表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
扉開けたら即異世界 -ぶらり異世界冒険記-  作者: 神風 翼
第04章:魔術学園編
83/217

0083:一撃


間に合った。

ただ純粋に、彼はそう思わざる終えなかった。


一瞬の攻防。

俊足の縮地。

それに対する、瞬時の判断。


その行動があったからこそ、この結果を迎えた。


「親父ィ!」


トールは叫んだ。

自らの父を。


そこには、ナイフを突きつけられ、背にまで貫通した刃。



…だが、その刃に血は、無い(・ ・)


一瞬の攻防により、姿勢を崩した刺客の凶刃は、彼の着ていたゆったりとした余裕のあるローブを付き貫いた。

だが、その大きな体積に突き刺さった刃は、彼の肉体に触れる事無く貫通した。



…それは数秒前、刺客がアルバートへと突撃する寸前の事である。


この日、トールは別にサボっていた訳ではなかった。

彼は、外から中にいるアルバートを監視し、外部から護衛を続けていたのだ。


そんな折、突如現れた刺客。

先程とは違う姿の相手を見て、すわ敵襲かと身構えたのだ。


この時、最悪の事態を想定して幾つかの行動を行うべく身構える。

同時に彼の脳裏では幾つかの選択肢が上がり、その中の一つであった「見越し攻撃」を迷わず選んでいた。

その選択と同時に、刺客は駆ける。


瞬間、投擲。


鉄芯と呼ばれる金属杭の攻撃は、命中する事は無かった。

しかし、刺客の足元…正確には、ヤツの進路上に障害物として投擲した。


その数、3本。

カカカッという音は敵の足音ではなく、鉄芯の突き刺さった音。


…そう、トールの寸前の投擲により、刺客の動きは制限された。

それにより姿勢が崩れ、マトモな一刺しとはならなかった。



そう、トールは自らの父への凶刃を防ぐのに、間に合ったのだ。



瞬時に、外から中へと飛び込み、アルバートと刺客の間へと滑り込む。

相手も、それを見てか素早く距離をとった。


もはやこの状態なら、アルバートに危機は訪れない。

腰から抜いた二対のダガーを手に、トールは姿勢を低くした。


次の瞬間、ダッと彼は駆け出した。

先程刺客がアルバートに近づいたように、彼もまた、同じように近づいた。


構えたまま、人を超える動体視力を持つ獣人、その一撃が振るわれた。

しかし、キィンと甲高い音が上がると共に、火花が散った。


それに臆する事無く、素早く連撃を加え、飛び上がるように距離をとる。

…だが、相手にはこの攻撃によってできた傷は、一切見当たらない。

二度、三度と振り切った刃は、全て刺客の手にあるナイフでもって防がれたのだろう。


相手はゆっくりとナイフを構え、笑みを浮かべた。


ゴクリ、と彼は生唾を飲み込む。

亜人ではなく純粋な人間でありながら、獣人の…しかも訓練された隠密職シーフの攻撃を防ぎきったのだ。


――間違いなく、只者ではない。


じり、じり、と間合いを詰め、また離す。

時折、アルバートが杖を構えるが、トールは彼に攻撃をさせない。


攻撃を行うなど愚の骨頂。

読み合いを制しなければ、間違いなく二人とも死ぬ。

そう、相手の力量から分かったのだろう。


相手も緊張しているのか、汗が頬をつたる。


5分か、10分か。

もはやけん制以上の進展も無いまま、互いににらみ合いが続く。


そんな時だった。


ポンと刺客の肩に手が置かれる。

戦いの最中に、背後に気を使っていなかったであろう敵は素早く振り向き……


「受けとんなッ!!」


強烈な一撃を、顔面で受け止める事になった。




 ~~~




想定外だったわ。

まさか俺ではなく、アルバート氏が狙われるとは思っても見なかった。


結局、トールの護衛があったからよかった。

だがもし、下手をしてたら殺されてたんじゃないかと思うと、正直ゾッとする。


因みに、エールと追っていた刺客には逃げられた。

丁度授業終わりの生徒達の波に紛れ込まれ、結果逃してしまった。


その後は深追いする訳にも行かず、アルバート氏の書斎へ。

だが氏がいなかったのもあり、何かがおかしいと捜索。


その捜索でもって、トールと刺客との読みあいに遭遇できた。


…で、その刺客に対して、エールの奇襲が成功したのが今。


思いっきり振り向いた顔面に右ストレート。

続いて流れるように左アッパーが顎に炸裂した。


しかも当然素手で、である。

相手が哀れ過ぎて言葉が出んわ。


「色々調べたからね、えぐりこむように打つべし!…だっけ?」

「ガチで顔面にえぐりこんでて草も生えない」


打ち込まれた相手も、振り向いた際の頬、次いで顔面の顎部分…正中線にぶち込まれた訳で……

あーあ、気絶してやんの。


T.K.Oテクニカルノックアウト!」


言ってる、場合か。


とりあえず無事だったアルバート氏の元に駆けつける。

幸い怪我も無く、死に至る被害も覆ってない。


色々心配かけた身である。

流石にホッと胸をなでおろした。


「ご迷惑をおかけして…」

「いや…何とか無事でよかったわい」


互いに安堵する中、背後で気絶した刺客を縛り上げている。

首は止めろ首は。


「んで、コイツどーすんの?」

「…本来なら学園長か守衛送りなんだけども……」

「誰が連れて行くかぁ…!」


コレだよ。


トールがブチ切れ状態で連れてくに連れてけん。

とりあえず実家に持っていって、情報吐かせる方針で決まった。


…まぁ、尋問も自分達の手でやったほうが確実ね、と理論武装して納得しておく。


「親父に手ェ出したんだ…それなりの報いは受けてもらわんとなぁ……」


出てる出てる。

暗黒面出ちゃってる、仕舞え。


肘を左脇から離さない心構えでやや内側を狙い、えぐり込むようにして打つべし!

打つべし!

打つべし!!

打つべし!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ