持たせ、数万度の炎を吐き出すハンドマインであった。レグナスの右バインダは貫通されたが、一瞬の判断でバインダは切り離されていた。バインダ内部にマウントされていたミサイルが誘爆し、レグナスの機体を揺さぶる。その隙にセリアムは接近し再度ハンドマインを投げつけてきた。「なめるな!」ヒュウは叫び、マインを大きく避けた。電磁力により貼りつくため、安全マージンをとったのである。しかしその動きをセリアムに読まれていた。ヒュウは目を瞠った。セリアム機は絶妙な角度で電磁力の効果がない方の角を蹴って、ハンドマインをヒュウの方に誘導したのである。しかしヒュウもそれを見て一瞬の判断で電磁力が働いていない方の端をつかみ、セリアム機に投げつけたのである。それと同時にハンドマインのあとを追うように、セリアム機に突進する。セリアム機はハンドマインを腕ではじいたが、そのためレグナスの特攻への対応が遅れた。左のバインダからセリアム機に激しく体当たりするレグナス。バインダの衝撃吸収構造による緩衝を計算に入れての特攻であった。激しく揺さぶられながらも姿勢を保ったレグナスは、セリアム機の胸部装甲と頭部の間にあるわずかな装甲の段差に指を引っ掛けた。否、それは指ではなくレグナスの手の甲部分に装備された鉤爪のような装備であった。次の瞬間レグナスは左足をセリアム機にあてて蹴りを繰り出し、一気にバロンフォースの胸部装甲をはぎとろうとしたのである。これまでのPS戦で見たこともない荒々しい攻撃に一瞬対応が遅れたセリアムであったが、バロンフォースの身をよじり蹴りを受け流すと同時に、鉤爪を外そうとこころみた。結果、鉤爪はバロンフォースの胸部装甲に三本の傷をつけるだけで外れてしまったが、ヒュウは左手でバロンフォースの右腕をロックして、そのままバロンフォースの頭部を殴りつけたのである。鉤爪は本来、レグナスの装備を引っ掛けるためのものであったが、そのまま打突の道具とされたのである。バロンフォースの左腕で頭部をかばいながら激しい衝撃を感じていたセリアムはヒュウというPSパイロットの獣にもにた激しい攻撃に翻弄されている自分を自覚した。明らかにこれまでの敵とは違う。セリアムを脅威とみなしリスクを負ってでも倒すという強固な意志が感じられた。

二機が止まったのを見てとり、直衛のPSがセリアム機にとりつこうとしたが、セリアムはスラスターを吹かし、二機を激しく回転させ手が出せない状態にした。そこにセリアムに追いついてきた敵PSとの交戦のため、直衛PSは二機を放置するしかなかった。激しく回転するなか、ついにセリアム機の頭部を破壊したレグナスは破損した頭部の根元からパイロットそのものを狙おうとした。もちろんそこには強固な装甲が施されており容易には抜けない。しかし回転しながらもヒュウはあるものへ二機を誘導していた。それは先ほどセリアムが弾き飛ばした例のハンドマインである。それをレグナスにつかませて、ヒュウはバロンフォースの頭部をはがして出てきた装甲に張り付けようとしたが、貼りつかなかった。すでにハンドマインは最初に投げつけられてからの稼働時間がタイムアウトしており、動作がキャンセルされていたのだ。セリアムは電磁力も無効化されていたハンドマインをバロンフォースにつかませて、再起動しレグナスに直接貼り付けた。避けようもなくハンドマインはレグナスの胸部装甲で起爆した。それは僥倖としか言いようがない。モンロー効果で激しく噴出した数万度を超える爆炎は、PSで最も厚い胸部装甲を溶かし、パイロットシェルの内部装甲を溶かし、ヒュウのインターフェーススーツの左の脇腹をかすめて止まった。激しい痛みと戦いながら、ヒュウは今度こそバロンフォースに前蹴りをヒットさせて距離をとった。そのまま一気に戦場を離脱したのである。セリアムも一瞬あっけにとられるぐらい鮮やかな脱出であった。まさにエルメスがいうところの「とんずら」であった。

インターフェーススーツの穴は一瞬でスーツ素材の持つ伸縮機能でふさがったが、火傷による痛みがひどい。スーツ内には肉が焼けるにおいが充満している。AIがモルヒネの投与を進言してきたが、帰艦までは待つように指示した。どの程度のダメージを負ったのか自分ではわからない。AIもスーツのセンサーが一部焼き切れているため状況把握ができないと言ってきたのである。ちょうど急いで補給を終えて出撃してきたマエジマの部隊に状況をデータリンクで伝え、帰艦するしかなかった。セリアム機も頭部とレグナスにロックされていた右腕を破損しており帰還を余儀なくされた。

艦対艦の砲撃戦は一進一退であった。今回は相対距離を維持して上下左右に動きながらお互いに攻撃しあっている。砲手と操舵手、それを制御する艦長の腕の見せ所であった。ゴルゴスの艦長カナハは先ほどの失態に見られるように直情傾向があった。元隕石破砕業者からラインバードに転職し、キャリアを積みながら旗艦ゴルゴスの艦体刷新の際に前任の艦長引退に伴い抜擢された。最近生まれも育ちもラインバードというメンバーが多い中、数少ない転職組であった。女性ながら荒くれの男どもを統括して危険な仕事に長年従事してきたベテランであるが、軍事行動に関するキャリアはまだ浅かった。これまでもゴルゴスの性能に頼った運用が多く、勢いで指揮するタイプであった。それに対しエルメスは既に数十年の軍歴をかさね老獪であった。フェイントのフェイントのフェイントを重ね、ゴルゴスの行動の選択肢を狭め、ここぞというポイントに導くことに成功した。シジムとハリアーのコンビネーションで絶妙なタイミングで主砲の一撃をゴルゴスに放ったのである。しかしカナハも長年の宇宙暮らしで培った勘で、一瞬先に罠の存在を悟り、ゴルゴスを緊急回避させた。結果グランドルークの主砲ビームはゴルゴスの応力フィールドに対し斜めに入射して弾かれた、ように見えたが、これまでの戦闘と違い距離が近いため、ビームはゴルゴスのすでに穴だらけになっている右側面をかすめわずかに張り出している右エンジンの装甲を直撃した。右弦装甲はすでにアバロン隊の狙撃で耐ビーム装甲が穴だらけである。その穴からの装甲の融解と、二つ目のエンジン直撃にゴルゴスは主砲ビームの出力を維持できなくなったのである。PS戦で互角の戦いを展開していたが、艦砲戦で大きなアドバンテージを敵に奪われてしまった。カナハは直情型ではあるが引き時は誤らなかった。全機動兵器部隊に帰還命令を出し、グランドルークから距離を取り出したのである。エルメスは逃すつもりはなかった。ようやく護衛任務から解き放たれて自由な戦場で戦っているのである。ここで決着をつけるつもりであった。ここで敵に突撃することはたやすい。だが、せっかく敵艦の主砲ビームの威力が減退しているのに近づけばそのアドバンテージを失うことになる。冷静にゴルゴスが退いた距離だけ前進して、とどめをさす作戦であった。

そのころゴルゴスに捕虜として捕らわれているオルフィスは音と振動、艦の機動により重力制御で打ち消せないほどのGを感じながら、戦況はゴルゴスに不利になっていると推測していた。このままゴルゴスが沈められれば自分も死ぬかもしれないという恐怖はあったが、それを受け入れる覚悟もあった。ただおそらくラインバードであれば危機を回避してくれるだろうとも考えていた。

離脱するセリアムを追ってマエジマの隊は戦場の中ほどまで進んでいた。その目の前にセリアム機と同じカラーリングのバロンフォースが介入してきたのである。アリスであった。アリスは自分の直属部隊を展開して殿として防衛線を展開していた。その隙のない布陣にマエジマは深追いすると損失が多くなると判断し、目標を変えた。要は母艦であるゴルゴスを落とせばいいのである。思い切って艦砲射撃の宙域に侵入し、ゴルゴスの直衛すら展開していない進路で迫った。双方の艦が主砲に損害を受けており、火線の密度が低下していることを計算に入れての行為であった。マエジマを絶対的に信じてついてくる部下たちがいてこその行動である。アリスは慌てた。オルフィスに続いてゴルゴスの防衛網に食い込まれたのである。殿部隊の一部を割いて自ら指揮してマエジマの部隊に対して攻撃を加えた。マエジマは敵艦のPS発進口が開いたままであることを確認した。アリスの攻撃を冷静に捌きつつ、部隊の全機にデータリンクで目標を伝達し、手持ちのミサイルを一斉発射したのである。対空機銃座により半分以上が落されたが、何発かは空きっぱなしのPS発進口に吸いこまれた。マエジマはミサイルの効果を確認せず、部隊に撤退を命じた。PSでできることはここまでである。損害を増やす必要はなかった。この攻撃でゴルゴスの二つあるPS格納庫の一つが破壊され大損害を受けたのである。二つのエンジンの損失以上の痛打であった。退こうとしたマエジマ機にアリス機が接触した。マエジマは指揮が一級品であるが、個人戦闘能力も高い。アリス機と互角の戦闘を繰り広げた。アリスは頭に血が上っていた。自分のミスでまたしてもゴルゴスに被害が出たと考えていたからである。マエジマはうすうす気づいていた。眼の前のバロンフォースがアリスであると。しかし今は敵味方である。ヒュウとは違いアリスを神聖視していないマエジマは必要があればアリスを落とすことも辞さなかった。しかし双方の部隊の部下たちはよく訓練されていた。隊長機同士の戦いに割って入り、引き離したのである。一瞬の接触の際にマエジマはアリスに問いかけていた。「アリス、ヒュウは待っているぞ!」と。アリスはこれを聞いておらず、頭を振って冷静さを取り戻そうとしていた。

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