選択肢
「またここか」
小さく、周りに聞こえないように呟く。手にした紙は……三十七番か。
「三十五番の方」
アナウンスが流れ、呼ばれた人が窓口へ向かうのも『前回』と同じだな。何となく周りを眺める。前回は気付かなかったが、ある程度の間隔を開けて窓口が並んでおり、違う窓口は違う星の管轄、となっているらしく、これまた見たことの無い外見の人が並んでいる。
改めて手を見る。緑の肌、指は六本ずつ。見慣れたと言うよりも、今ではこちらの方が当たり前になっている。
「三十七番の方」
呼ばれて窓口に近づくと「後ろ、十三番の窓口へそのままどうぞ」と言われたのでそちらへ向かう。小窓をコンコンと叩き、開いた窓から受付番号の紙を差し出す。中から「どうぞ」という声が聞こえたので中に入ると、山田さんがいた。
「どうも、お久しぶりですね。斉藤さん、というよりもラスティさん、と呼んだ方がいいですか?」
「今更斉藤も無いですよ。ラスティでお願いします」
「ではラスティさん、どうでした、転生した感想は?」
「んー、そうですね」
改めて人生を振り返る。そうだな――
転生したこの種は実は結構長生きらしく、地球感覚で言うと百五十年くらい生きる。まだ十歳そこそこで日本人移住プロジェクトに参加した俺はそのままそれを生涯の仕事として働き続けた。ちなみに、俺が早くに家を出たせいなのか、弟と言うか妹というか俺の下に三人も生まれたのは、まあアレだ。仲良きことは美しき哉、という奴だ。
山本さん、桜井さんを見送り、その子供、孫達も見送った。俺自身もなんだかんだで結婚し、五人の子供に恵まれた。子供達が成人し、働いて結婚し、子供――つまり孫――が出来る頃、アルバート達を見送った。そして俺の番になったとき、孫やひ孫達が俺の手を握ってお別れの言葉を言うのをほぼ朦朧とした意識の中で聞き、ここへ。
何だよ、すごくいい人生送ったじゃないか。
「充実してましたね。楽しくて、幸せな人生でした」
「それは良かった」
山田さんが一枚の書類をバインダーに挟んで渡してくる。
「転生をした方にアンケートをお願いしていますので、是非ご協力を」
内容は「転生して良かったですか?」「次に転生できるとしたらどんなところに転生したいですか?」という内容だったので、適当に答えておく。
「さて、ラスティさん。これからの話です」
「はい」
「さすがに、天国へ行くことになります」
「ま、そうでしょうね」
「で、選択肢が二つ」
「はい?」
「斉藤達也の姿で行くか、ラスティの姿で行くか」
「ああ、そう言う選択が出来るんですね」
「転生した人限定です」
面白い制度だな、と思う。だが、選べる、というなら俺の選択は――




