0005:金剛石の錬金術師
あの自体から数日後。
あやめと俺とで揃って宝石作りに勤しんだ。
…とは言っても作るのは基本的に俺。
彼女には素材購入を手伝ってもらい、とりあえずダイヤの作成をしていく。
まずネットやホームセンター等で物色し、素材となる物…まぁ普通に炭を購入。
前回通り、それをまとめて一点に集中圧縮、触れてないとはいえ加熱がアツゥイ!
…まぁ、自然界でウン万気圧に圧縮され1000~2000度が発生する…らしいし。
熱くて当たり前の話。
まぁそうやって適当にできた物は…まぁそんな綺麗では無い。
一応結晶だけども、カットされてねぇただの四角いやーつ……
調べてみると、一切加工されて無いと一気に安くなる。
それこそ無加工の原石に至っては5センチ位でも万円程度。
大体桁が1つ下がるレベル。
コレじゃダメだ。
どうにかせんといかんと、そんな時天啓舞い降りる。
カットの形で圧縮すればよくね?
早速試してみるとアラ素敵、標準的で綺麗なブリリアント・カットのダイヤモンドが!
表面の研磨もあまり必要ない…というか魔術で完璧な平坦部分で押し付けた関係上、ナノレベルで凹凸が発生しない訳で……。
水洗いやら拭き取りやら、後はめがね拭き等で十分綺麗に。
サイズも1センチ程のそれなりにずっしり、正にパーフェクト。
人工所か魔術加工ダイヤモンドの完成である。
しかも10粒もだ!
…魔法無双と言うよりただの錬金術だコレ。
~~~
とりあえず完成したダイヤを宝石商に売りに行く。
都心はこういう時に場所があるから助かる。
対してあやめは職場の挨拶に。
まぁホワイトな企業だったし、一月の間行方不明だった事に対する当たりも酷くはなかろうて。
理由も…リアルに誘拐されて先日帰ってきたって、間違いじゃないし。
先日メール連絡して、実際に姿見せて安心させたいなんて、いい仕事仲間だよ…!
対して俺、行方不明後に大量の電話とメール。
一日所か半日あった連絡以後、連絡無し。
当然警察案件にすらなってない始末。
どうしてくれようか……
…まぁそれはそれとして。
とりあえず宝飾品店に入店し、一応買取してるか確認。
対応してくれた店員さんに、指輪とかじゃなくて宝石単体だって説明したが、買取してくれるとの事。
そのまま買い取り窓口に案内されて行く。
まぁ鑑定資格持ちのお兄さんがお相手ですね。
宝石単体…ダイヤモンドの裸石との事ですが、何てにこやかに対応してもらう。
そうそうこういう笑顔でいいんだよこういう笑顔で…
手元の小物入れから、とりあえず一つ取り出して手渡す。
途端に顔色が変わった。
検分してくれる最中、コレはどういったもので出来がよく、とか非常に大きい粒で、とか不純物も無く、とか説明してくれてる。
まぁ炭素から不純物を、「魔術で確実に」取って直に作ったし、そら出来いいわ。
でもね?
ゴメン、カラットとかそういうの全然わからんの。
が、この対応的にそれなりに値は張りそう。
まぁ二桁万円行けばいいかしら?
「…いや、非常に物がいいですね。
こちらの買取でよろしいでしょうか?」
「まぁよろしいんですけど……」
まだ似たのが計10個ほどあるのよ。
小物入れから似たような大きさの物をトレーに放出。
最早お兄さん、真顔である。
そらそうか、こんな冴えないリーマン崩れたる俺が、こんな大層なもんゴロゴロ持ってる訳無いと。
彼は一旦席をはずして、もっと偉い人を呼んでくる。
そら個人判断は難しいか。
次に出てきたのはちょっと小太りなおじさん店長…支店長? まぁそんな感じに偉い人。
検分していたお兄さんが耳打ちするように出来のよさを説明し、しかもトレー上に計10個ある。
警戒されて当然よね。
「…失礼します。
こちらのダイヤは…どのように入手いたしたものでしょうか?」
あ、はい魔術で自力で作りました!
なんて言えるかヴォケ。
「あー…実家の古い箪笥に…なんか隠すように仕舞われてて……
たぶん爺さんか…曾爺さんかのヘソクリなんじゃないかなー…と……」
「ほう、ご実家から出た物と……」
「満州か日露か…もっと前の物かも……」
「そうですか……
…いいでしょう、こちら10点のダイヤモンド、当店で買取させていただきます」
お、よっしゃ。
その後、査定に少々お時間を取らせていただいてもよろしいでしょうか、と物を裏に持っていかれた。
…ま、もし盗品なら、どんな形状とかどんな物かは通達されるだろうし。
第一現代でこんなでけぇダイヤの裸石が転がってる訳がないか。
でも自分の警備もあるのかもしれないけど、警備員さん呼ぶのどうなのよ。
…暫くして査定表を持ってきた。
査定してた兄さんではなく、店長のおじさんが。
「本日は当店にこれほどの品を持ち込んでいただき、真にありがとうございます」
そこまで言って店長のおじさんはにっこりと笑みを浮かべる。
盗品では無いと理解してくれましたか。
「いやぁ、ここまで大きなダイヤは近年市場にすら流れなくてですね。
買い取り価格も当店最高額となってしまいまして……」
そりゃそうだ。
「こちらとしても現金でのお支払いをしたい所なのですが…額が額な物ですから……」
そう言って懐から紙を一枚。
小切手ですねわかります。
「査定額としては、一粒コレぐらいで、〆て……」
えーっと…一、十、百、千、万、十万、百万…ッ!?
……マジですか?
「本社とも相談の上、支払う事が確定しましたので、このような価格に…」
…こら笑いと震えが止まりませんわ。
「せ…せんせい?」
『あ、終わった? こっちも挨拶回り終わったよ』
「ああああのですね…額が額なのでむむ、迎えにですね」
『落ち着け』