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爆縮と体温の機知(4)

何も無い日の特別

先に爪先を入れて

ぺたぺたと貼り付いていく

脹脛が少しだけ締まって

弧には色が付き

滑らかになったことが分かる

太ももの途中に

横線が太く入っていた

最後に無理矢理に入れたような

力づくの行動の後

ぱちりと鳴ったから

恥ずかしそうに舌を出して見せた

「古いね」と言うと

少しだけ怒った態度を取る

だけど、それは直ぐに消えて

クローゼットから

服を持って来た


右手の煙草が

ベランダで無くなった頃

服の準備は整っていた

顔の作業に入る雰囲気が

長い髪をあげて

ヘアゴムで纏めた時に伝わる

「普通は顔からじゃないか」と言うと

「今日は服から」と返された

その顔は

綿毛に笑顔を近づけたように

明るくなっている

服を褒めたのが良かったのだろう

見たことが無かったから

なんて理由が大きいが

これは言わない方が良い


三分で外行きの服を着ると

ベランダで

もう一本、煙草を吸う

スマートフォンの充電と

財布の位置

ハンカチを確認すると

部屋の方を向いて

鍵の位置をチェックした

鏡との悪戦苦闘が終わり

髪のセットをしに

洗面台へと行った姿が見える

スマートフォンで時間を見た

10分くらいで出れるだろうか

ただ、その辺に晩ご飯を食べに行くだけ

その中に何かを入れておきたい

惜しみなく出される頑張りを

分かっていない方が

きっと、おかしいのだ


玄関の鍵を閉めて

一回、開かないことを確認すると

アパートの敷地を抜けて歩く

右側ばかりに来るのだが

人によって違うのだろう

すれ違う人を見る

どちら側を歩きたいかは

取るに足りない疑問か

「あっさり系でがっつりが良い」と言われた

それは、いつもの定食屋で良いのだろうか

左手でスマートフォンを触り

電話帳から寿司屋に電話した

空いているようだった

福沢諭吉が笑っている

今の内に使っておこう

別に使えなくなる訳じゃないけれど


寿司屋との会話が終わると

「良いの?良いの?」が

顎の下で繰り返されている

「たまにはね」と言うと

「毎日、たまにが良い」と返してくる

意味が飛んでいった

ちょっとだけ溜息を出しながら

寿司屋へと歩いた

毎日、頑張れるのですか、と思ったが

それは言わない方が良い

言葉は返って来るからだ

浮かれている右側を

飛び過ぎないように静止しながら

その中に何かを入れておくことが

一緒に出来たか、と考えていた




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