今、幼馴染の為に仕事を IV
暫く待つと同じように目の前に"Complerte"と完成を伝える文字が浮び上がる。
「このような文字が現れたらお伝えください」
受付の人が見せたのは先程の完成を意味する文字。
「この文字は現れました。あの、この文字って……」
「珍しい言語ですよね、この文字は古代文字とプログラム言語の互換性から選ばれた言葉なんだそうですよ
それでは、そちらの機械についてご説明致します」
言葉だけではなく、その機械の説明が分かりやすいように、図でも教えてくれた。
「まずこちらは貸与しているものなので万が一紛失、破損してしまった場合はすぐに役所にお越し下さい。 一度目は罰金等はありませんが、以降は1000リブラの罰金となりますのでお気をつけください。 もし落し物で見つけた場合最寄りの衛兵、または役所までお願いします。 次にMR、ARについてはご存知でしょうか?」
「いえ、わからないです」
「ARとは拡張現実と呼ばれるもので例えば先程出た文字など、実際には無いものが情報として見えるようになります。 街の人はこのARを使って街の外観を変えていたりしますよ、ただ本人にしかその光景を見ることは出来ないのでお気をつけください。 ここまでで質問はありますか?」
つまり、手で触れても変わらないけど視覚化情報が強化されるっていうイメージなのかな。
「いえ、特には」
「次の説明に移ります。 MRとは複合現実と呼ばれARと違いないものに触れているような操作ができます。 例えばARで風景を変えて遊んでいると何処にいるか分からなくなりますが、MRで地図を呼び出してナビゲートさせる事や、立体的な設計図を描く事も可能です。 ここまでで質問はありますか?」
「ARとMRの明確な違いってなんですか?」
「ARはあくまで現実がベースとなっている。 MRは仮想と現実どちらもベースで作られているのが明確な違いです」
説明を聞く限りだとMRの方が有用性は高そうだし、ARの影が薄いような?
「それってAR要らなくないですか」
「ARはあくまで現実の補強。 MRは現実での操作なので用途としては別物になりますね、他に質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「ありがとうございます、そのARとMRがそちらの耳についている端末に内蔵されてます。 腕についている端末とも相互性があるので、現実の風景を変える時はそちらから簡単に変更できます。 腕についている端末で、決済や個人認証等をしますので、お風呂や寝る場合意外は外さないようにお願いします、因みに現在のリブラの取り扱いは現金ですか? カードですか? データですか?」
「現金です」
「では現金をこちらの端末に読み込みますのでお預かりします」
持ってきた荷物から現金の入った袋を受付の人に渡す。
「そちらの機械の上に端末が乗るように利き腕を置いて下さい」
右側にあった黒い板のような機械に手を乗せる。
「今お預かりしたリブラは全てそちらの端末に移行させましたので、この国では今後そちらで決済をお願いします。 また国を出国される場合は機会の返却をお願いします。 その際、お預かりしているリブラは全て現金化してお渡し致しますが、その際手数料として60リブラ掛かりますのでよろしくお願いします」
「わかりました」
「最後に先程申請頂いた攻略者補助団体の件ですが、バーニル酒場、西門にいるとの事ですので受付が終了次第向かっていただくようお願いします。 この役所を出て右手の大通りを真っ直ぐ行くとある酒場となってます」
確かそこって、ルルワの嫁いだ場所だよな。
「ありがとうございます」
そして全ての受付を済ませ役所を出る。
「今からバーニル酒場、西門に行く」
「どうして?」
「そこに攻略者補助団体の人が居るのと、アベルの妹でカインと双子の妹、ルルワがいるからアベルとカインの報告も兼ねてね」
「そうか」
「うわぁー! すごーい! 見てみて綺麗な壁だねー! どうなってるのかなー」
少し重たい空気が流れたが、マイペースなカグラは景色に感動していた。
「さっき説明受けたでしょ、きいてなかったの?」
「んー、難しいって思ったから分かったフリしたの! でも綺麗だねー!」
どんな景色を見てるのか俺達には分からないけど、確かに、ARという技術で入ってきた時の風景とは変わり、ダリオス国中央区に近い風景を映し出していた。
「さっきの未来的な風景よりいつもの風景みたいな方が落ち着くな」
「まぁ、今見ているものはそれぞれ違うが本人が一番居心地のいい風景にできるこの技術は本当にすごいよ」
風景に見とれているカグラと風景に安心感を持つ俺とレイア、歩いていること数分。
「ここがバーニル酒場か、初めて来るな」
ルルワが去ってから一年半、全く会ってなかったから少し楽しみでもあり、伝えるのが物凄く辛い。
レイアは背中を叩いてくれレイアとカグラは笑顔で励ましてくれた。
腕の端末を扉の横にある丸く光っている部分にかざすとスライドするように扉が開く。
ここら辺はやっぱり未来感が拭えない。
「いらっしゃい」
迎えたのはルルワではなく、多分嫁ぎ先の旦那さん。 そしてそのカウンター席に3人のいかにも攻略者と思える風貌の人達がいた。
1人は男でかなり体付きがガッシリしていてダンディなオジサン。
残りの2人はそれぞれ左右対象のような見た目をした女の子、優しいベージュ色の毛をした人と燃えるような赤毛の人。
赤毛の人は右手に鎧を着け、右側にサイドテールと呼ばれる髪型。
ベージュ色の毛をした人は左手に鎧を着け、左側にサイドテールの髪型をしていた。
当然だけど、全員武器は持っていなかった
「おっ、来たか。 まあ御三方そこに座りな」
少し大きめなテーブル席を指差す。
俺達が着席すると同じく3人も座る。
「さて、役所から話は聞いてると思うが俺たちは攻略者補助団体、俺はその統括のジークロード・タレイスだ、よろしくな。 んでコイツらが──」
「私はイリナ・タレイスと言います、こっちが妹のセリナです。 レベルは私も妹も共に102です」
ベージュ色の人がイリナ、赤毛の子はセリナというらしい。 イリナがセリナに肩を添えようとするとそれを手で振り払う。 イリナの声色はとても優しく髪の毛の色にあったおっとりとした感じに見えた。 ということは赤毛のセリナは、おそらく……。
「別に娘ってわけじゃねぇが、コイツらは新人でな。 俺を含め3人で攻略を補助させてもらう。 料金は規定通り、一人分で構わないがそっちが承諾してくれればって所だな。 おっと、その前にそちらさんの紹介をしてくれ」
言われた通り自己紹介をしていく。 何だか合コンみたいだな、した事ないけど。
「んで? レベルは兄ちゃんのしか聞いてないがそっちの2人はレベルいくつなんだ?」
言われてみれば2人のレベルを聞いていなかった。
「私はレベル24」
「私は345です!」
レイアのレベルは24にしては強すぎるから多分設定みたいなところなんだろうけど、カグラのレベルに耳を疑った。 それは向こうの3人も同じで。
「スマンが聞き間違えたかもしれない、何だって?」
「え? 345ですよ!レベル!」
「やっぱり聞き間違えじゃなかったか……」
あっけらかんとしたジークロード、その隣でイリナとセリナがヒソヒソと何かを話していた。
「え? あの人レベル高くない? 私達要らなくない?」
「お仕事だから、法律でも私達の同行なしはダメだから……」
俺は平常心を保っている様な顔はしていたが内心心臓バクバクさせていて、そりゃ目で追いつけるわけないよ!とか言い訳をいっぱい自問自答しながら並べてた。 でも最近まで封印されててしかも異世界から来たって事は多分そっちの世界もレベル制だったんだと、自分の中で無理やり納得させた。 だけど後で時間があったら話は聞くつもりだ。
チラリとレイアの方をむくとすごく深いため息と頭を抱えて項垂れていた。 その時察した。 レイアはカグラの強さを隠しておきたいんだと言うことを。