今、神へ報告を
カイザーは、口を何かを考えている様子。 その隣には黒髪メイド剣士のレノアが立っていた。
「シレディー首長制国家ねぇー、あの国の大首長は魔物の龍だったか? 確かコモドドラゴンとかいう種の上位種。 うちの傘下に加えられないか。 レノア」
シレディー首長制国家とは、西の国。 愛の神アロディーと罪の神シレルが主神の今はさほど珍しくもない二大主神国家である。 大首長が魔物なのは珍しい。
「でしたら私が焚き付けましょうか、もしやるのであれば、その為にここに30人程シレディー国の首長らを呼ばなければなりませんが」
各地域に首長を立てている程広大な土地を持つ大国でもあるシレディー首長制国家。 その実権は百年間変わらずその龍にある。
「あぁ、そうしてくれ。 レノアが考えたことは結果に対しての完璧な道筋なのだ」
「感謝します、ではいって参ります」
瞬時にその場からレノアは消え、少し大きめの砂粒がぽつんとその場に落ちる。 レノアがかえって来るまでの間カイザーはある任務を遂行する。
3時間程たった時、レノアは30人の何者かを紐で縛り、たった一人だけ首のみしかない男の頭を片手で持っていた。
レノア自身に血は見られないが、後ろの30人の様子を見るに、凄惨な死を与えられたのかもしれない。
「おまたせしました。 30名の首長と反抗した1人の首です。 血抜きはしておりますので、汚れはしません」
「そうかよくやったなレノア。 しかし些か汚くは無いか?」
「失礼しました、こちらは処分致します」
「よい。 我の足元に置いておけ。 それよりレノアは少しは休んでいろ、働きすぎもあまり良くないがな」
「はっ」
首をカイザーの足元に置くとその場から瞬時に消え、そこにレノアを模したと思われる小さな像が置かれていた。
「さて、貴様らは"その場から動く事、喋る事はもう出来ない"」
その言葉に対してその場にいた者は全く動くことが出来なくなり喋ろうとしても声すら出せなくなってしまう。
「貴様らの大首長は龍らしいな。 とても興味深いが、お前たちがここにいればきっと来るだろう」
首長らは目で辞めてくれと訴えていたがそれは届かない。 怯えからかは分からないが、汗を大量に流し、失禁する者もいた。
「ほう、やっと見つけたぞ。 生き残りのストゥルトゥスと神」
突然口にした言葉は、首長らを惑わせる。 ニヒルな笑みを浮かべ、転がった首を踏み付ける。
「サーガ様とリベリオン様をお呼びしろ」
「はっ!」
扉の前にいた、近衛兵が二人その部屋を出る。 部屋に残っているのはもう先程の三十人とこの一人のみ。
落雷が近場で落ち大きな音ともにちらりと顔を見せる。
「──さぁ、開戦だ」
再びニヒルな笑みを浮かべ、足で踏んでいた頭蓋を踏み潰す。 その潰された骨の欠片全て、狙ったかのように三十人と人間の頭蓋を撃ち抜き、その場は血の海へと変貌した。
「レノア」
「はっ」
レノアを模した小さな像と"入れ替わる"様にレノアが現れる。
「サーガ様とリベリオン様が来るには流石に床汚い。 片しておいてくれ」
「はっ」
床に散らばる血や骨の残骸、首の無い死体にレノアが目を向けると一瞬にして何事も無かったかのように跡形もなく、その痕跡は無くなる。 と同時に血で黒く変色した拳ほどの大きさの石が部屋に転がる。
「お呼び致しました!」
扉の向こうから聞こえてくるその掛け声と共に扉が開く。
その近衛兵に対してカイザーは殺意に近い威圧を向ける。
「し、失礼しました!」
睨まれた近衛兵は走ってその場を去ってしまう。 死にたくない、という気持ちが行動に出てしまったようだった。
カイザーはそれに頭を抱え、瞬時に気持ちを切り替える。
「大変お見苦しい姿をお見せしました。 申し訳ございません、改めてお越しいただきありがとうございます、サーガ様、リベリオン様」
部屋の入口から羽衣を纏い白いローブに身を包んだ老人の男と同じく羽衣を纏い黒いローブに身を包んだ目つきの悪い男が歩いていた。
「いや、構わないよ。 直接君が来ないという事は重要な事だと共通認識を持っているからね」
白いローブの老人は、あっけらかんとした様子で、カイザーに近寄る。 同時にカイザーも席を立ち、二柱の元へ歩いていく。
目の前までいくと敬意を示すようにカイザーは立膝をつく。
「感謝致します、サーガ様。 早速本題に入りますが先程最後の生き残りを発見致しました」
「ついに見つかったのか、何処にいたんだ」
前のめりに成程の勢いでカイザーに居場所聞く黒いローブの男。
そこに落ちていた拳ほどの大きさの石が瞬時に地図へと入れ替わる。
その地図で、居場所を指差しながら説明をする。
「ブローディア様が収めるダリオス国領近郊の村です、そこに一人居ました。 ただ、重大な報告と言うのがここからでして」
「何だ」
「旧神ガイア、及びレイアがそのものと行動しておりました。
対処は如何しましょうか」