0003:獅子身中の異世界人
さて、舞踏会から+7日の異世界転移から3週間。
魔法の訓練もだいぶ進み、理外系もほぼほぼマスターしつつある。
念話等から物体への干渉。
干渉から人体への付与。
付与から空間への接続……
まぁ最終的に上位魔法の転移魔法さえ覚えれば完璧との事。
空間を無理矢理繋いで移動するんだからそら上位魔法だわな。
…とはいえ想像力次第で十分カバーできるとの事。
アルバート氏は魔術都市で賢者を拝命した一魔道士だが、魔法を後世に伝える教員でもある。
いやーそら教えるのがうまい訳だ、さすが賢者。
「そんなの褒め言葉にならんぞ」
「えっ」
「賢者なんてのはな、所詮理論やらをたくさん覚えてるだけじゃて。
言わば頭でっかち、なんていう評価みたいなもんじゃい」
「で、でも賢者なんて偉い地位を…」
「立ち居地は下の下じゃわぃ」
えぇ…
…曰く上に大賢者やら大魔道士やらが控えてるそうで……
教員的にはただの教師レベルですかそうですか。
閑話休題
現状はだいぶ変わりつつありながら、非常にマズイ状態になりつつある。
ハニートラップによる篭絡が無理と判断されたのか、美女軍団はスパッと来なくなった。
次はショタかと警戒したが…まぁ警戒してるとバレたんだろ。
それに伴い、どうにもあやめの部屋周りの警戒が強化され会えなくなりました。
嫌ーな予感が的中ですわ。
それこそ言外に「人質になってるから言うこと聞けよ」と首輪をつけられました。
そのうち実戦投入ですかね。
アルバート氏曰く、人員の動きから亜人族への攻勢に利用されるかもしれないと。
亜人て言っても、精々が耳と尾のあるだけで人間と変わらんでしょ?
人をヤった事も…当然ヤる気もないのに、無理矢理にでも軍に入れて使う気とか正気を疑うレベル。
まぁハニトラに靡かなかった分、仕方ないから彼女を人質として使うかと、そういった理由かね。
「先生!転移魔法がうまく出来ません!」
「騒いどらんでサッサと集中せんかい」
「うっす」
~~~
「という訳で」
「どういう訳だ」
そんなこんなで彼女の軟禁されてる個室デス。
…どうやって来たって?
転移魔法ってあるじゃろ?
アレもう習得済みなの。
俺のいる部屋って外に兵隊いるだけなのよね。
この世界じゃ監視カメラなんてないし、室内調べるには入るしかないの。
だから簡易の短距離転移で、アルバート氏に直接来ていただき時間外勤務していただきました。
このお礼はいずれ精神的にお返しするという事で…
「まぁそんな訳で」
「どういう訳だ」
話を進めさせろ。
とりあえず彼女の状況を聞けば、どうにも諸事情とやらで外出禁止が出されたそうで。
当然自分とも接触できず、物理的な意思疎通、連絡手段が断たれたワケだ。
まぁ生活水準は保たれてるようで安心ではあるが。
「コレって確実に…私が人質だよね?」
「せやな」
「…ゴメンね……」
どうにも精神的に落ち込んでる様子。
顔伏せよったので鼻でも摘んでやる。
「ふみゅっ」
変な声上げた、おもしれぇ。
…ま、しゃーないやん?
元々そういう予定だったんだろうし。
戦線に出されるかも知れんけど、そん時はそん時だし。
「てかよぉく考えろや」
「…?」
「接触禁止で何で俺がここにおんねん」
「あっ」
お前…まぁ普通にドア開けるように入ってきたけどさ。
アレ一応転移魔法だからね?
イメージしやすかったのが「Dえモン」の「どこからでもドア」なワケで。
それに合わせて相手側のドアを開けるように出てきたからなんだけどもね。
まぁ魔法陣でテレポートでもよかったんだけど…さ?
SF考察とかである、分解して反対側で再構成される的な…言わばコピペされるのが何か怖くてな。
物理的に高速ジャンプするのは室内だとアカンし。
結局別の場所に扉を作ってその空間を繋げる形になりました!
魔法適性高い体スゲェ!
「ま、とりあえず逃げようと思えば逃げられる訳で」
「…はぁーっ……」
「ご心配をおかけした様で」
「ホントだよ」
ゴメンね。
「…じゃあ直にでも逃げる?」
「いんにゃ?」
「…? じゃあどうするのさ」
こんな事してくれたお姫様に、ちょーーーっとばかしご挨拶しようと思ってね?
「わっるい顔してる」
「なら止める?」
「いいぞもっとやれ」
さっすが~、あやめ様は話がわかるッ!
~~~
それからどうした色んな下準備。
色々動いて終わらせまして、後は期をうかがってた訳なんですが。
「お呼びとの事で?」
「えぇ」
ニッコリ。
うっわー い つ も の。
顔に出さなかった俺偉い。
唐突にお姫様に呼ばれた訳で、やってきました城のテラス。
城下町も見渡せる綺麗な場所なんだけどね。
相手がアレなのが何とも。
「…さて、この再ですので隠し事は無しに致しましょうか」
「助かりますな」
「…我が軍に手を貸しなさい」
ですよね。
「嫌と言ったら?」
「本当に言えますか?」
「言ったらどうします?」
「貴方の大事な彼女がどうなるとお思い?」
逆に脅迫で返されちまった、ヤッベー笑顔。
こりゃ間違いなく確信犯ですわ。
「…ここは卑怯者とか罵る場面ですかね?」
「あら、随分と余裕ですわね?」
「そりゃね」
もう準備に準備重ねちゃいましたし。
次の瞬間、ドタドタという音と共にテラスへと人が乗り込んでくる。
予想通り大量の兵士たち。
お姫様もそのつもりでドヤッてた訳なんですが…
「……は?」
次の瞬間、彼等は槍を俺と彼女に向けて包囲。
その兵士、外見はこの国の一般兵ですけど「獣人」の兵士なんだよね。
「なッ何故亜人共が…衛兵!近衛!」
「無理ですがな、もう包囲されてますし」
「あっ貴方も何故そう潔く…!」
混乱する姫を前に、自分は当然手を上げて降伏の意思を示す。
そらこうなったら勝てんわ。
…普通ならね。
自分の後ろからは他の国の兵士や偉い人(こちらは人族の方々)がやってくる。
騎士階級の方々なのか、装飾がマブしいっすね!
「そんな…なんで亜人と……!」
「我々共通の敵を倒すべく、手を組んだまでの事です」
堂々と将軍と思われるえらい人が語る。
まぁこの国に襲われてた3国が同盟組んだだけですし。
次の瞬間、後ろからは保護されたあやめの姿。
それに合わせて手を下ろすと、包囲も解かれた。
ま、予定通りな訳なんだが、あー怖かった ミ☆
「あっ…あなっ…ッ!!」
混乱しすぎじゃないですか姫様、めっちゃおこじゃないか。
ただ自分が獅子身中の虫だっただけじゃないですか。
転移魔法を習得後、襲われている3国の重要箇所をアルバート氏の協力の下、写し鏡で目視。
その後転移扉で繋いだ後、挨拶に行って、話しつけて、薩長同盟張りに頑張ったの、俺。
後は簡単、城内部の至る所に転移扉を配置。
各方面から内部に大規模な部隊を進駐させた。
そこからはもう楽チン、元々いた兵士は徐々に外部の兵士に成り代わってった。
こうなれば前線がどうなろうと首都陥落でチェックメイト。
ね、簡単でしょ?
「…という訳ですが何か」
「……ッ!………ッッ!!」
横にいるあやめの腰に手をやり、ドヤる。
せめて言葉にしてください姫様。
「貴女は我々への宣戦布告、大規模な戦死傷病者を生み出した。
そのツケを、今が払う時だ……大人しく降伏せよ」
将軍のその言葉に、怒りでフルフルと震えていた姫様はこちらをにらみ付ける。
まぁでしょうね、利用するつもりの相手にいいように手玉に取られた訳だし。
「…貴方…元の世界に返りたくはありません?」
「…?」
「今私を助ければ、帰還するすべを教えて差し上げるわ……
逆に私を見捨てれば……帰還する術は無くなりますわよ!」
脅されちった、キャーコワーイ。
超余裕