今、幼馴染の為に仕事をIII
魔物の群れは洞窟で遭遇した"グッドラックモンスターフェス"を思いださせた。
少なくとも50匹は居る。 それも高レベルの魔物ばかりだろう。 あの時、混乱と恐怖で冷静に分析も出来なかったけど今は戦える自信からかそんな気持ちも薄れている。 自信を持つってどれだけ凄いんだよ。
「レイア、あっちに居るのは任せていいか」
「レックス、今の強さはあいつらを倒せるほど強い。 だから自信を持って戦ってきな!」
レイアはカグラ側を俺は荷馬車側を守りながら戦う。 魔物の中には狼や猿等の魔物から、見たことも無い魔物まで存在した。 見た目はまるでTRPGをやって想像した時の化け物と何ら変わりはないほどに自然界が作り出したとは思えない化け物だった。
それが今俺の目の前にいる。 前だったら卒倒していたはず、今は力を試せる高揚感で体がふわふわとしていた。
武器は中央区で買ったその場しのぎの剣。 流石に銃や自動戦闘武器は高すぎて買えなかった。
柄を強く握り締めて魔物に思い切り踏み込む。 狼型の魔物は踏み込みに対して牙を剥き出しに腕を狙ってくる。
毎日カグラの動きを見ようとしているからかその魔物の動きは体感で遅く感じた。
空いた口を横に割るように切り裂く。 対魔物との戦闘は初めてだが人より戦いやすい反面動きは人より鋭いように感じた。
次々と襲い来る魔物達を一撃で絶命させていく。
そして、おそらくはこの魔物の群れのボスかボスに近い魔物に辿り着く。 狼型のようなそれはひときは大きくまた鋭い眼光でこちらを睨みつけ、まるでその場で起きた事を学ぶかのように背中を向け全速力で立ち去ってった。
こちらの戦闘は終わりレイアの方に目を向けると同じく戦闘は終わっていた。 やっぱりレイアは素手で戦っていて、傷はカグラとの戦闘で付いたもの以外見当たらない。
「レックス、怪我はないか」
「あぁ、俺は大丈夫。 そっちも怪我はなさそうだな」
「当然だよ、私は神なんだから」
「……元だけどな」
あと1日くらいでアレイス王国には着くだろう。
カグラの動きを少しでも追えるようにしておかないとと思って修行をしてたけど全然目で追えない。 速いとかそういう次元じゃない。 見えない。 気がついた時には草や木が思い切り揺れてたり、強い風が吹いてたりして、それでやっとどういう動きをしてるか予測できる程度。 一夜明けて出発ししばらく経った時、砦らしきものが見え始め、長い旅がようやく一段落する気持ちになった。
そして遂に、アレイス王国に到着した。 国境をまたぐ際も看板と境界線が引いてあるだけで厳重な警備とかは無かった。 役所の人が言う話では、境界線を超えてすぐ近くの砦が中央区らしい。
砦は見えてかなり巨大な領地なのは一目瞭然だった。 馬を外壁にある馬小屋に置き荷物を全て持って中に入る。
砦の門は出入りが自由だったが、入る際の衛兵が引き止める。
「入国時は必ず役所で正規の手順を踏んでください。 買い物すら出来ないので。 武器や危険物はそちらのカゴに個人毎で置いてください、預り番号をお渡しします 武器が必要な際は私達に話しかけてください」
言われた通り武器を渡し預り番号を受け取る。 でも少なくとも密入国する訳じゃないけど、買い物すら出来ないと言うのはどういうことか。 その謎はすぐにわかった、入る前は蒸気機関式の壁と砲台に囲まれているかなり昔の産物を模したような国だと思ったけどそれは違った。
中は黒と白、そして蛍光色の青色のような壁の街灯。 全ての建物が箱のように立体的かつ幻想的な見た目。 移動する乗り物は全て宙を浮いて移動し、街の人たちも耳と腕に機械をつけて歩いている。 そこに住む人は壁に手を当てて腕の機械が光ると中に入れるような仕組みになっているらしい。
街を物珍しく見ているとどこからとも無く白い人間ではない機械が話しかけてきた。
『はじめまして!私はこのアレイス王国のガイドをしてます、T-12型Puppetです! 皆様はこの国は初めてですか?』
その機会の胸にある掲示板のようなものに"はい"と"いいえ"の文字が映し出される。 もちろん入国は初めてなのではいを押す。
『ありがとうございます! 役所の場所まで案内致しますのでそのまま私についてきてください! ちなみにここは居住区となっています。 旅人さんの買い物エリアもございますし、宿も完備されているのでぜひご利用ください』
案内され、一見他の建物と見分けがつかない場所に来る。 その機会が建物に手をかざすとスライドするように扉が開きほぼ白で統一された空間がそこにはあった。 今までの建物は黒と蛍光色の青で統一され、道だけ白と黒で出来ていたのに全く違う様に見えた。
『それでは、あちらの受付画面から目的に関する項目を選んで、受付の順番をお待ちください!』
俺達が中に入るとその機械は建物を出て俺達に90度の会釈をしてくれた。
案内された受付画面で自分達に関する項目の《入国申請、攻略組合申請込》を選択する。
発券された紙の番号が呼ばれるまで待ち各々が順番に受付をする。 最初は俺だった。
「アレイス王国へようこそ、入国許可書はお持ちですか?」
ダリオス国中央区で貰った許可書を渡す。
「お預かり致します、お名前がレックス・レヴェル・ストゥルトゥス様ですね。 ご入国の目的が資金調達ですね、具体的にどのような形で資金の調達をなされるおつもりですか?」
「攻略です」
「攻略ですね、かしこまりました。 そうしましたら攻略者情報を確認致しますので暫くお待ちください」
机の下を指で操作しながら何かを調べているようだった。
「お待たせ致しました。 レックス様、申し訳ありませんがレベル1となっておりまして、現在もお変わりは無いでしょうか?」
「はい、変わらずレベル1です。 ただ仲間の2人が多分高レベルだと思います」
「低レベルの攻略者が1人でもいると、攻略パーティーの見直しの為に役所の方から攻略者補助団体の方に申請しなくてはならないんです。 そうしないと攻略に挑む事ができないんですね、ただ手数料として100リブラ頂きますがそれでもよろしければ申請書類をお渡し致します」
「それって例えばレベル100以上の攻略者が仲間に居てもですか?」
「おっしゃる通りでございます。 御仲間に高レベルが居たとしても低レベルの方をこき使う可能性があるため攻略者補助団体に申請しなければならない法律がございますので」
攻略自体ができなければここに来た意味もなかった為渋々申請書を貰う。
「攻略者補助団体の説明をさせていただきます。 攻略者補助団体とは、低レベル高レベルを問わず申請しますと補助団体に加入したレベル100以上の方が攻略に同行します。 基本的な戦闘は攻略者が行いますが、危険と判断された場合や援護などをしてくれます。 料金は基本、どんな依頼だとしても一人あたり全体の2割です。 荷物持ち等の超過した依頼は本人によりますが、割増料金が発生しますのでご注意ください。 お書きいただきましたら御手数ですが再度発券していただくようお願いします」
必要事項を記入し改めて番号を呼ばれるまで待つ。 その間、レイアとカグラは無事入国審査が通り耳と腕に機械をつけていた。
もちろん二人は攻略者補助団体の申請はしていない。
「へぇ、低レベルはさらにお金を奪われちゃう仕組みなんだ、大変だね」
「まぁ、死なないための保険を国が法律化させた感じな気がするけど」
と言ってもお金が無くては元も子もない。 多分この国は実力国家だから弱いものはずっと弱いままで居るんだろう。
アナウンスで自分の番号が呼ばれ、さっきと同じ受付をしてくれた人だった。 申請書を渡し一通り確認をして貰った。
「申請書ありがとうございます、後程あちらの受付で料金のお支払いがございますのでよろしくお願いします。 改めて攻略者補助団体についてご質問などはありますでしょうか?」
「いえ、大丈夫です」
「ありがとうございます、そうしましたらこの国で使われる決済端末と案内端末についてご説明致します、まずはこちらを効き耳の付け根に、こちらを効き腕の手首につけていただいて、腕の機械に利き腕とは反対の人差し指をそちらの黒い面に押し当ててください」
言われた通り手首と耳の付け根にかけるようにして機械をはめ、手首の機械に指を押し当てると目の前に何も無いはずなのに"Datar Instarll"という英語によく似た文字が浮び上がる。