0086:自白
唐突に始まった漫才のような実験の後、そこで生まれた劇物。
それを、一切の躊躇なく口に流し込まれたらどうなるか?
「…!……!!……!」
「辛いかぁい?」
…ま、確実に悶絶するわな。
「お兄さんは君達に、もっと辛い目にあわされかけたんだよぉ?」
「大泉くぅんじゃないか」
「パイ生地は何処だ」
一階の冷蔵庫に。
てかアレ、パイ生地じゃなくてピザ生地だったんだってね。
…じゃなくて。
一通り猫とあやめの漫才を終え、視線を前に移す。
目の前には、先程まで一切口を開かずに無表情を貫いていた刺客。
それでいて、拘束されなすがままに口に劇物を流し込まれた張本人。
それが今はどうだ?
劇物のせいでただただ悶絶し、むせ、苦しそうにしている。
とは言え苦痛は、魔術陣で多少は軽減されるだろう。
実際に飲み込んだ後、魔術陣が薄く発光している。
だが、本命は舌だ。
10~350000スコヴィル値という半端ない辛さを持つハバネロ。
その辛さを舌にダイレクトに伝えるように、辛さ成分であるカプサイシンを抽出。
挙句、さらにコショウでブーストをかけている物。
むせたり、喉の痛みは未だしも、舌が持たん。
「ほぅら辛かろう? 氷入りの冷水だよぉ」
そう言って、辛味を流すのではなく拡散させ強化するべく、今度は水を放りこんだ。
今度は、魔術陣は発光しない。
次いで、悶絶。
見ていて、非常に、面白いです。
一昔前の体を張ったバラエティを思い出すね。
…とは言え、一通り悶絶した彼に、連続して劇物を流す事はしない。
「とりあえず抽出ついでに5時間ほど休憩しましょうか」
「おっやさしい」
やさしい?いやいや。
逆だよ。
「舌の麻痺を消すには、最大でも5時間待たないといけないんだよ」
「うっわー…」
そう、暫く置いておかないと、辛さに「馴れ」てしまい、あまり感じなくなる。
所謂「味の麻痺」がおきてしまう。
だから暫く置いておく訳だ。
「まぁその間に何もしないわけではありませんが!」
と言って、タタタッと近くのアルバート氏の実験室に向かう。
リビングではなく二階の空き部屋…というか、使ってない客間からすぐ近く。
それを持って、再度戻ってくる。
いやぁ調度品として購入しておいてよかったね。
「はいソックスレー抽出器」
「マジモンかよ」
「最後まで動画リスペクトじゃ」
そう言って準備を続ける。
その間に、ようやく意識がこちらに向くようになった刺客君に、わかるように説明しながら。
「コチラの抽出機は、さっき作った劇物から無駄な物を分離し、濃度を高める物なんだ。
君に判りやすく言うなら…」
そう一区切りしながら、笑みを浮かべる。
覆面、というより半分の仮面なのもあり、口の部分の笑みだけしっかりと見せ付けるように。
「さっきの、何十倍もの、劇物が出来るんだよぉ?」
「えげつなっ」
「仮面なのもあって笑い方がウォーズマンのソレ」
なんちゅう言われよう。
…とは言え、意味を理解したのか刺客は青い顔になる。
そらさっきの何十倍もの物を目の前で作られ、しかもまたぶち込む事を宣言してるんだ。
顔も青くなろうて。
一通り準備を終え、抽出作業を開始。
対してソレを終えた俺たちは、そのままここに居続けても仕方ないので。
「じゃまた後で、解散」
「うーっす」
「お疲れーっす」
「ノリが軽い!」
あやめのツッコミを受けつつ、その場は解散する。
対する刺客は、何か言いたそうにオゴオゴ声を上げた。
何か話したいのかしらぁん?
「せつめし したそうに こちらをみている!」
「せつめいさせますか?」
ニア はい
いいえ
…という事で、とりあえずそのまま話を聞く。
口枷?外しませんが。
「さぁ話し辛かろうがキリキリ話せぇい」
「こぉー…い、依頼ぬひは、学園の、賢者の一人だ……!」
「そりゃわかっとる、誰だと聞いとるんじゃ」
「依頼してきたのは…急進派の…ライオ!」
犯人は、急進派に属する人間、炎系魔術の権威であるライオ氏。
そう、苦しそうに語る。
「判定は」
「ダウト」
「はい再投入ー」
「う わ ぁ」
「……ッッ!!っ!ッッ!!!!」
が、無視して視界外で作らせた劇物を再度投入する。
そんな話信用する訳ないでしょーが。
…拷問前にトールが言っていた。
彼の装備と刺青の数、腕前等を考えれば、そう簡単に吐く筈がない。
…金を握らせるのも手かと思ったけども、逆にプロは金では靡かないそうな。
寧ろ、この業界…と言うよりフリーの隠密職は信用が命。
簡単に情報を吐くようなら、コレだけの腕と装備はまず整えられない。
逆説的に言えば、コレだけの装備と腕がある以上、簡単に情報を吐く訳がない、という事だそうだ。
つまりは嘘。
依頼主が仕掛けたかく乱情報か、嘘の告白か。
…とは言え、ただの暗殺など値段的には意外と安い。
人の命など簡単に奪えるのが向こうの世界。
だが、こんな痛みや苦痛以外のきっつい拷問。
はっきり言って金に見合う仕事でないのは明白である。
「何度かやれば、いやでも吐くさ…
という事で高濃度の再抽出作業を眺めながらじっくり考え直していってね☆」
「吐くッ!本当の事を言う!判ったから!」
そう、彼はぐしゃぐしゃに顔を歪めながら叫ぶ。
本当に辛いのか、脂汗所か半べそまでかいて。
「俺にっ…俺に依頼してきたのは……!」
衝撃の告白はCMの後!




