今、幼馴染の為に攻略を
次の朝の食事はパンと牛乳風豆乳、サラダとスープと言う値段の割には意外としっかりとした食事が食堂に陳列していた。 どうやらバイキング式で、いくら食べてもいいらしい。 それでいて1日75リブラは良心的だ。
カグラとレイアを食堂で待つ。 この国には時刻を図る時計が設置されており、秒刻みで、時間がわかる。 村には刻限の鐘くらいしか無かったから、こういう時間が正確にわかるものはありがたい。
8時半頃やっと2人が起きてくる。 元々俺は仕事で早起きだから、仕方ないが1時間は待たされた。
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
カグラは目を擦りながらまだ眠そうに歩いてくる。
2人にお皿とトレーを渡し、好きなパンとサラダ、スープを乗せて席に座る。
15分ほどで食事は終わり、10時まで暇ができたので、少しだけこの国を観光して回ることになった。 と言っても1時間程度だが。
この国は武の神アロスと鍛錬の神タレイスの2柱の神を信仰した国だと言う。 だけどその割に技術は発展しており、機械仕掛けと電子仕掛けのふたつの両立がこの国では楽しめて新鮮だった。
工業区と言われるその付近は、錆びた鉄と油の匂いで臭く、工業区は許可証がないと入れない仕組みになっていた。 一方でこの居住区は自分の思い通りに街の見た目を変えられる事が、一層楽しさを引き出していた。
そして中央に見える、大きな城。 あれがこの国の王様がいる場所なのだろう。 とても立派だけどこの国は神秘な城、機械仕掛けの工業区、電子仕掛けの居住区と本当に見ていて飽きない、統一があまりなされていないような国だった。
そして約束の10時、西門に向かいジークロード達と合流する。
「おう、おはようさん」
ジークロード達は武器を持って西門の壁に寄りかかりたっていた。
「そこの近衛に武器を渡す時に貰った番号の札を渡して、武器を貰うんだ」
カグラは近衛兵に番号を渡し武器を返してもらう。
レイアは危険物自体を持っていなかったのでその札を貰っていなかった。
俺は剣を渡していたのだが……
「んん? あれ? ない? は? え?どこにやったっけ……確か」
あぁそうだ。 昨日のズボンに入れっぱなしで今日は違うズボンだから宿に置きっぱなしだ。
慌てふためく俺にジークロードは気づいて声をかける。
「もしかして、札を宿に置いてきちまったのか?」
「……はい」
少し呆れたような顔で笑うジークロード。
「しゃあねぇ後で武器渡してやるから今は何もなかったことにしな」
「わかりました……ありがとうございます」
西門を出ると五輪駆動の車が止まっていた。
「あれは俺の車だ。 今日の攻略地はそんな遠くはないが、帰りの移動で疲れてる時に何キロも歩かされんのはキツイだろうからな」
その車は6人が乗るにはちょうどいい大きさだった。
全員が車に乗り込むと、静音で進んでいく。 馬車のような車輪が回る音も聞こえないほどに静か。
「そういえば、今日の攻略の難易度はどの程度なんだよ?」
「んぁー、伝え忘れてたな。 高難易度、レベル100クラスって所だな。 樹海だから虫の魔物つう厄介な相手をしなきゃなんねぇ、あと今日は午前中で引き上げるぞ」
「それはなんで?」
「うちの国の王様がお前達に会いたいんだと、まあ主にそこのカグラに会いたいんだろうけどな」
まぁ、確かに高レベルのカグラが来たならどんな相手かを知りたいと思うのは統治者として当然だろうな。
しばらく移動すると窓の外には、まるで壁のように生い茂る木々が生えた樹海が広がってる所に来た。
「ここだ」
ジークロードは車を停め、車をおりる。
セリナとイリスは銃を手にし車をおりた。
「みなさんおりますよ〜」
スナイパーのような銃を持つイリナが二台のドアを開けて手を差し伸べておりやすいようにする。
降りた時にジークロードがどこからか剣を取り出し俺に渡してくれた。
「ほらよ、さっき作っといたから」
「作った?」
「あぁ、俺は武器になり得るものなら自分の体力が持つ限り作れるからな」
めちゃくちゃ便利な能力。 そりゃぁ攻略者補助団体の統括だ。
「今回の攻略は、グレートジャイアントアントとハイグレードコックローチを10体以上討伐って事だが、まぁ余裕だな」
ジークロードの腕と機会から映し出された情報にはその対象の虫2体の絵が書かれていた。
グレートジャイアントアントは人の約4倍の大きさで描かれておりハイグレードコックローチは人間と同じ大きさで書かれてはいるが危険を意味する"DANNGER"と書かれていた。 またしても古代文字によく似た言葉だが、1文字余計に入っている。
「この、ハイグレードコックローチは何が危険なんだ?」
「まず見た目が嫌悪する見た目、あとは早い、硬い、大量。 攻撃力があまりない事以外は脅威でしかないな」
まあ確かに危険かもしれないけど、カグラがいれば問題は無いだろう。
樹海には俺達3人しか入らず攻略者補助団体の3人は援護だけすると言って入っては来なかった。 迷って出てこれなかったらどうする気なんだ。
グレートジャイアントアントはすぐに見つかり、カグラはすぐに10体倒してしまう。 流石レベル300超と言うべきか。 出番が欲しいものだよ。
しかし、ハイグレードコックローチを見つけた途端にカグラは全力で逃走した。
「無理ィィ!! 気持ち悪いよォーー!!!!」
それは背筋がむず痒く武者震いのように嫌悪感が凄まじかった。
カグラに続き俺とレイアも全力で来た道を戻る。 すると大きな銃声と共に一体のハイグレードコックローチが倒れる。 それでも後ろには何十体ものハイグレードコックローチがいた。
その後に弾丸のような複数の玉が不規則な動きでハイグレードコックローチを射抜いていく。
そして玉が飛んでくるの方向に向かって走っていくと樹海を抜け、ジークロード達が待っていた。
「よう、全く面倒な奴らばっか連れてきやがって」
イリナは銃を1発ずつ打ち、セリナは二丁の銃でずっと連射していた。 たまが無限に出るかのように全くリロードする気配はなかった。
そしてジークロードはポケットから銃の弾を握り、樹海の方に投げると縦横無尽に玉が飛んでいく。
「ジークロードさん今の能力は?」
「おう、俺の能力は自分が持てるだけの重量のものを全て操れるって能力だ」
能力で武器を作ってそれを操れるなんて強すぎる。
統括って本当に強いんだなと改めて思った。