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イマスクとヒトトキの物語

 僕の名前はイマスク。

 誰にも愛されないデキソコナイです。

 表では笑顔で振るまっているけど、本当はつらいんだ。

 裏でみんなと話していたら、みんな僕から離れていく。

 どうしてなんだろう。

 どうして…どうして…


「どうしたの?」

 一人の少女が路地裏で泣いていた僕に話しかける。

 彼女の名はヒトトキ。

 額に埋め込まれている時計を使うことで人生のうちで一度だけ時を巻き戻すことができる種族の末裔である。

 僕が信頼できる数少ない人間のうちの一人だ。

「生きるのがつらいよ…」

 そうボクが言うとヒトトキは

「大丈夫だよ…私がいるよ…」

 と言って僕の頭をなでてくれる。

 そう言えば、以前は僕が路地裏で泣いていると複数人が集まってきたのに、最近はヒトトキしか来てくれない。

 みんな僕を捨てちゃったのかな…

 やっぱり人間って信用ならないね。

 

 それから、仕事で悲しいことがあった。

 上司に「お前の代わりになる人間なんぞいくらでもいる」と言われた。

 僕はまた路地裏にこもって一人こう言いながら泣いた。

「僕なんて誰からも必要とされていないんだ」

 

「そんなことないよ」

 そう言いながらヒトトキがやってきた。

 まるでいやいや来ているかのような顔で。

 やっぱり君もそうだったんだね。


「どうせ僕のこと好きじゃないんでしょ」

 そう僕が言うと

「そんなことないよ」

 と嫌味そうな表情を崩さずに言った。

「嘘つけ!顔に出ている!本当は僕なんかと話したくないんでしょ!もう知らない!」

 そう言って僕はその場から走り去った。


「なんで、なんで僕は捨てられてばっかりなの…」

 帰り道の橋の上で僕は涙声でそうつぶやいた。

「このまま死んじゃおうかな…」

 そんなこと言いながら僕は家へと帰っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はイマスクのことが大好きだ。

 なのに、なんで彼は私を拒絶するのだろうか…

 「顔に出ている」と彼はいったが、そんなことはない。

 私は彼と話しているだけでも胸が温かくなる。

 もしかしたら路地裏までダッシュできたから、疲れた顔をしていてそれを誤解されたのかもしれない。

 明日誤解を解かないと…
































 翌日、彼は自殺していた。

 誤解を解けぬままになってしまった。


 数日後、彼の葬儀が行われた。

 彼いわく「自分のことを捨てた人」も何人も葬儀に来ていた。

 みんな、ハンカチが足りなくなるくらい泣いていた。

 私もハンカチがお手拭きみたいになるまで涙をながした。


 彼は箱になった。

 そして、両親の手元に抱かれた。

 二人とも悲痛な表情をして泣いていた。

 子に先立たれるほど親として悲しいことはないであろう。

 

 葬儀がひと段落した後、私は彼がよくいた路地裏に行った。

 そこに行けば、彼に会える気がしたのだ。

 でも、彼には会えなかった。

 私は彼がいなくなったことをいやおうなしに実感させられた。

 私は胸が締め付けられた。

 私も死にたくなるくらい悲しくなった。


 私は額の時計を取り出した。

 そして、それを割ることで時間を巻き戻した。













 私は巻き戻す前と同じ位置で路地裏にいた。

 でも、今度はイマスクがいる。

 イマスクは泣いていた。

「大丈夫?」

 そう言うと彼は

「どうせ僕のこと好きじゃないんでしょ!」

 と返してきた。

 どうやら彼と最後に会話したところまで戻ってきたようだ。

 私は穏やかな顔で

「そんなことないよ」

 と言った。

 しかし、彼は

「嘘つけ!顔に出ていなくてもわかるぞ!本当は僕なんかと話したくないんでしょ!もう知らない!」

 と言って駆けだそうとした。

 私は彼の服を引っ張って弾き止めた。


「なんで…どうせそれも見せかけの愛なんでしょ…」

 そう言うイマスクにたいして私は

「違う!そんなことはない」

 と叫んだ。


「私の額を見て」

 そう言って私は額を見せた。

「実はね、時間巻き戻したんだ」

「それがどうかしたの」

そう言って再び逃げようとするイマスクの袖をつかみ、私は真実を告げた。

「私はあなたの葬式を見たんだ」

「え…それって…」

 イマスクが固まる。

 そのまま私は真実を告げることにした。

「私、君が自殺してすごく悲しかったんだ。それで、使ったんだ」

「そんな…なんで僕なんかのために…」


「それはね、君がかけがえのない存在だったから。それ以外の理由なんてないよ」

 そう言うと彼の瞳から涙がこぼれ落ち始めた。

「本当に信じていいよね。僕のこと裏切らないよね!」

「うん。私やみんなは君が思うよりも君のことを愛してくれているよ。だって、君が「自分のことを捨てた人」っておもっていた人が何人も葬儀に来て泣いていたもの。きっと皆だって君のことが好きだよ」

 そう私が言った後、彼はしばらく泣き続けていた。


 彼が涙を拭き始めたころ、私は一つ提案をした。

「これから君に気を付けてほしいことがあるんだ。あまり人を疑わないでね。それと自分に自自信をもってね」

 そう私が言うとかれは

「わかった。なるべく気を付けるよ」

 と言った。


 私たちは2人で路地裏を抜けていった。

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