今、友と共に遊戯を
ダナ森の洞窟を出て村に着いたけど、周りの目が明らかにレイアを怪しんでいるような目をしていた。
レイアと村を歩いていると一人のおばさんが近づいてきた。 よく酒場に来る攻略者の奥さんだ。
「レックスあんたその子どうしたんだい、それにカインも背負って」
「あー、これは……」
「ともかくそこのおねーさん、私の服貸したげるからそんな格好で寒いでしょ! そういえばローナちゃん心配してたんだから早く向かってあげなさい」
レイアは言われるがままそのおばさんに着いていく。
とりあえずカインを酒場まで運ぶ事にした。 バレないように裏口に回る。 が裏口には腕を組んで待っていたローナとカインの兄、アベルが居た。
「遅い、心配したんだからね」
「久しぶり、レックスくん。 まさか俺まで連れてこられるとは思ってなかったよ、と言うかカインどうしちゃったんだ」
「あぁ、カインが眠らされてどうしようもなくなった時に助けてくれた人が居たんだ、今服を──」
「もしかしてその人かい?」
知らぬ間にうしろにいたらしい。
意外にもというべきか、いや猫被りが凄いと言うべきだ。 先程の話し方とは打って変わって誰にでも接しやすそうな挨拶をしていた。
「はじめまして! レイアっていいます! この二人が危ない所だったので助けたんですけど、お礼に宿に泊まっていいって言われて!」
「なるほどねー、レックス? 後で積もる話があるからゆっくり聞かせてもらうね」
ローナの笑顔が明らかに怖い、怒ってるとかそういう類ではないけど怖い……!!
直感で身の危険を感じてしまうほどに、殺気を感じた。 俺はアベルにカインを渡す。
「きょ、今日はゆっくり寝かせてもらいたいなー……なんて」
「さっ、恩人に恩を返さないと神様に罰当たりだからね! レイアさん今日は何でも食べて! アベルが奢ってくれるから! 」
「そうだね、カイン達を助けてくれたわけだし」
「ありがとうございます!」
まずい、この流れだと明らかに飯の時ハブられる……。
「えっと……俺のご飯は?」
意をけしてローナに話しかけたが皆すごすごと中へ入っていき、更には扉の鍵までしっかり締められてしまった。
大きくため息を吐き仕方なく表口の酒場入り口から入った。
「おぉ! レックス!! 今日も攻略して生き延びやがったかぁ!」
「あんまりローナちゃんを心配させんなよ?」
「レックス!! 酒飲もうぜ!」
酒場にいるオヤジ達の野次が飛んでくる。 疲れた訳じゃないが軽くあしらい 酒場の二階に上がる。
部屋に戻ると何故かローナが居た。
「レックス、とりあえず座って」
ただならぬ雰囲気が部屋覆っていた。 言われた通り座る。
「レックス危険なことはもうしないって約束できる?」
「それは……」
「昨日行く前に約束したよね、今回が最後だって」
「だから最後にして……」
ローナの顔は見えなかったが、明らかに泣いている。 その証拠に手に涙の水滴がたれていた。
「私はカインもレックスも大事。 幼馴染で昔から一緒なの。 カインは強くなって自分で道を切り開ける人だけど、レックスは違うの。 弱いの。 今まで運が良かっただけなの、だからもう最後にして」
こんなにも心配してくれる人がいると思うともらい泣きしそうになったがグッと堪えた。
「……わかったよ」
その日は食が通らなくて早くに寝てしまう。
そのせいか翌日はかなり早く起きてしまった。
早く起きたことにより、掃除洗濯がみんなが起きるより前に終わってしまう。 そして空腹に襲われ、酒場の台所で料理を作る。
その匂いに誘われてかぞろぞろとカインやアベル、レイアとローナが起きてきた。
昨日の一件でローナとは少し顔を合わせづらいが気にすること無くいつも通りローナは話しかけてきてくれた。
食事を終え、やることが無くなった時レイアに呼び出される。
「なんだよ」
「レックスは勉強不足じゃなくて、想像力がないんだね、昨日ローナとアベルから聞いたよ。 本をすごい読んで知識を入れて、自分の弱さを何とかしようとしてるって」
「そんなこと聞いてたのか」
「でもレックスは現実しか見ていない、その想像力を培う場面が少なかったのがあるのかもしれない。 だから想像力を培うためにゲームをしましょう」
唐突に何を言ってるんだと、頭の中でレイアのことを頭のおかしい人認定し始めていた。
「ゲーム? ここに体験型ゲームはないぞ? 中央にいる人は持ってるだろうけど」
「そういうのじゃなくてテーブルトークRPGっていうのをやるの、ほらみんなも呼んできて」
テーブルトークRPG? 聞いたことがない遊びだ。 仕方なくみんなを呼んだが、何故かみんなノリノリで着いてきた。まぁ、夜までの間すごく暇だから時間潰しにはちょうどいいだろう。
皆と一緒に酒場の食事処に集まった。
「人数分の紙とペンある? あとサイコロとか」
ローナは全て持ってウキウキとしていた。気になってローナに何故そんなにテンションが高いのか聞いてみた
「実は昨日酒場でやってみたんだけど、すっごく面白くて、攻略に行ってないのに攻略したー! って気持ちになれたからだよ!」
ローナはウキウキでステータスと書かれた紙をローナのスキルで作り上げその紙の説明をレイアがする。
要は自分の分身みたいなものを冒険させるゲームらしいが、強さとかは全てサイコロを降って決めるというもの。 あとのスキルとかはこちらでポイントの割り振りをするだけだと言うから、確かにこの世界と似通って神様になった気持ちにすらなる。
次々とステータスの強さをみんな割り振っていき、サイコロが自分の手元に回ってきた。 これを2回まわすらしい
「何だこのサイコロ!? 6面じゃなくて10面!?」
「私が作ったの」
さすが配慮の神バーニルのスキル。 芸達者系のスキルがこういうところで生かされるわけか。
言われた通り強さを割り振りスキルもつくりあげた。
そしてゲームが始まった。 もちろん進行はレイアが執り行う。
「皆さん目を瞑ってください、そこは薄暗くて窓もない狭い部屋でした。 気がつくと皆さんはそこに居て少しでも動くと他の人に当たってしまいそうなほど狭いです」