ドレアノ伯爵領(5)
名前:レヴァン・ドロス
身分:王国騎士隊長
性別:男
年齢:二十三歳歳
登場作品:風の記憶シリーズ(やっぱり一行も書いてない)
備考:聖グラティシエ王国の王国騎士隊長。同じく騎士隊長であるシュタフゲート・ロズウェルとはよきライバルであり親友。とある事件で騎士団から離れてしまったシュタフゲートを助けるため、騎士団の仕事の傍ら世界を飛び回る。左目の傷は彼の騎士としての誇りである。
目が覚めた私は早速自称神様からもらった力を使ってみる。
いやまさかレヴァンも私が設定したキャラだったなんて想いもしなかったわ。とうか今乗れヴァンは、この設定からいろいろ変わりすぎでしょうよ。
だいたい左目に傷なんて無いじゃない!
さすがにドレアノ伯爵については思い出すことが出来なかったが、ボワーズ侯爵領の火災については思い出せた。
ボワーズ大火
王歴二九三年雪の節、ボワーズ伯爵領領都において謎の火災が発生した。
火の手は領都の各地から同時多発的に広がり、瞬く間に領都全土を炎が飲み込むこととなる。
ボワーズ侯爵夫妻を含むほぼすべての住民が火災に巻き込まれ命を失い、侯爵家第一令嬢のフラン・ボワーズのみが助け出された。
火の手があがった場所、数、時刻といった不審なところはいくつもあったが、決定的な証拠がなく検証や捜査は早々に打ち切られた。
うん。それっぽいそれっぽい。でも重要な情報ほっとんどねーです。
まああの火災がただの災害ではなく、事件の可能性があるのが解ったのは幸いかな? その謎を追いかければノートにたどり着くかもしれないし。
とりあえず何したら良いか解らない状態は脱せたよね?
にしてもノートの情報とこの世界に違和感を感じた。
実際火災から数日なのにノートでは数ヶ月後に捜査打ち切りとまで書いてある。
レヴァンだって両目が健在だし、そもそも人物設定の登場作品の項目がおかしい。私とレヴァンの登場作品は別なのに、何故かこうやって出会うことになってるし。
……まあ何一つ作品として仕上げてないけど。
そんなことを考えていたら部屋のドアがノックされた。
「おはようございます。フラン様お加減はいかがですか?」
ドア越しにそう訪ねてくるレヴァン。
「大丈夫よ。問題ないわ」
ドアを開けレヴァンに顔を見せる。
「本日昼前にはここを発ち、王都に向けて移動を開始する予定です」
「わかったわ」
「ドタバタしてしまい申し訳ないのですが……」
レヴァンは複雑そうな顔をして頭をかく。
まあ、私としては堅苦しい貴族然とした生活はまっぴらごめんなので、早い内にここを離れることに問題はないけどね。
「気にしなくて良いわ。王都へ急がなければ行けない事情があるんでしょう?」
「お気遣いありがとう御座います。騎士団内の事情のため詳しくはお伝えできないことをお許し下さい」
そう言うとレヴァンは深々と頭を下げる。
「だから気にしないでいいわ。それよりお腹が空いてしまいました」
「そうでした。朝食の準備ができているそうです。それを伝えに来たんでした」
真面目なのか抜けてるのかどっちかにしてくれませんかねレヴァンさん……
朝食を食べ終えたレヴァンたちは、出立前の買い出しにマーケットへ足を運び、食材や水を補充している。私も伯爵の屋敷で留守番してると退屈だと思ったので同行させて貰っていた。
「王都まではあとわずかですが、万一って事もありますからね」
「備えあれば憂いなしって事です?」
「そういうことです。まあ何も無いのが一番なんですけどね!」
ウィンクするレヴァン。彼の顔は整っているので普通の女の子だったらときめく所なんだろうけど、何せ自分の作ったキャラってのが判明してますからね。自キャラに本気でときめける奴がいたら連れてきて下さい。
いやまあ作った当時の自分を連れてこられて、こいつですって言われたら私には反論の余地は無いと思いますけど。忘れたい過去です。
そんな馬鹿なことを考えつつマーケットを歩いているとまた視線を感じた。
視線を感じた先は慌ただしく行き交う人々でごった返していた。
ここに来てから三回目。偶然じゃ片付けられなくなってきてません?
「どうしました? フラン様」
「いえ、何でもありませんよ?」
「そうですか。もし何か欲しいものとか有りましたら何なりとお申し付け下さいね?」
そうじゃない。そうじゃないよ。
まあ誤解してくれてるなら都合が良いし放置で委員だけどね。
買い出しを終え、ドレアノ伯爵へ出立の挨拶へと向かった。
「失礼いたします」
ドレアノ伯爵の執務室はとても整頓されていて、まるで映画のセットのような雰囲気だ。
奥の机で書類に目を通していた伯爵は、こちらに視線を向ける。
「おはようございます。ずいぶんとお急ぎと伺っておりましたが、もう少し領都で羽を伸ばして頂いても良いのですよ?」
昨日と同様真意の読めない笑顔で話しかけてくる。やっぱり苦手だこの顔。
「お心遣いはありがたいのですが、なにぶん我々も色々な任務がございますので……」
レヴァンは苦笑いだ。
「また、落ち着いたらお越し下さい。歓迎いたしますよ」
「近場に赴いた際には是非に」
絵に描いたような社交辞令の応酬に私はちょっとうんざりした。
うん。こういう気を遣う会話は私には向かないね。王都に着いたら何が何でも自由を勝ち取らないと。
「ボワーズ侯爵令嬢もぜひお立ち寄り下さいね?」
「機会があればいずれ」
「お待ちしておりますよ」
そう言って微笑む伯爵の目は笑っていないような気がした。
「さて、ここを出ればあと三日程ですから頑張りましょう!」
伯爵領都の門をくぐると、妙にさっぱりした顔のレヴァンにそう言われた。
「頑張るも何も私はただ座ってるだけですから」
私がそう答えるとレヴァンは私に近づき耳元でつぶやいた。
「お嬢様も妙な視線に気がついていたでしょう? 確証はありませんがくれぐれも気をつけて下さいね」