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変わりゆく日常

「お願いっ!」

夕暮れに染まる図書室に声が響いた。

真っ白な肌をした小柄な先輩が両手を合わせて頭を下げている。


「えっと、私も忙しいので」

「名前だけ!名前だけ貸してくれたらいいから!」


何度目かわからない断りの文句。

だが先輩は折れない。


この学校に二学期までに部員が五人に満たない部活を廃部にする明確で残酷なルールがある。


先輩が所属するのはオカルト研究会という怪しげなもので、部員が集まらず。

今は先輩と幽霊部員が三人だけらしい。


「そもそもなんで私なんですか?」

「なんか座敷わらしっぽいじゃん!」

「……帰ります」

「待って待って!冗談だから帰らないでー!帰るならサインしてからにしてー!」


先輩の隣を抜けようとすると背後から抱きつかれ、止められる。


「他をあたってください。一年なら私じゃなくてもたくさんいるでしょう?」

「これってさ、なんか痴話喧嘩の最中みたいだよね」

「……さよなら」

「あー、嘘だから!!嘘だからぁ!!お願い!部活入ってなくて入ってくれそうな知り合い、牡丹ちゃんしかいないの!」


私は普段、優と一緒に帰宅をしている。

優がバレー部に入部したから必然的に私は図書室や教室で勉強や読書をして時間をつぶすことになる。


そんななかで少しずつ話すようになったのが二年生の土御門(つちみかど)冷泉(れいせん)先輩だ。


「この学校、文化部同士の掛け持ちはできないから友だちはみんな無理だし、一年にいたってはみんなキャピキャピで声かけるとゴミみたいな目で見られそう」

「ネガティブですね……はぁ、名前だけですよ?」

別に名前だけならいい。入部しても読書や勉強ついでに先輩と駄弁るような何も変わらない日常が続くだけだ。


「ほんと?」

少し不安げに首を傾げる先輩に、もう一度頷く。

するとその表情が見る見る明るくなった。


「ありがとう!こ、これ入部用紙だから!」

「はい。明日持ってきますね」

「うん!わぁ、嬉しいうれしいなぁ。牡丹ちゃんが一緒に部活してくれるんだ……」

「名前だけですよ?」

「でも、それでも嬉しいじゃん!」

「そんなもんですか?」

「うん!あ、そうだ!近くにパフェが美味しいカフェがあるんだけど今から一緒にいかない?」

「カフェですか……うーん、分かりました。行きましょう」


スマホを取り出して、優に連絡を入れる。


『今日は先輩と一緒に帰る』

スタンプと一緒に打ち込むと、携帯を閉じる。


「じゃあ行きましょうか」

「うん!!」


まるでスキップをするような足取りでリュックを揺らし歩く先輩の姿は子どものようで少し笑ってしまう。

先輩がこちらを見て一瞬固まっていたがそのときどんな表情をしていたのかは夕焼けに照らされた顔ではわからなかった。





___近衛 牡丹は何も知らない。


「なにこれ」

更衣室に冷たい声が落ちる。

大好きな親友からやってきた、親友らしい簡潔な文に少女の手が震える。


「先輩って誰……?」

少女のなかに宿った漠然とした不安の芽はまだ小さい。

アオハルみがつよい

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