今、幼馴染の為に仕事を
その日の夜、また違う修行メニューをしたがその修行は過酷だった。
たった一度の修行でわかった。 これは今までの比じゃない程キツい。 本当に最初は木に火をつけるだけの単純な者。
「能力の取得と扱いの難しさは希少性と複雑性に比例するように関係してる、だから最初は木に火をつけるっていう簡単なものから練習していこうか」
昨日の夜レイアが話していた事は、簡単だからって話だったけど冗談じゃない。 自分の能力を見るだけでも大変だったけど、あれは全身の情報を脳がわかる範囲で自分の目のみに映し出したから3日で出来たんだと今ならわかる。 そして身体能力の向上も鍛えているのと合わせて理想に自分を近づけてるからやりやすかったんだ。
でも根っから原理が分からないものは先ず自分の元々持っていたものと仮定しても全くできる気配がない。
「本当に才能ないね、想像力も磨いたのに何をそんなに難しく考えるの?」
さらにレイアの追い討ちと来た。
「そもそも能力を何も持ってない人間は自分の体から思い込むだけで他のものに火は付けられないんだからしょうがないじゃないか」
修行は移動中の動けない夕方と夜だけ行われた。 最も能力の方はからっきしで身体能力はそれなりに戦える程度には鍛えられた。 それでもあの洞窟の時のレイアに勝てるとは思えないけど。
荷馬車で移動してはや4日、やっと城塞都市とも言われるダリオス国中央区に着いた。 今まで二度来ているがその全容は圧巻で高さ20mはくだらない壁。 やはり中央区なだけあって他所から色々な人が来るのだろう。 関門所の前には大行列ができていた。
こういう城壁は初めて見るのかもしれないカグラはとても感動していた。
「凄いね! こーんなに大きくて、街を守ってるんだね!!」
見慣れている訳じゃないがここに来ると、妙に安心感がある。 そして列も進み次は俺たちの番……しまった。 俺やカイン、ローナは身分確認ができるものがあるとして、レイアとカグラは出来ない。一体二人はどうするつもりなんだ? 二人はヒソヒソと何かを話してるようだけど大丈夫なのか。
「次の方、身分証明書の提出を」
最初はレイアからだった。
「申し訳ありません、逃げるように来てしまって身分証明書を持ち忘れてました。 乗っている一人は持ってはいるのですがそれ以外の者は……」
受付の人は書類の用意をしながらレイアに簡単な質問をする。
「それではいくつか質問しますね、あなたの名前は?」
「レイアです」
「下の名前は?」
「すみません、孤児だったので家名はないんです。 そこの子も同じです」
「そうですか、どこから来たんですか?」
「ダナ森の近くの村です。 ただ私は旅人なので正式名称は分かりません」
受付の人の顔は少しづつ疑いの目を向け始める。
「なるほど、この中央区に来た目的は?」
「村を襲撃されてその時深手をおった友人を医療施設に向かわせたくて」
「わかりました、身分証をお持ちの方はそのまま通っていただいて構わないのですが、持っていない方は一度事務所に来てもらいます。 よろしいですか?」
意外にもレイアとカグラはすんなりと事務所に向かっていった。 焦って暴れられても困る。
対して俺の入区審査はすぐ済んだ。 二人の身分もしっかりと説明した上で情報と合っているとのことですぐに入れてもらった上に、医療施設まで案内をしてくれる人まで来てくれた。 俺は馬の操縦が出来ないから助かる。
「最近、中央区に来る人が増えてきたんですよ。 もしかしてその理由ってご存知だったりしますか?」
案内をしてくれる人は受付の人と同じ軍服のような格好をしていた。
「リベリオン兵がダナ森にある周辺の村を次々に襲っていたからだと思います、ただもう私達の村で食い止めたのでもう大丈夫だと思います」
納得するようにその人は頷いてくれた。
「ていうことは、あなたは強いんですね!」
「いや俺は弱いですよ、今事務所に居る二人が強いだけです」
そうこう話しているうちに医療施設に着いた。
二人のために受付で事情を説明し、お医者さんに馬車に来てもらった。
二人の容態はあまり変化はなかったが、長時間ほぼ何もしていなかったことで多少の膿が発生してしまっていた様だ。 すぐさま二人はタンカーに移され中へと運ばれた。
「止血の方法は正確ですね。 医療従事者の方がいらっしゃったのですか?」
「いえ、今事務所に居る一人が止血の応急処置をしていました、因みにお金はどれほど払えばいいんでしょうか」
「そうですね、お二人の容態次第ですが最低でも5万リブラはかかります」
「そんなに今持っていません……」
「退院する少し前にご用意頂ければと思ってます」
レイアとカグラも事務所から開放されたようで遅れて合流した。
「二人は大丈夫だったの?」
レイアは二人を気にかけてくれているようだ。
「さっきちょっと聞こえちゃったんだけど、お金必要なの!? 出すよ!! 村を助けたお礼にっていくらか貰えたの!」
カグラはすぐに荷馬車に戻って袋を取り出す。
確かに大量のリブラは入っていた。
「いくら位なんだ?」
「えっとねー、村長さんは"少ないけど二万"は入ってるって言ってた!」
「ならあとは三万か……」
少し支払いに余裕が出来たとしても三万は必要だった。 それでも一ヶ月の家賃とか諸々を含めた生活費と同じくらいかそれ以上の額だ。
「もし、お金に困っているのであれば、アレイス王国をおすすめするよ、あそこは攻略者ギルドの依頼も支払いも多いからね。 ここから南に向かっていって馬車なら十日かかるけど」
確かに攻略者への援助は手厚いと聞いたことはあった。
「その間に治りますか?」
医師は頷いてくれた。