0027:正体見たり
悠馬はシャルリアさんを病院に連れて行くと、バスで出かけた。
対する私は、態々父さんから車を借りて数十分。
到着したのは主要幹線道路脇にある、服の専門店。
手頃で高品質な、赤い四角のシンプルなロゴのあの店である。
「この店丸々…服だけの店なんか?」
「でかー…」
連れは異世界組みの野郎二人、タクトとドラン。
「以前で慣れたとは思っていましたが…いやはや……」
「おぉー…」
ついでにテクスとイーリスも一緒に。
なお動物なので、大福はお留守番。
すまんな。
とりあえず店内に入って服を物色する。
全員に店のルールを説明しながら、自分の服を選んでいってもらう。
一時的だろうと一緒の家に暮らすことになった仲なんだし、それなりの格好をしてもらわんと。
これ位はね。
「でもお金は…」
「まだ余裕があるから遠慮すな!」
どうせ明日にでも、悠馬が換金に行くだろうし。
服は選ぶが、これは自分用ではない。
私服はまだあるから、代わりにシャルリアさんの服を選んでいく。
体格的には向こうの方がスラッとして…胸も少し大きくて……
ほんの少しの差だけだし!
別に悔しくなんてねーし!
「どうしました?」
「…イエナンデモ」
テクスに声をかけられ少しドキッとする。
いつもの相方と同じ返答しそうになって、少し自重する。
…まぁ体格は外国人だと思えば仕方なし。
日本人的には私もいい方に入るし、そう考えれば産地が違う程度だから別に差はねーし!
むしろ脳内に聞こえてくる声と会話する美女って、ビジュアル的にどうなのさ日向。
…残念すぎひん?
そう考えると、流石にこっちで暮らすにしても外面悪すぎてね。
サイコパスなイメージしかないから、身の安全のためにも、というのが悠馬の弁。
…宗教家で熱心な信徒で、尚且つ何も無い所で一人で会話する……
…ねぇ?
とりあず一通り選んで籠に放り込む。
タクトのはドランが選んだのを籠に入れてるので問題なし。
ついでにイーリスちゃんが欲しそうに眺めてた、カワイイ服も買ってくれようぞ!
「全員分買っていいのか?」
「あぁ、しっかり選べ」
「え…買って…いいの?」
「複数個もいいぞ」
別に毒ガス訓練を開始する訳でもないが、何か言ってしまった。
~~~
「えー…シャルリアさんの付き添いの方、ですね」
そう言って丸椅子に座り、白衣を着た対面の歳若い医師は頭をかきながら振り返った。
場所は総合病院。
シャルリア様を引き連れて、バスに揺られて30分の所にやってきた。
いきなり虚空と会話されてもこっちが反応に困る。
ただ今の所害は無い。
…とは言え、症状に関してこうであると言えない以上、悪化の可能性も考えて調査をせざる終えない。
先生は、とりあえずと問診と共にMRI検査とレントゲンを撮る事に決めた。
彼女は別室で待ってもらっている。
今はそれらの調査を終え、付き添いの自分に結果を説明してもらうのだが……
「レントゲンとMRIでの検査では、異常は一切ありませんでした」
そんな報告だった。
「…脳内にも耳にも、物理的な異常も、何らかの病気の兆候もありません。
むしろいたって健康と言えます」
そう言ってレントゲンやMRIの写真を見せてくれる。
異常らしい異常や、黒い影も無いとの事がはっきり見て取れる。
「大きな問題にもなっていませんので何とも言えませんねぇ……
問診の方も…こう言っては何ですが、危険な兆候は見られませんでした。
もし心配でしたら、しっかりとした話し合いをしていただいた後に、精神科にかかる事をお勧めします」
そう言われてしまうと、こっちもお手上げ状態である。
タクトやドラン曰く、今まで助けになっていたというのもあって、無くなって困るものではない、という認識らしい。
逆に個人では、流石にそういうのは勘弁していただきたいというのが本音だったりする。
…専門家じゃないからどうこう言える立場に無いが、何らかの兆候の可能性も否定できないし。
話し合うにしても、合ってまだ一週間たってないんだよね……
どーしたもんか、と鼻をずびずびした。
「…花粉症ですか」
「あ゛い」
「…大変ですね」
杉林を焼き払いたい。
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「と、言う訳でしてね」
「どういう訳か」
帰りにあやめが買ってきたプチシューを摘みながらそう言った。
今はとりあえずやる事が終わって、家に戻っての報告会。
まずあやめ側は、全員分の私服を購入。
資金的にはまだ少し余裕はあるけど、流石にこれ以上の出費はきついとの事。
対応策として、今日にでも宝石を作って換金する事に決まった。
更には全員分の装備やら何やら。
コレも明日、換金を終えてから買いに行く事に。
近場の個人商とちゃんと契約組んであるから、即日換金も余裕である。
対して俺の方の報告。
病院では異常は見られず、高確率で精神的原因との事。
何らかの病気の可能性は今の所無い。
一応精神科に関してはキープ、という形で帰ってきた。
後は花粉の時期に総合病院に行かない。
あの辺り杉林乱立しててヤバイ。
「その報告はいらない」
アッハイ。
こうなってくるとどうしようもないね、せやね。
と互いにプチシューをもぐもぐしながら報告会は終わった。
他の異世界組みも、最初は困惑してたけど甘いお菓子と知って食が進んでいる。
甘いものはジャスティス。
イーリスとタクトの子供コンビは、自分の分を確保して、昼時にやってるテレビの食事番組見てる、慣れすぎちゃう?
なお大福も食べている模様、お前さんも雑食すぎひん?
…なんて風に、大福を見ている状況で、それは起きた。
一瞬、本当に一瞬。
大福の皿の上のプチシューが消えた。
大福は奪われまいと、即座にソレを咥えて抵抗する。
瞬きと共に、そこに姿が現れる。
10センチ程の人形のような小さな体に、美しい透き通った羽。
両手で引っ張るように、大福とプチシューで綱引きをしている少女の姿が。
「…はっ?」
その呆けた声に、その少女はハッとしてこちらを見る。
次の瞬間、彼女が手を離すと姿が掻き消えた。
皆がなんだなんだと反応する中、大福がどこにいるのかを目で追いかけている。
それに合わせて視線を向けると、消えたはずの姿が薄ぼんやりと見えた。
ギョッと思いながらもじっと見つめると、ピントが合うように鮮明に見え始める。
「何だアレ……」
その言葉に、ドランやテクス氏、あやめが同じように視線を探る。
そして……
「…妖精か?」
「こちらの世界にも妖精がいるので?」
「創作には居るね、リアルにはいない…はず」
彼らにも見えた。
「あぁっ…いけませんユウマ様!…捕まえては…!」
「捕まえろ!」
「検挙ぉ!」
「検挙じゃねぇ!」
シャルリア様のその悲鳴のような言葉を、半ば無視する形で、子供組みとシャルリア様を置いて駆け出した。
聞く気無し




