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今、神と共に反逆を  作者: 天乃 ロガ
始まりの話
3/21

今、神と対話する Ⅱ

  人の様な姿と白い布切れ一枚を着た女性が笑みを浮かべた。


「な、なんで俺の名前を……? そんなことよりカインに何したんだよ!」


  女性はカインの方を見ると、興味が無さそうにこちらにほほ笑みかけた。


「心配ありません、彼には眠ってもらっているだけです。 今日の夜には目を覚ますので大丈夫ですよ。それとなぜ知ってるかは今話せば長くなります。ただあなたがどんな人間なのかは知っていますよ」


  困惑と動揺で心臓の鼓動を高鳴らせる。 不安で目眩がしそうだった。

  "カインは殺されてるのかもしれない、もしかしたら俺も殺されるのかもしれない"と。


「あなたはレベル1、この世界で唯一"今の神"を信仰していない人」


  何故それを知っているのか。 体験したことが無い高揚感が唾を呑ませる。

  この間に入った悔恨の念はそれと同時に消えていった。


「あんた何者なんだよ」

「私はガイア、原初の神の一柱です。 "今の神"と違って正真正銘の神様ですよ」


  何も隠す気がないかのように素直な笑顔を見せる。 神と言われても信用はできない。 まだ神に対しての疑念は残り続けていた。


「俺に何の用なんだ」

「結論から言います。 "今の神"をあなたに滅して欲しい」


  何を言っているんだ? この時はそう感じた、いや。 直感で敵対していたことを見抜いていたからこその動揺だったのかもしれない。


「でも今の貴方にそんな力はありません、それに滅する理由も大義名分もない」


  目の前で演説のように歩きながら、そして囁くような話し方。 それにすっかり魅入ってしまう程に心はその神様に、惹かれていた。

  そして直感で察した。 何度か神に会ってきたがこの神様は、正しく本物で恋とかではないともわかっていた。


「なので理由を授けます。 あなたの両親は盗賊によって殺されましたが、それは偶然ではなく今の神によって仕組まれたことなのです。それを指示し殺した神は"リベリオン"」


「なんで……そんな事を」

「詳しくは分かりませんが全人類の信仰を"今の神"へ移すためかと。 少なくともストゥルトゥス家系は代々"今の神"に信仰はしませんでした。 その証拠にあなたが今受けてる姓はストゥルトゥスです」


  確かにしていたらストゥルトゥスという家名は名乗っていないと思う。

  先程までほかの神とは違うと思っていた。

  ふと頭の中で話の焦点が"今の神を滅ぼして欲しい"へと移る。

  だからこそ、今の神と呼称する事が気になってしまう。


「まて、今の神って? 一体どういう意味だよ、仲間じゃないのかよ」


  先程までの真剣な面持ちとは打って変わって、あたかも自慢話をするかのごとく事の発端を語り始める。

  その語りは躍動感溢れる者で、娯楽が少ない今の世で、人を楽しませる素晴らしさを心で痛感した。


「よくぞ聞いてくれました! 今の神は本当の神ではなく、ある人間達が人類に、超常な力を与え、崇められ始めたことから神と言われるようになります!

  事の発端は千年前。 当時はまだA.D.で呼ばれていた時代に超常の力を持った者達が、人々に自分の力を使い始めます、そして彼らは "私達こそが本当の神である"と言いました。

  ただ目の前で起こったこと、出来ないことができるようになる、身体の不自由な人が自由になる、望みを叶えるための力強を与える。 彼らを信仰すればそういった恩恵を受けることが出来る。 だから人々は次第に彼らの事を"本当の神である"と錯覚し始めました。


  それは電波のように伝染していき、宗教の戦争が起こり、人の数は当時の十分の一まで減少しました。 最も最悪なのは彼らが手懐けたのは、信仰者とは程遠い無神論者です。 あとは過激な思想を持つもの達です。 それによって戦果は瞬く間に広まってしまったのですから。


  私たちは"神殺しが出来ない以上手出しは出来ない"と思っていましたが信仰が失われていた為、力及ばずあろう事か彼らは神を封印し始めたのです!」


  話し終えた時のその神様の表情はやり遂げた満足感に満ち溢れるような面持ちだった。 両手を上に広げ、天を仰ぐように上を見て、まるで天上から光が溢れているかのように、そこにスポットライトが当てられているかのように、立っていた。


「つまりそれが今、神と言われる奴らの正体ってことなのか?」

「はい、そして突然で申し訳ないのですが、私達はもう、残された時間が無く消滅してしまいます、なので代わりに彼らを倒してください。 よろしくお願いします」


  自分が選ばれた理由がわからない。 それに、確かに両親を殺されてしまった復讐心はあるけど、それが神の仕業だと言うのなら、俺には抗える力がいない。 諦めるしかない。


「……俺には力不足です。 なのですみません」

「そうですか……」


  ガイアは頬に手をあて考える素振りを見せた。

 それをよそ目にカインを背負い、その間から出ようとしていた時──


「もし"強くなれる"とするならやってくれますか?」

「……まぁ、本当に強くなれるんだったら」


  力があれば何とかできるとは思わないけど、目の前に幸運が転がっている。 くれるのなら欲しい。 そんな我欲が前に出た。


「決まりですね」


  満面の笑みで勝手に決められてしまった。 多分この神様にはもう後がないのだろう。 だからこそ、早急に決めておきたいのだろうと。 光が分散するようにガイアの体は透明になっていく。 とても辛そうにも見えた。


「貴方にある力を与えます。 家名は奪わないから安心してください。 この力を持ったらもう永遠にレベル1のままです。 それでもいいですか?」


  最終確認のようなものだ。 本心では受け取って欲しいと思ってるのだろう。だからもう渡す準備が出来てるかのように、俺に手をかざしているんだろう。


「どんな力がわからないけど、神を倒せるくらいの力なんだろ」

「はい、使い方によっては。


 それでは今から貴方に


 "自分が使いたいと思ったものをスキルとして取得する能力"と


 "今持ち合わせてる全てのスキルの熟練度をあげられる能力"を与えます。


  これから先の事をサポートしてくれる私の半身も後ほどここに顔を見せるでしょう。 私と瓜二つなのでよくわかると思いますよ。 名前は"レイア"という子です。 可愛がってあげてくださいね」


 その神様の体はさらに光を帯び、薄く透明になっていた。


「これは約束です、必ず奴らを倒してください」


  そして神様は消えていった。

  キラキラとした胞子のような光が地面に落ち、その部屋は真っ暗になってしまう。


  消えたと同時に物陰から一人の女性が歩いてきた。 全くガイアと同じ顔だけど神聖さは感じなかった。


「そろそろここ崩れちゃうからさっさと行きましょ」


  ただ服装は全く同じだった。


「さっきガイアに説明されたと思うけど、私はレイア。 これからあなたのサポート兼パートナーとして行動を共にするからよろしく。 とりあえずここを出ましょ」


  頷き、一緒にカインを運んでその間をでた。 その瞬間、扉は閉じ騒音と扉が開く時よりも大きな地面の揺れで、足元がおぼつかなくなり転けそうになると、レイアは俺の体を支えた。


「とりあえずここを出ましょ、諸々の説明はその後するから今は抑えて」


 少し悶々と疑問を抱えてたのが顔に出てたようだ

  先程の脇道を通ると、未だに大量の魔物が彷徨いていた。

「面倒ね。 レックス、あなた達はここでちょっと待ってて、危ないから呼ぶまで出てこないでね」


  レイアはそう言うと脇道から洞窟の直通路の坂へと出ていった。 その後聞こえた音は、魔物の悲鳴と打撃音や地面が揺れるほどの爆発音のような音が聞こえてきた。


「もういいよ」


  レイアの声がした。 その言葉を聴き恐る恐る脇道を出ると、魔物達は見る影もないほど無惨な姿になっていた。 レイアは手をはたいてホコリを落として余裕そうな顔で、出口までの道を先行していく。


  外はすっかり日が暮れていて、松明がないと足元も見えない程暗かった。


  鞄から松明を取りだし、街へと歩き始める。


「ふー、外の空気はやっぱり美味しいね、で質問とかあるんでしょ」


レイアはガイアと違いかなり気さくで無遠慮な感じだった。


「あぁ、幾つか質問がある」

「何?」

「君は誰なんだ?」

「さっきも言ったけど私はレイア。 ガイアの分身体、元の精神はさっき話してたガイアと同じだけど、見たり聞いたりの経験の差から違和感はあるかもね」

「にしては口調とかが……」

「そりゃ、人間になったし本体とも離れたからねー、それに新しい生だから気難しく考えたくないだけ」


  一応は先程の神様と同じらしいがそうは思えないくらい無遠慮な感じだった。

  人なので光なども帯びてない。 普通の……変態だ、格好が。


「俺は本当に戦える強さを貰ったのか?」

「まぁ貰ったといえば貰ってるけどまだ使える域にいないから強くはないよ。 それをどう使うかで強さは変わる」


「どうやってその能力を確認するんだよ」


「なら念じてみ、"今、自分の能力は自分の現時点で持ち合わせてるスキルを見ること"とその思い込む力が強ければスキルになってくれる」


  歩きながらイメージをしてみる。 教養が足りないのか分からないが、数分頑張ってもあまりイメージが固まらない。

  ただ思い込むことは出来た。


  結果として"何も起きなかった"のだが。


「なんも起こらないんだけど」

「そんなすぐ出来たらチートでしょ、努力バカにすんなよ」

「え? テンポ良く進も? そこはさ」


  街の明かりが見え始め、レイアは肌寒さを感じたのか腕を摩っていた。 無理もない、布切れ一枚を羽織って腰に紐をまきつけたほぼ裸なのだから。


「私は今日どこで泊まればいいの?」

「うちの酒場……って思ったけど許可取らないとな、なんて説明しよう」

「洞窟で助けて貰った旅人とかでいい、そっちの考えたのに合わせるから」

 

  名案だ。 それならカインが倒れて、俺が生きてることも説明ができる。


「あんまりいいの思いつかないからそれでいいか。 俺、想像力が無いからなぁ……」

「そう、じゃあ勉強も兼ねて、これから毎日特訓ね。 知識があれば想像できる幅も変わるだろうし」

「まじかよ……」


  街に入るといつも通り、みんな殺伐とした空気の中で、よそ者のレイアを怪しむ様な目で見ていた。



 ──"ようやく見つけたぞ生き残りの──"


  大きな窓、暗い部屋。 照明の落とされた玉座の間のような場所で玉座に座る者に怯える30人の様子。


  震えて声も出せず、動く事もできなかった。

  玉座に座るたった一人の足元には胴体の無い頭が一つ転がっており、それを踏みつけながら、にやけていた。


「サーガ様とリベリオン様をお呼びしろ」

「はっ!」


  扉の前にいた、近衛兵の二人がその部屋を出る。


  落雷が近場で落ち大きな音ともにちらりと顔を見せる。

  中途半端に長い髪を結い、右肩に垂らし鋭い眼光と凛とした顔をした男は、黒と白を基調とした服を来ていた。



「──さぁ、開戦だ」



  男はニヒルな笑みを浮かべ、足で踏んでいた頭蓋を踏み潰す。 その潰された骨の欠片全て、狙ったかのようにその場にいる全員の頭蓋を撃ち抜き、その場は血の海へと変貌した。


「レノア」

「はっ」


  太刀を携えた軽鎧とメイド服姿の短髪黒髪美少女が瞬時にその部屋へと現れる。

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