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進路相談

 翌日からはまた今まで通りの予定をこなす。午前中は雑談、と言う名の自動翻訳の構築手伝い。午後はサラサ先生による地獄の猛勉強。しかも、なぜか宿題も出る……宿題って家でやる物だよね。そもそも学校でやる勉強を家でやっているのに宿題っておかしいよね。そう思ったのだが、「それはそれ、これはこれ」と言われそうなので言うのはやめておいた。君子危うきに近寄らずだ。

 五日間そんな感じで過ごし一日休み、と言うスケジュールを繰り返す。だが、なかなかひとり会合は許可されない。いろいろな事情もあるんだろうから仕方ないか。でも、普段の会話の中で「食べる物が単調すぎて少し飽きてきた」とか「俺ら地球人のことよりもお前らのことを知りたい」とか入ってくるようになった。食べるものは……なんとも出来ない。現状ではサンプルのコピーが精一杯なので。そして僕らの種については、僕の方が知りたいよ!

 そんな六日間一セットの生活を五回ほど繰り返した頃、部長からある報告があった。

 まずは移住できそうな星の探索。ある程度の環境の惑星が七つ見つかった。これから地上へ探査機を降ろして詳細を調べるそうだ。

 そして、移住用の大型船の捜索。現在までに四隻発見。残る二隻は方角が逆方向になっているらしく、もう少し時間がかかりそう、とのこと。なお、発見した四隻も今のところは遠くから見てるだけ。現時点で接触を試みても、とても受け入れできる状況ではないので。

 そして、地球だが……探査機はまだ太陽系にも到達していないらしい。一応、太陽は映像で確認でき、その周囲を惑星が公転している様子まで観測できたそうなので時間の問題らしいが。


「今のところは見つかった七つの星の調査結果待ち、だな」

「どんな星なの?」

「写真がある、これだ」


 同じような大気を持ち、水や重力などの条件が似ていてもずいぶん見た目は違うんだな。赤い星、青い星、いろいろだ。


「色の違いは主に、生息している生物――主に植物の状況によるものだな。簡単に言えば、植物が多いほど青や緑が多くなる。と言っても、大気の成分や発生した生物の状態によって色々違うから簡単な話じゃ無いけどな」


 ダーツ、意外に詳しいんだな。ちょっと見直した。


「今、ちょっと見直した、という顔をしたな?」


 心が読まれている……だと?!


「さて、ラスティ。残念なお知らせだ」

「何?」

「自動翻訳システムが最終調整に入った」

「おお」

「つまり、お仕事ももうすぐおしまいだ」

「そっか」


 残念だが、最初からそう言う話だったし。でも、この先どうなるかは聞いておきたいし、見届けたかったけど。


「部長の話に補足するとな、移住可能な星が見つかったとしても、大型の宇宙船に乗ってる人を全員運ぶとなると、年単位の時間がかかる」

「うん」

「その間、新しい星での生活も色々フォローが必要だし、一通り移った後も何かと世話を焼かなくちゃならない」

「そうだね」


 そんなに長い間、いくら何でも子供に協力させるなんて事はなかなか難しい話だろう。


「ラスティ、猛勉強しろ」

「え?」


 話が見えてこない。


「新規の惑星の開拓事業になるし、新しい文明との交流も含めてとても大きな、何年どころか何十年もかかるプロジェクトになる」

「それはまあ、想像できてたけど」

「そして、出来れば関わりたい、と思っているだろう?」

「うん、関わりたい」

「自動翻訳システムがあると言っても、精度はまだまだ。スラスラと何の抵抗もなく読み書きしたラスティには敵わない」

「それは……そうかもね」


 「元」日本語ネイティブだからね。


「だが、それだけでプロジェクトに参加させることは出来ない。プロジェクトが本格的に始まる頃には精度も向上しているだろうし、何よりただの子供を参加させるなんて、許可されるわけが無いからな」

「そうだね……」

「だから勉強しろ。プロジェクトに参加してもいい、イヤ参加させるべきだと周りに認めさせるくらいの立場になるために、な」

「えっと……」


 そのプロジェクトとやらはおそらく一年以内に始まるはず。いくら勉強しても間に合わないと思うんだが……


「カールの通っている学校は知ってるな?」

「うん。何となくは」


 入学が決まったときにずっと学校のこと話してたからね。


「あの学校に入るんだ。あそこの学生なら、プロジェクト参加の許可を取ることも一応可能だからな」

「すごい学校なんだね」

「ああ、そうだ。そしてあそこの学生なら部長が適性あり、として推薦したら通る可能性も充分にある。ですよね、部長?」

「確かに可能だが……この子の年齢だと間に合わないと思うが……プロジェクトは来年早々に開始になると思うぞ」


 ですよねー、と思っていたら、思わぬ所からの意見が出てきた。今まで静かに話を聞いていたサラサだ。


「ギリギリ間に合うでしょ」

「え?」

「さすがサラサ、頼んで正解」

「ん、任せて」


 ダーツとサラサの会話の内容がつかめない。


「そうと決まれば、時間が無い。ラスティ、勉強開始」

「え?え?」

「明日までに今の学校の勉強、終わらせるからね」

「はい?」


 サラサの笑顔が怖い。

 状況が全然つかめない、と言う顔をダーツに向ける。


「飛び級だ」

「飛び級?」

「そう。学力が充分あって、学年相当の範囲が修了していれば飛び級が受けられる。そして、学校を一気に飛び越して、検定試験を受ければ!」

「受ければ?」

「来年からはカールと同級生だ」

「無理でしょ?!」


 だいたい、明日までに今の学校の勉強を終わらせるって……あと四年分くらいあるんですが。


「こんなこともあろうかと思って、どんどん進めておいて正解だったかな」

「え?」

「今やってるの、三年進んでるからね」

「ええええ?!」


 気付かなかった。目一杯詰め込まれてる感じはしたけど、必死だったから。


「さ、時間が惜しいから、どんどん行くよ~」


 首根っこを捕まれてズルズルと引きずられていく。「がんばれよ~」とのん気に見送るダーツ。サラサの変貌ぶりにちょっと引き気味の部長。カオスだ。


 後で知ったのだが、サラサが教師をしていたのは国内でもトップクラスの学校だったとのこと。そして今回の話を進める中で、いずれ飛び級が必要になるだろうからと、密かに教育カリキュラムを組み直して進めていたと言う。そして、ある程度予想していたらしいが、ちゃんと着いてきていたのでどんどんペースを上げていた、と言うことらしい。


 とりあえずステーションには今年いっぱいまでいられるので、その間は仕事の手伝いと猛勉強と言うことになった。年末頃になると、勉強も大分佳境に入り、いわゆる微分積分とか、原子が陽子と電子で出来ているとか、日本の高校レベルの内容がずらずらと出てくるようになった。幸い、前世ではそこそこ勉強が出来ていたので、思い出しながら何とか進めていく。日本の教育、マジすごいです。


 検定試験当日、ダーツも一緒に地上に降りて、四人の親に連れられて試験会場へ。過去にこの年齢で検定試験を受けた者もいたらしいが、合格した者はいないらしい。四人に見送られて試験会場へ。十名ほどが着席しており、かなり注目を集めながら席に着いた。試験開始まではまだ時間があるが、他の受験者のように参考書――まあ、これもタブレットだが――を見たりしない。サラサ曰く「逆に不安になるからやめた方がいい」と。


やがて試験官が入ってきて、試験の開始を告げた。


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