第十二話「対決」
コースを再策定し二次加速を継続した結果、グランドルークとセレナクイーンは火星軌道に差し掛かっていた。既に地球は一際大きく輝く星のひとつとなっている。二次加速が終わり、三日後には減速シーケンスに入る段階で、ゴルゴスが急接近していることが光学観測されたのである。半日後には主砲の射程内に捉えられることが想定され、グランドルークでは第一級戦闘態勢がとられた。ヒュウは今回後衛であり、前衛はアバロンとエル、ジッターの小隊であった。今回グランドルークの軌道は当初の予定通りゆるく弧を描いているところへ、ゴルゴスはほぼ直線で突っ込んできていた。この場合、先発した機動兵器の回収を追いついたゴルゴス本体で実施できるメリットがある。そして初戦の心理的重圧を乗り越えたラインバードの猛禽たちは汚名返上とばかりに意気盛んであった。更についにセリアム自身がPS戦に参加する。ゴルゴスの指揮は艦長のカナハが取り、アリスは直衛であった。二次加速を終えて慣性航行中のグランドルークはゴルゴスに向き直り、主砲による砲撃を開始した。セレナクイーンはいつもどおりグランドルークの後方で待機である。今回は余計なことはしないようにランサーに言い含めていた。前回同様、先行して戦闘機隊が発進し、続いてブースターを装着したPS隊が発進した。そして今回の戦闘においてグランドルークの機動兵器部隊は痛打を受けるのである。PS隊同士の戦闘では本来の動きを取り戻したラインバードと、頭であるセリアムの参戦で一方的な展開となった。セリアムは相対速度をあわせて敵部隊と交戦状態になった瞬間、既に三機のPSを射程に捕らえ、一瞬で屠った。まるで敵PSの死角を分かっているかのように接近し、ビームを一射、離れると次のターゲットに向かう。その背後で敵PSが爆発していた(MBジェネレータはマイクロブラックホール蒸発の際に衝撃波や電磁波をまきちらすが、爆発はしない。主に推進剤や武装のミサイルの爆発となる)。八艘飛びのような要領で、次々と敵PSを撃破していくその活躍ぶりに、ラインバード達は奮い立ちグランドルークのPS隊に襲いかかっていく。ラインバードの猛攻にジッター隊は短時間に半数を失い、ジッター機も右腕右足を失って後退した。アバロン隊、エル隊はなんとか持ちこたえていたが、チームワークで対抗しようとすると、そのほころびを突くようにセリアム機が攻撃をしてくる。隊列が乱れたところに他のラインバードPSが攻撃を仕掛けて一対一の戦いに持ち込む。そうなるとグランドルーク隊の方が不利であった。アバロンは不利を悟り後衛の早期投入を原隊に具申した。エルメスはゴルゴスとの艦砲戦を指揮しながら、エリカが神業のような高速処理で編集したデータと光学観測の結果から、機動兵器同士の戦いを追っていた。その結果、アバロンの具申の3分前には後衛の発進を指示していたのである。マエジマとメディックの小隊はブースター全開で戦場に急いだ。その頃グランドルークの戦闘機隊はゴルゴスに攻撃を加えようとしていた。大型ミサイルの信管には応力フィールドの影響を考慮した調整を加えていた。今度こそゴルゴス本体に直撃させてみせる、とオルフィスは意気込んでいたが、思わぬ罠が待ち構えていた。オルフィス機の左にいた機体がいきなり爆発したのである。他にも爆発している機体がいくつかあった。機雷原であった。ゴルゴスは本体の航路と加速、敵侵入経路を想定し、空間機雷を撒いていたのである。機雷は敵機のスラスタの光や重力波を計測して自動的に位置を調整するタイプで一度撒いておけば微調整の必要はない。オルフィスは一瞬、全機にコース反転を命じるか迷った。しかし十分な加速に乗った状態でのコース変更には大きなGがかかる。機雷原がどの程度の範囲なのかわからない以上、ここは運を天にまかせ本来のコースで突っ込むほうが得策と判断した。さらに加速することで、機雷との相対速度を大きくし、応力フィールドで弾こうと考えたのである。機雷一個一個の威力はそれほど大きくない。直撃されない限り致命傷にはならないと判断したのである。オルフィスは天頂側から攻撃を仕掛けていたが、もう一隊は天底方向から攻撃を仕掛けていた。こちらにも当然機雷が待ち構えていた。運悪く最初に被弾したのが指揮官機であったため、自動的に指揮を引き継いだ次席指揮官はパニックとなり、全機に反転を命じたのである。しかし加速に乗った状態での反転は大きなループを描くことになり、ゴルゴスの対空砲火に対して機体の腹を晒すような結果となった。攻撃命令も出していなかったため、自機の腹にマウントした大型ミサイルを機銃で撃たれて爆発するものもいた。独自の判断で反転前にミサイル攻撃した機体もあったが、距離があったため対空砲火に落とされてしまった。オルフィス隊は機雷源で5機失いながらもゴルゴスに対してミサイル攻撃を加えたが数が少なく、また攻撃が予想されていたため対空砲火で防御されてしまった。ゴルゴスとすれ違いざまにビーム攻撃も加えたが、相対速度が大きく戦艦の強力な応力フィールドを突き破ることはできなかった。戦闘機隊も大きな損害を受けたのである。
一方PS戦である。マエジマはアバロンやエルからのデータ通信を受けて、この一方的な状況を作り出している大きな要因が一機のPSの動きにあると判断した。そのPSの動きを止めるためにヒュウの小隊に対してこの難敵、つまりセリアム機への対応をまかせたのである。ヒュウは今度こそセリアムと戦うことになるかと軽い戦慄と興奮を味わっていた。自分の小隊についてはセリアム機を包囲し、別の機体が邪魔に入らないように排除するように命令した。ただし、ヒュウの動きについてこれない場合はマエジマの指揮で動くように、と添えて。そしてマエジマがマーキングした機体に向かって最大出力で加速し戦場に突入した。セリアム機に対して加速状態でブースターにマウントされているミサイルを全弾発射したが、ことごとくかわされるか狙撃された。ヒュウは確信した。こいつは奴だ、あのアームストロングで俺を戦慄させた奴だ、と。敵の眼前で急減速した際にはさすがのヒュウも内臓が口から飛び出すかと思ったがそれに耐え、切り離したブースターを敵、すなわちセリアムにぶつけた。セリアムはブースターをあざやかなインメルマンターンで回避した。その動きはアリスと同じであった。しかしヒュウの頭からはアリスかもしれないという考えは吹き飛んでいた。目の前の敵は間違いなくあの時のバロンフォースである。その事を認識した瞬間、ヒュウの頭は逆に冷静になり、周りの戦場の動きが気配で感じられるようになった。敵PS同士の連携が線でつながっているように見え、味方PSの動きも個別に感じられたのである。ヒュウの小隊は隊長を守る位置につこうとしていることがわかった。いわゆるアスリートがいうところのゾーンにはいった、という状況であった。セリアム機にビーム攻撃を加えながら他のPSとの連携を断ち切るように動き孤立させていった。その上でレグナスに装備されている数少ない小型ミサイルを囮に使い、セリアム機の動きの選択肢を減らしていき、そこで突入した。セリアム機のビーム攻撃を応力フィールドとレグナスの両肩にマウントされているバインダ表面の耐ビーム素材の装甲でいなし、接近戦にもちこんだのである。ヒュウはビームライフルを右腕からパージして、バインダの内側にマウントしている斧のような武器をレグナスの手に握らせた。斧の刃の部分にはチェーンソーのような小型の刃が二重の列をなしてマウントされており、これが交互に高周波振動することで敵PSの装甲を切り裂くのである。この斧をヒュウはセリアムのPSの胸部に叩き込んだ。セリアムは戦慄した。ここ数年、ラインバードの次期団長の立場から、PS戦に出ることは減ってしまった。そのため彼を上回るパフォーマンスを示す敵に会ったのは久しぶりである。駆け出しのPSパイロットだったころを除いて、セリアムの操縦センスとスピード、思い切りの良さに対抗した連合軍のパイロットはこれまで二名しかおらず、いずれも邂逅した戦いで屠ってきた。そして久しぶりにセリアムは自機に直撃を受けたのである。敵機が振るう斧はバロンフォースの胸部装甲に食い込み離れない。そのまま激しい火花を上げながら切り裂き始めたのである。この時、直接接触していることからセリアムの耳には大きな音が響き渡る。これもまた心理的に敵を萎えさせる効果がある武器であった。試験的にグランドルークにつまれていたものをヒュウが効果を試した上で初めて実戦投入したのである。しかしセリアムも歴戦である。敵が振るう斧の音にもひるまず、敵機とのわずかな隙間に自機の足を割り込ませ、鮮やかに前蹴りをきめてみせた。オートの動きではない、まるで昔のPSのように自分の足を繰り出しているような動きであった。ヒュウは斧による攻撃を放棄し、セリアム機に食い込んだままの斧から離れ際にもち手にあるピンを引き抜いた。セリアムが胸に食い込んだままの斧を左手で弾き飛ばした瞬間、斧は爆発したのである。それも通常の爆発ではなく激しい閃光を伴うものであった。この光によりセリアム機の光学観測系はコンマ数秒ブラックアウトした。その隙をヒュウが見逃すはずがなかった。自機の光学系にはマイナスのフィルターをかけて光を防いでいたヒュウは、レグナスの両肩のバインダに装備されている小型ビーム兵器でセリアム機を近距離から打ち抜こうとした。しかしその瞬間ラインバードの別の機体に体当たりを受けて弾き飛ばされたのである。セリアム機に意識を集中するあまり、周囲が見えていなかったことは事実であるが、この機体はまるでヒュウの意識の隙間を狙ったように飛び込んできた。周囲に展開しているヒュウの小隊にも察知されず、AIの接近警報も間に合わなかったことから、相当の速度で突っ込んできたことになる。それもそのはず、この機体はラインバードの第二次攻撃部隊であり、ブースターで加速してきた直後であった。セリアム機の危機を確認し、減速もそこそこに突入してきたのである。文字通りヒュウのレグナスと突入してきたラインバードのPSは吹っ飛んだ。その時ヒュウの脳は、特殊な高分子化合物が耐G性能を発揮する組織に変化し脳の神経系へのダメージを守っていた。そのおかげでおそらく10G以上の衝撃を受けたにもかかわらずヒュウは意識を保ち、かつ突入してきたPSにバインダのビーム兵器から攻撃を加えたのである。敵PSは右手を破壊されてどこかに吹っ飛んでいった。ヒュウは姿勢を制御し、再びセリアム機に向き直ったが、セリアム機は目の前に迫っていた。ビームライフルの一撃はかろうじて左のバインダで防いだが、バインダの一部は融解し、同じく溶けた左腕と冷えて結合してしまった。これでは動作に制限がでるため、ヒュウは一瞬の判断でバインダごと左腕を爆発ボルトにて切り離し、その腕を盾に今度はヒュウがインメルマンターンを決めてセリアム機の側面に回りこもうとした。PS全体のバランスはAIが補正してくれるが、それでもその挙動には影響が出ており滑らかなターンとは言いがたい動作であった。そのためセリアム機はレグナスに向き直り、再度ビームを発射しようとしたが、ヒュウはレグナスの足でライフルを蹴り飛ばした。その勢いのまま右のバインダのビーム兵器で攻撃しようとしたが、今度はセリアム機がバインダの内側に左手を差し込んで向きをそらされてしまった。二機は再び近接戦闘状態で次々と攻撃の手を繰り出すが、ことごとく相手にかわされてしまう状態が続いた。レグナスのバインダのビームがひらめき、セリアム機の左足に命中し、推進剤の爆発で両機が弾き飛ばされたことで距離が開き向かい合った。周囲ではラインバードとグランドルーク隊が、今度はマエジマが戦列に加わったことと、セリアムがヒュウにかかりきりになったことで、グランドルーク隊の指揮系統が復活し、個々の戦いではラインバードが上回るも、集団戦ではグランドルーク隊が圧倒し始めていた。その状況を見て取ったセリアムはヒュウにかかりきりになる愚をさけ、部隊の指揮に専念するために一旦下がることを決意した。この敵PSの技量はかつてないほどであり、おそらく全身全霊で挑まねば倒せない。そしてセリアムは指揮官であり、彼の代わりはいないのである。ヒュウは冷静の中にもかつてない充実感を味わっていた。かつてアームストロングで感じた戦慄は、同量の歓喜に代わり始めていた。自身の成長がこのような形で証明されるとは。ヒュウにとってセリアムは難敵であり、獲物であり、かけがえのないライバルであった。しかし互いの立場の違いからセリアムは引かざるを得なかった。その時先ほど二人の間に介入してきたラインバードのPSが再びヒュウに襲い掛かった。どうやら弾きとばされてから賢明にもブースターを切り離さず、そのまま弧を描いて戦場に戻ってきたらしい。セリアムはその機体がアリスの部隊のフリードリヒ・リヒターであることに気がついた。二次攻撃の際にアリスの判断で出撃数を厚くしたのであろう。フリードリヒにはヒュウに対して盾になる覚悟が見えた。セリアムはその場をまかせ後方に下がり、部隊全体の指揮に専念することができたのである。ヒュウの小隊はセリアムの後退を阻止できなかった。ヒュウはまたしても割り込んできたこの機体を「うざい」と思ったが、どういうわけか排除することができなかった。それほどプレッシャーは感じないし、操縦にも隙が見える。どうみてもセリアムほどのセンスはないように見えたが、何故かヒュウとは相性が悪かった。こちらの攻撃をまるで先読みしているかのごとくかわすのだが、向こうの攻撃も(右腕がないこともあり)それほど鋭くないためかわすことはできる。しかし抜くことができない程度の鋭さなのである。ヒュウの足止めとしてはこの上ない相手であった。ヒュウはセリアムとの交戦をあきらめ、左腕を失ったため小隊指揮に専念してマエジマの指示を受けることにした。マエジマをこれを了承し、ヒュウの小隊は一旦交戦宙域から下がったのである。もちろん、どこに敵がいるかわからないし、流れ弾も考えられるので、緊張感を解くわけにはいかない。回収艇が来るまで後方支援に徹するのである。その時グランドルークからの撤退命令が届いた。グランドルークとセレナクイーンは機動部隊を回収後、即座に第三次加速に入るということだった。通常であればここからは減速に入るスケジュールであるが、ゴルゴスの追撃をかわすために短期間の加速を実施し、その後減速を微調整する予定であった。これができたのはオルフィスのおかげであった。オルフィスは天頂方向から天底方向に抜けたあと、味方の救出のためにふたたびゴルゴス近傍に戻ったのであるが、そこで一気に対空砲火と直衛のPSを抜いて、ゴルゴスの主砲にビームを直撃させたのである。ゴルゴスの主砲には発射に際してチャージする時間が必要であり、その間隔を測って、真正面から突入してビーム発射口に攻撃を加えたのである。直衛のアリスもまさか正面から単機で突っ込んでくるとは思いもよらなかったが、これは油断といえた。結果ビーム発射口は破損し、攻撃ができなくなった。オルフィスといえば、そのまま巨大な発射口に戦闘機ごと突っ込む結果となり、脱出もできずゴルゴスの捕虜となったのである。この事態にセリアムもPS部隊の撤退を決断し、戦闘は終了した。
ゴルゴスに帰還したセリアムはアリスの謝罪とともに、ゴルゴスの主砲を破壊した勇敢なパイロットが捕虜になっているとの報告を受けた。そして看過できない名を聞いたのである。パイロットは姓名、認識番号を伝えて戦時法に従った捕虜の待遇を要求しているというのであるが、その姓名に記憶を揺さぶられたのである(オルフィスはポール姓を名乗っていたが、オルフィスという名前自体珍しいものであった)。オルフィスがラインバードからいわゆる家出した頃、セリアムは駆け出しのPSパイロットであり、オルフィスの美貌と戦闘機乗りとしての技量にあこがれていたものであった。何せ当時はセリアムのPSとオルフィスの戦闘機で一対一で格闘戦を行ってもオルフィスが全勝していたぐらいであったからだ。件のインメルマンターンもオルフィス直伝であった。そのオルフィスが連合軍の戦闘機パイロットとしてラインバードと戦っていた、しかも命がけでゴルゴスの主砲を破壊したというのである。セリアムは急ぎオルフィスと会い、本人であることを確認した。オルフィスはセリアムに何も言い訳しなかった。ただ、久しぶりだね、と言い、その後は表情を隠した。セリアムはラインバードは正規軍でなく戦時法にはしばられないため正規の扱いは約束できないとして、オルフィスを本来ゴドウィンの居室となる比較的広い設備のいい部屋に収容したのである。正規の待遇が約束できないといっても、悪い方向ではなく、優しい方向への変更であった。
一方グランドルークでは、今回の戦闘の損害に衝撃をうけていた。PS隊は出撃したのは53機であったが、そのうち20機が未帰還、13機が破損、無事なのは二次攻撃から参加した部隊の15機と今回直衛であったニーニルヒの部隊だけであった。実質グランドルークのPS隊の1/3は壊滅状態といえる。PSは予備に余裕があるがパイロットは補充がきかない。戦闘機部隊も出撃した30機中12機が未帰還であった。特に隊長のオルフィスがゴルゴスの主砲を破壊したとの連絡の後、行方不明なのが大きい。これが地球圏であれば補給を依頼するところであるが、ここは遠く離れた火星宙域である。連合のどの基地からも数十万キロ離れていた。エルメスは二つの点を悔いていた。一つは戦闘機隊に初戦と同じ戦術で攻撃させたこと。戦果があった攻撃方法のため、深く考えずに再度実行した。敵が何らかの手を打ってくることは当然考えるべきであった。二つ目はセリアムの存在である。彼の個人的技量と指揮能力はマエジマとヒュウを合わせたような能力であり、とてつもない戦の天才といえた。ヒュウとの交戦の後も指揮に集中し、マエジマと互角以上の戦いを繰り広げたのである。セリアムが前線に出てくるだけでPS戦が厳しくなることを見逃していた。今後の反省点としても消えた命は帰ってこない。指揮官として大きな悔いが残る戦いであった。予定外の三次加速によりゴルゴスと距離をとることで損害を抑えることはできたが、その分セレスへの到着が三日遅れるコースとなった。これもエルメスの失点といえた。セレナクイーンという足枷がなければ本来はここでゴルゴスの大砲が修理される前に急襲すべきタイミングであった。たとえ機動部隊に大きなダメージを受けた直後であっても、千載一遇のチャンスといえたが、セレナクイーンを置き去りにしていくことも、戦場につれていくこともできない。現在の任務はゴルゴス殲滅ではなくセレナクイーンの護衛である。
ここでハートマンから意外な申し出があった。セレスに近づけばハートマンの私設警護隊が呼べるというのである。これはセレスの各都市間でも争いの歴史があり、過去に小競り合いをした際に結成されたもので、もちろんPSや応力フィールド装備の機動兵器などはない。要員も専任の兵士ではなく、普段は資源採掘の任についている一般人である。主に戦闘機のような空間機動モジュールを武装した機動部隊を30機と母艦となる輸送機が一機用意できるという。しかしエルメスはそれを断った。応力フィールドを持たない戦闘機など、現在のPS相手に役にたたないと考えたのである。しかしハートマンは実際に戦闘に参加させるのではなく、セレナクイーンというセレス労組の船を労組の警護隊で守るのには何も問題はないと説明した。政治的な効果もあり、おそらくゴルゴスはセレナクイーンに手がだせなくなる、そう説明したのである。そしてランサーも軍中央から派遣された参謀達もこの作戦を了承したのである。エルメスとしては軍事に不安定要素を持ち込まないでいて欲しかったがやむをえなかった。既に迎えは出ているので、あと一週間でランデブーできるとのことであった。そこでいっそのこと、セレナクイーンは護衛と共にセレスに先行する計画が立案された。エルメスはリスクを考慮した上で、これを了承した。




